2010年06月06日

「ナックル姫」の快挙

1). 先日、国内でも報道されたのでなんだいまごろ、と言われそうですが、米国独立系リーグにて初登板した吉田えり投手についてNYTがスポーツ欄のトップで報じた、というのはやっぱりすごいこと。女性選手が米国のGolden Leagueで活躍するのは、10年前のアイラ・ボーダーズ選手以来二例目とのこと。アイラさんも投手だったらしいけれども、吉田さんもおなじく投手、しかも高度なナックルボールを武器に本場の打者を相手にまわすというのだから、それだけでもすごすぎるんですが、なんといってもまだ18! ですよ。もうこうなると脱帽するほかなしです。それにナックルボールも、昨年TVで見た、レッドソックスのティム・ウェイクフィールド投手が繰り出すナックルボールを見たのがきっかけで習得したというから、ほとんど独学らしい。昨年まで所属していたチームが当初予定していた所属先リーグから撤退してあらたなリーグ設立したりとごたごたしていたときにエージェンシーに手配してもらって参加した「アリゾナ ウィンターリーグ」がきっかけとなって、カリフォルニアのチコに本拠地をおく「チコ・アウトローズ」所属となったらしい。

 本場での初戦、さぞや緊張していたのでは…と思うけれども、そんな大舞台でもいかにも十代の女の子、という側面も垣間見せるところがやはり大物の片鱗か。

The night before her debut, while her teammates were in the locker room after losing their home opener to Tijuana, Yoshida leaned on the railing of the first-base dugout and gazed at the fireworks that were exploding beyond the left-field wall.

She reached into a bag and took out her camera to record a snapshot of Americana. She looked less like a pitcher ready to battle with grown men, some former major leaguers, than an excitable teenage tourist.

 ちなみに…当方、野球用語についてはさっぱりなので、すこしばかり備忘録としてメモっておきます。

And in her one plate appearance, she drove in a run by bouncing a bases-loaded single to right field.

下線部、満塁の場面でバウンド気味のシングルヒットをライト方向に打って出塁、走者を生還させたということみたい。one plate appearanceは「打席」。でも「野球」という訳語の創作もさることながら、日本語の野球用語はみんな明治の先達がこさえたものだから、そういう点でも明治の先達はやっぱりすごいなあ。

After retiring the first two batters to begin the second, Yoshida hit the next batter with a two-strike knuckleball and allowed the homer. She retired the next three batters, but then three singles and a walk evened the score in the third, as fans urged her on with chants of “Go Yo-Shida.”

a walkというのは――カンを働かせれば――日本で言うところの「フォアボール」だということはだいたい見当がつく。最初のふたりの打者を打ち取って、2イニング目はナックルで2ストライクと追いつめたもののけっきょくホームランをお見舞いされ、3イニング目は最初の打者こそ打ち取ったもののその後は三連続安打がつづき、最後は走者を歩かせたり暴投があったりで同点に追いつかれた。ここで降板。でも走者としても活躍したから、初陣としては上出来ですよ(3回まで投げて、5安打4失点)! なにせ百戦錬磨のもとメジャーリーガーとかも向こうに回しての活躍ですからね。史上二人目の女性投手のデビューとあって米国メディアはおおいに注目したそうですが、周囲のプレッシャーに負けないりっぱな活躍をされたと思います。真似しようたってできるもんじゃないですよ。それと'pop-up'は「凡フライ」。ついでに自分は恥ずかしながらshortstopという言い方を知らなかった。「一、二塁間を守る遊撃手」、ようするにショートなんですが、stopがつくんだね。これ見るとなんとかのひとつ覚えで、すぐ「オルガンのストップ」という連想が働いてしまうもので…。

 そして記念すべき初登板となった初回こそ、「これ以上ないくらいに」筋書きどおりのできだった(The first inning could not have stuck more neatly to script.)。「絵に描いたような」理想的な展開だったわけですね。そのあとナックルが「すっぽぬけ」たりして、乱れてしまいますが、そこはそれ、筋金入りのプロ根性でどんどんimprovingしてゆくでしょうね。降板後もずっと走りこんでいたそうですし(Be prepared!)。ナックルボールの練習も欠かさない。そんな彼女の真摯なプロ意識を米国の選手たちや監督も高く評価していると言います。「つねに向上する、それがプロ」ということばも思い出した。ふだんからの、不断の努力。これに尽きる。

 この記事はさすがに注目を集めたようで、本文をきちんと訳された先生のブログまであるので、あわせてご紹介しておきます。

 いずれにしても、今後の吉田投手の活躍が楽しみですね。

2). 話変わって、日曜の深夜、ふとNHK総合を見ますとセルティックがどうのこうのという番組を放映している(たぶんデジタルハイヴィジョンかなにかの再放送)。中村俊輔選手が所属していた強豪セルティックの地元グラスゴーの人たちはいまやすっかり日本びいき、なんとW杯では日本チームを応援するという人ばかり! また中村選手が活躍してくれたというのもあるけれど、こちらが思っていた以上に「日本文化」にたいする関心がグラスゴー市民のあいだで高まった、いわば「文化大使」としての中村選手の功績も紹介していてつい見入ってしまった(スポーツというものにはあまり関心のない人なので、この手の番組はめったに見ない)。日本語教室も大盛況! グラスゴー在住の日本語教師の先生が、ちょうど折よく中村選手が来てくれて運が良かった、とおっしゃってしたのが印象的でした。グラスゴー市民が、あまりにも日本びいきになってくれているので、見ているこっちまでなんかうれしくなってきた。ついでながら、現地のサッカー少年が黙々と練習していた技、なんでも「ナカターン」と言うのだそうだ。

 「ナックル姫」といい、中村選手といい、ほんと海外における日本人の活躍はめざましいものがあります。そういえばつい先日、宇宙から野口さんがぶじ帰還されましたし、宇宙といえば探査機「はやぶさ」も目が離せませんね! 国内にいると、なんかこう暗くて息が詰まりそうな暗澹たる報道ばかりなんですが、異国の地で己を奮い立たせてがんばっている日本人がおおぜいいる、ということを知るだけでも生きる力をあたえられるような気がします(ちょっと大袈裟な言い方ではありますが)。

posted by Curragh at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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