2010年07月19日

ありがちな話二題

1). まずはこちら。だいぶ前にWindowsは崩壊寸前のOSか? というコラムを書いたサンノゼ州立大学ビジネス学教授先生の書いた記事で、ティーンエイジャーとPCとの関係について、いくつか最近の調査結果にもとづいて書いてます。とりわけ低所得者層の家庭ではじめての情報機器としてのPCをティーンの子どもに買いあたえた場合、買いあたえたほうの親御さんとしては当然、裕福な子どもとの情報格差を解消し、学習のためにどんどんインターネットを活用してもらって、お勉強の成績もアップさせてほしい、と思うもの。でも現実はなかなかそうはいかなくて、けっきょく大半の子どもたちはせっかくのPCを十全には活かすことなく、ゲームばかりして無為に過ごしてしまう、ということが浮き彫りになったというものです(でもこの記事、左側のイラストを見ただけでおおよその内容の見当はついたが)。

 この点にかんして、たとえば日本では「ケータイ」の爆発的な普及がすぐに思い出されます。バスや電車内で四六時中、ケータイをいじくっている学生さん。この前も電車内で、ケータイとiPhoneの両方をいじっていた男子高校生とか見かけましたよ。米国の調査結果でも、こういう子どもたちはたしかにPCなどの情報機器を扱うスキルというものは向上している…ようですが、親御さんがなにより期待している分野にかんしてはまるで役に立たないもんらしい(以下、下線強調は引用者)。

Economists are trying to measure a home computer’s educational impact on schoolchildren in low-income households. Taking widely varying routes, they are arriving at similar conclusions: little or no educational benefit is found. Worse, computers seem to have further separated children in low-income households, whose test scores often decline after the machine arrives, from their more privileged counterparts.

この調査をおこなったうちのひとりの先生にとって、「子どもにPC」というのはかえって逆効果、みたいな結果におどろいたようですが、同年代の子どもをもつほかの人の反応はさもありなん、というもの。たしかにみんながみんな、向学心とか志のある子たちとはかぎらないし、PCにはゲームをはじめ時間を浪費する「誘惑」の要素のほうがはるかに多いので、よほど意識してないと安易な方向へ流されてしまうものなんでしょうね。また先月、全米経済研究所から公表されたばかりの調査結果も興味をひかれる。ノースカロライナ州では2000-2005年にかけてブロードバンド化が急速に進んだらしいけれども、最初にブロードバンドサービスがはじまった地区の中学生の数学の試験の得点数はこの時期を境にがたっと急降下し、またブロードバンドサービスを提供しているISPの数が4つ以上になると、こんどは子どもたちのリーディング試験の得点数がやはりがた落ちになったという。でもこういう悪影響が見られたのは、もっぱら低所得者層の家庭だったといいます。その理由はやはりといいますか、

The Duke paper reports that the negative effect on test scores was not universal, but was largely confined to lower-income households, in which, the authors hypothesized, parental supervision might be spottier, giving students greater opportunity to use the computer for entertainment unrelated to homework and reducing the amount of time spent studying.

 でも子どもたちばかり責められるものではないようにも思う。以前ここにも書いたけれども、向こうの家庭ってまだ年端もいかないうちからほいほい高価な電子端末を玩具よろしく買いあたえる親が多いんじゃないかって気がする。いまだとたとえばiPadになるかしら。またNHKラジオ第1の「地球ラジオ」ではじめて知ったのですが、あちらでは10歳くらいの女の子用の「お化粧セット」なるものがいくつも売られているという。こちとら、ただただおどろくほかなし。なんかどっか狂ってない?? そういう育てられ方をした子どもにPCをあたえてもせいぜいガジェット、つまり「おもちゃ」どまりだろう(最近のスマートフォンも、「高級なおもちゃ」のように見える)。

2). つぎは――いまさらという感なきにしもあらずですが――例の「アンテナゲート」関連。記事にはたとえば出だしで

Many expected a mea culpa from Steven P. Jobs, Apple’s chief executive. Instead, he turned the iPhone 4’s antenna problems into a marketing event on Friday.

とやんわり皮肉っている以外は、ほとんど事実関係の報道と取材にこたえた人のコメントのみではっきりいってあんまりおもしろくないんですが(ほかの記事で批判的に取り上げたものはあるのかもしれないが)、おどろくのはApple CEOの一般常識のなさ。よくも悪くもあの会社ってこの人のカリスマで成り立っているようなところがあるから、それはそれでしかたないかもしれないが、それにしても

“This has been blown so out of proportion that it is incredible,” he said[ほんとうは'But I think it’s important to understand the scope of this problem. Because the data leads you to the conclusion that it’s been blown so out of proportion, it’s incredible.'と発言していたらしい].

というものの言い方は? と思いますよ(「あまりに誇張しすぎ、信じがたいくらいに」)。アンテナが露出しているから右手でもつようにとか、そんなことユーザーにおしつける感覚もどうかと思うけれども(モトローラ社の人も、“because consumers don’t like being told how to hold the phone.”と揶揄しているし)。アンテナ露出のデザインでいこうと決めたんなら、最初からバンパーつきで売ればいいのに、と思うほうがヘンなのかな? なんかだんだん某タイマーな会社に似てきたな。たしかに革新性とかデザインの秀逸さ、UIのすばらしさは認めるけれども、たとえばバッテリが取れないとか、そういう使い勝手をあいかわらず軽視しているようなところがあるし、Time Capsuleだっけ、バックアップ用のNASも欠陥があることをわかっていながら無償交換措置を講じたのはつい最近だし。これどう見たって大名商売としか思えない。いまや一部の熱心なユーザーのみ相手にして商売しているわけじゃないのに、対応のまずさは昔のままというのは、やはりよくないと思うがいかが。記事にもあったけれども、他社製スマートフォンにも受信障害はあるといった「情報操作」みたいな主張も、フェアじゃないと思う。それによくよく見てみるとジョブズさんの主張はいささか破綻しているのではないかと…。

When a reporter said he could not replicate the signal drop on his BlackBerry, Mr. Jobs said the problem was only evident in places where the signal is weak.

もともと受信状況の悪いところで実験したら、どこの端末だって「落ち」るでしょうよ。こういう実験は、やっぱり第三者機関がテストするにかぎる(↓は、Consumer Reports誌の実験を映した動画)。



…それにしてもこれNHKも報じていたんですね…。たしかにたいした欠陥ではないかもしれないが、あまりに人を喰った対応だったので、ついムカついて記事にしてしまった(苦笑)。→国内関連記事

posted by Curragh at 18:43| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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