2010年08月22日

エマール企画の「バッハとポリフォニー」演奏会

1). リンカーンセンターではきのうまで'Mostly Mozart Festival'という毎夏恒例の音楽祭をやっていたようですが、いまさっきNYTの音楽記事見ていたら、なぜか「バッハと多声音楽(ポリフォニー)」をテーマにしたプログラムを組んだミニ音楽祭も開かれたとか。よくよく見てみたら、なんと企画したのはあのピエール-ロラン・エマールだという! バッハのほうは6つのモテットのうちのひとつ、「イエスよ、わが喜び BWV.227」がArs Nova Copenhagen という団体によって歌われた…けれども、個人的にはエマールみずからチェンバロ/ピアノと弾き分けた、「音楽の捧げもの BWV.1079」のほうが興味津々。チェンバロで弾いたのは「トリオ・ソナタ」の通奏低音だけだったらしいけれども、「ふたつのカノン」をピアノで弾いた…らしい。弾いたのは「蟹のカノン」なのか、「探せ、されば見つからん…」という「謎かけカノン」のほうだったのか…「反行カノン」? 「フーガ・カノニカ」?? それとも「無限カノン」??? またエマールがぜひ生で聴きたかったと言わしめた、グルジアの男声合唱団による無伴奏合唱も負けずに圧巻で、当日の話題をさらったとのこと。自分はブルガリアの女声合唱団によるひじょうに珍しい当地の伝統歌謡とかの無伴奏合唱のCDはもっているけれども、ううむ、グルジアですか! ロシアも男声による無伴奏合唱の伝統はあるし、たしかにこれはおもしろそうですね。なんでもたいへん変わった歌唱法で歌われたりしたとか。'Chela'という古謡(?)ではヨーデルみたいな歌い方も出てきたらしい。グルジアには特有のポリフォニーの伝統があるみたいです。

But it was the male Ensemble Basiani from the Republic of Georgia, singing two sets of Georgian polyphony descended from an ancient tradition, that stole the main show at Tully against strong competition. Mr. Aimard said from the stage that he had first heard recorded examples of this tradition 30 years ago and had always wanted to hear it live.

現代音楽におけるポリフォニックな作品も取り上げられていて、たとえばエマールによるピアノで演奏されたのはリゲティや、現在101歳(!)になる米国の人間国宝的存在、エリオット・カーターの作品とか。デンマークの合唱団による演奏では、ほかにヤニス・クセナキスという人の作品も取り上げていたらしいが、寡聞にしてこちらの方の作品はまるで知らないので、ただ想像するほかなし。ただ、バッハの「音楽の捧げもの」から演奏された「トリオ・ソナタ」については、

The Bach sonata represented a mix of performance styles. Mats Zetterqvist, the violinist, and Clara Andrada de la Calle, the flutist, added basically modern sonorities to Mr. Aimard’s harpsichord. But Luise Buchberger, the cellist, played the continuo line with much less vibrato, ...

だったそうで、新旧折衷型(?)だったみたいですね。とにかくひじょうに興味をもちました…公演を聴かれた方とかいましたら感想などをぜひ。

 また関連記事としてはこんなのもありました。17日の'Mostly Mozart Festival' コンサートの批評なんですが、その夜開かれたコンサートでは「主役」のモーツァルトはプログラムにはなくて、生誕200年にあたるシューマンにヴェーバー、メンデルスゾーン(「ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 ニ短調」というめったにお耳にかかれない作品。14歳(!)ごろに作曲したものらしい)などで構成。もうひとつのほうはもうひとりの生誕200年、ショパンのプログラム。モーツァルトが聴きたい聴衆は、エイヴリー・フィッシャーホールで開かれた本コンサート開演1時間前に開かれたプレコンサートに行かないと聴けなかったそうですが、けっこう盛況だったようで…でもこの記事によれば、聴きに来たお客さんは、音楽よりも演奏者目当てで来た人が多かったみたいです。

That hundreds did so probably was less because of the music than because of the performers: the violinist Joshua Bell and the pianist Jeremy Denk, who were also the featured soloists in the orchestra’s program.

