2010年06月13日

「マルチタスク」にご用心

 「マルチタスク」といっても、PCの話じゃありません――われわれ人間の頭の話です。

 いまや米国にかぎったことではないと思うけれども、同時に複数の作業をてきぱきとこなす人というのがもてはやされているみたいです。でもたとえばこの記事の主人公(?)、コード・キャンベル 43歳氏にいたってはどうなんでしょうか。

 キャンベルさんはシリコンヴァレーのIT関連の起業家で、仕事柄、年がら年中PC漬け、というかネット漬け。寝るときもiPhoneは手放さない。起きているときはずっとオンライン状態。年中オンライン、といってもすべてが「仕事」がらみというわけではない。中央のモニターでプログラミングしているかと思えばその合間に私用のメールやらFacebookやらTwitterやらをチェック(!)、果てはiPhoneにiPadまで持ち出し、あげくの果てはゲームなんかやりはじめたり…おかげで家族とともに外食をどこで食べようかとか、やりかけの用事を忘れたりともっとも重要視すべき実生活での凡ミスがしょっちゅう。スライドショーではキャンベルさん宅の仕事場の画像もありますが、文字どおりのマルチディスプレイ環境(ぜんぶMacかな?)。一時間に10-20通のメールが来るようですが、返信する必要のあるものはほんの数件。でもキャンベル氏は、とにかくあっちこっちのディスプレイを見まくって、ウィンドウをやたらと開きまくって、ということが「クセ」になってしまってやめられない。いま集中すべきことに集中できない。自分なんかも飽きっぽくて、人さまのこと言えた義理ではないけれど、これはいくらなんでも「重症」なんじゃないでしょうかね、以前ここで紹介した「ネット露出狂」の人同様に。

 米国ではいつのころからか、「忙しい」というのがステータスシンボルみたいな悪しき風潮が蔓延していますが、キャンベル氏の場合はただたんに「どうでもいいような情報」でさえも取捨選択さえできずに、とにかく「いま」この瞬間に見ないと気がすまない、そういう「中毒」にかかっているように思えます。父親がこうなんだから、子どもたちにいい影響を与えるわけがない(旦那さんのことをとやかく言う奥さんにしても、Facebookの相手をしていてクッキーを何度も焼き焦がすような人なので、似た者夫婦なのかなあ、とも思った)。ところで向こうの人って平気で食卓にPCとかiPadとか持ちこむようですね。自分なんか、なんとなく油っぽいキッチンにPCを持ちこむことにたいしてすごい抵抗がある。昔は礼儀にうるさい家庭が多かったから、食卓イコールごはんを食べるところであって本を読んだり、ましてやPCやスマートフォンなんかを持ちこんだらとたんに波平さんみたいなガンコ親父のカミナリが落ちたところ。でも最近はわりと気にしない人のほうが多い。

 記事にもどりまして、キャンベルさんはもしPCとかネットとかがなかったとしても、やっぱり「同時に雑多なことをしてしまう」という生活を送ったかもしれないと言っています。昔よくいた、TVを見ながら仕事する「ながら族」といったところでしょうか(そういう自分もNHK-FMはかけっぱなし。でもTVの「ながら」ができるほどオツムもよくないし電気代ももったいないから、そういうことはしない)。でも「優先順位」というものはかならずあるもの。キャンベルさんみたいに、だいじな仕事の打ち合わせが迫っているときでさえ、「勤務先で男性の死体発見」とかいうツイートを見てすぐリンクをクリックしてしまう人。それでいて買収話をもちかけられるくらいの起業家というのだから恐れ入る。それはそれで才能のなせる技なのかも。

 でも科学者によると、人間の脳ってPC並みに「マルチタスク」というふうにはできていないらしい。結論から言えば、「マルチタスク型人間」イコール「仕事のできる有能な人」ではないということ。むしろ実態は逆で、そうでない人――「シングルタスク型?」――にくらべて仕事の能率は格段に劣るという(複数のタスクを同時進行で処理できる人のことを、「スーパータスク型」と呼んでいる)。またキャンベル氏のように玉石混交の情報の洪水をまともに受けてアップアップしている人は、そうでない人にくらべて情報から受けるストレスも高いという。しょせん人間はアナログな生き物であって、なんでもかんでもデジタル処理、というふうにはできてはいないことの証左かもしれない。

 2008年の調査によると、TVやネットなどをひっくるめた情報収集に費やす時間が1960年のそれとくらべて3倍も多くなり、べつの新しい調査ではPCユーザーは1時間あたり37回近くもメールチェックしたりブラウザを起動したりとひんぱんにウィンドウを開いたり閉じたりしているという。こういう情報洪水の引き起こす「認識力の断片化」現象はPCから離れたあとも残るという。キャンベル氏の「プッツン現象」もそのたぐいかもしれない(ふつうに注意力散漫な人というのがいるのも事実ではあるけれども)。また子どもがこの手の情報洪水という刺激に毎日、晒されると大脳の発達にとってよろしくないみたいです。大人でさえそうなんだから、当然のことと言えば当然のことかも。

Researchers worry that constant digital stimulation like this creates attention problems for children with brains that are still developing, who already struggle to set priorities and resist impulses.

 ちなみに記事のとなりにある小テストみたいなものをやってみました…。設問は

1). なによりもまず真っ先にメールチェックを欠かさない。
2). つぎはいつオンラインになるかと待ちかまえていることがよくある。
3). オンラインになったときにだれかに声をかけられると、「あともう数分だけ」と言ってしまう。
4). ネットにどれくらい時間を費やしていたかについて嘘をつく、もしくは隠し立てしようとする。
5). だれかと外出するより、ネット接続して時間を過ごすほうを選んだことがある。
6). ネットにつなぐと、憂鬱な気分・不安感から開放される。
7). テクノロジーを使って過ごす所要時間について、他人から文句を言われることがよくある。

当てはまりそうなのは2と、ときおり3かな? ようするにこれ「ネット依存度」の強さをみる検査なんかな…?? 自分は、そんなに依存していないつもりではあるんですが…。それからキャンベル氏のようなことに身に覚えのある方は、'Test Your Focus'というテストもやってみるのもいいかも。ルールはかんたんで、ふたつのピンク色の長方形のみ意識を集中させて、どれか位置が変わったらYES、もとのままだったらNOとこたえる、というもの。途中から「気をそらせる」青の長方形の数が増えたりします。

 …「仕事」といえば先週のチャロはけっこうおもしろかった。Johnny the Info Guy(笑)! 'You got it!'という決め台詞といい風体といい、なんか70年代ふうだった、とシェリーさんがコメントしてましたっけ。チャロも'Not again(日本語だと「またかよ!」という感じ)!'なんてずいぶんくだけた言い方使ってましたし。「言うだけのことは言って(Saying what he had to say, ...)」眠りこける…というか、なんでお代があの「睡魔をさそう赤い実」でなければならないのか(笑)?? それはそうと、生前のジョニーさんっていったいなにやっていた人なんですかね(謎)…。

posted by Curragh at 17:42| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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