2). …とそんな折も折、国内報道に目を転じればたとえばこんな記事とかありました。これは些細なことながら、個人的にはひじょうに気になっていたことなので、これですこしは安心(?)かな(以前、ここでも「地デジ放送の遅さ」について取り上げて問題視したことがある)。そしてもっとおどろいたのはこれ。えッ!? あのNaxos Music Libraryが公共図書館で利用可能に??? これはすごすぎ。いつも利用している図書館でもNMLを採用してくれないかな! …そのいっぽうで、HMV渋谷店が20年の営業を終えて閉店…というさびしいニュースもありましたね。…とはいえ自分はたった一度しか行ってはいないのだが…クラシックのフロアでBACのエドのautographを見たとか前にも書きましたね。とにかくAmazonが上陸するまでは、HMVとか山野楽器、それと石丸電機の3号館あたりでしか、お上りさんには「洋物CD(輸入盤)」を手に入れることができなかった。たしかにAmazonは便利だ。おかげでいままで考えられなかったような本やCDもいともかんたんに手に入れられるようになった。…でも気がついたら近所からはCD屋さんが姿を消していた。HMV渋谷店のような大きな店まで…。もっともいくら便利だからって、紙の本まですべてiPadがないと、Kindleがないと読めません、という世の中にはなってほしくないというのが正直なところ。自分の場合はあくまでも「CDアルバムを買う」というスタイルにこだわっているから、「ラヂオのうた」のような例外をのぞいて「音楽配信サービス」経由で楽曲を細切れに、せんべいのバラ売りのごとく買ったりはしない。なので、かつて流行った(?)CCCDにはほんとアタマにきていた(苦笑)。いまはもう、当時のことは「いまは昔」と笑ってやり過ごせるけれどもね。いま考えると、いったいあの騒動はなんだったのだろうか…。

posted by Curragh at 23:54| Comment(6) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
この記事へのコメント
私もLPの時代からアルバムとしての価値を重視してきた人間の1人として、1曲ずつつまみ食いするようにネットからDLという最近の風潮にはついていけません・・・

YouTubeのミュージックビデオも、あるアーティストや楽曲の雰囲気をちらっと確認するにはいいのですが、やはりアルバム単位で聴いてみないと、そのアーティストの音楽性やコンセプトはわかりませんよね。

私も、Elliot MinorのEdくんがリードVoやっている'Still Figuring Out'というMDをブログで紹介しましたが・・・あれを聴く限りでは、ほんの数小節のイントロがあって、すぐEdの歌が始まっていますね。そういうふうに作ってある曲だと皆思うでしょう。でもアルバム中では、あのイントロの前に、実はもっと長くて実に美しい導入部があります(オーケストレーションを効果的に使っていまして)。彼ら自身言っているように、アルバムとしての構成が素晴らしいのですが、そういうことは、細切れDLばかりやっていると、永遠にわからないままでしょう。

HMV渋谷の閉店もさびしすぎますね。ロンドンのHMVが初めて日本に上陸したとき、本当に驚いて感動したものでしたが。。
Posted by Keiko at 2010年08月25日 15:49
Keikoさん

お返事遅れまして失礼しました。m(_ _)m

HMV渋谷店の跡地ですが、なんかファストファッションの店が入るみたいですよ。

http://www.shibukei.com/headline/7132/

ほんらい音楽というのは「生で」聴くものだとは思いますが、canned musicだってりっぱなアートですよね(一部の音楽家はこれさえ否定する向きもいることにはいますが)。自分もそういう「古い」部類なので、楽曲配信でバラ売り、というのは抵抗があります。

'Still Figuring Out'については、たぶん時間制限で冒頭部を切り詰めた版をおいてあるのでしょう(最近あそこの動画サイトは時間制限を緩くしたそうですが)。

…それとこれはまったく関係ないことですが、'Flipped' という新作映画に出演している少年俳優も、聖歌隊出身者みたいですね。この映画については、NYTのバナー広告ではじめて知りました…。↓

http://en.wikipedia.org/wiki/Callan_McAuliffe
Posted by Curragh at 2010年08月29日 19:42
>Naxos Music Libraryが公共図書館で利用可能

これは凄いですね、嬉しいニュースです。

クセナキスは日本では高橋悠治氏(直弟子)とか、最近では大井浩明さんなんかが演奏しています。お好みには・・・う〜ん、合わないかもしれませんが・・・(^^;
中に民族音楽っぽい作品もありますから、そのあたりは面白くお感じになるかもしれません。

グルジアのポリフォニーはブルガリアと根っこが一緒で、マケドニア辺りまで同じ伝統があります。今世紀に入って聴きやすくなったものとは違うのですが。

シンプルな例ですと、こんな感じです(これはマケドニア方面のもの)。

http://music-hongou.art.coocan.jp/audio/history/SongFromPogoniani.mp3
Posted by ken at 2010年08月29日 22:19
Kenさん、音源ファイルをどうもありがとうございます! うーん、なんか日本の民謡をポリフォニックに歌うと、やっぱりこんな感じになるのかなあと思ういっぽう、ときおり微妙なハモリ(微分音程?)のような個所もおもしろいですね。絶対音感がないのでなんとも言えませんが、これをそのまま鍵盤で弾いてみたら、おそらく何度も交差(声部交替)するのではないか思われます。オルガンのように、異なる音色のふたつの手鍵盤だとうまいぐあいに弾き分けられるのではないかという気がします。それと、グルジアのポリフォニーって、ルーツはブルガリアのものとおんなじなんですね! さすがです!! それと以前紹介してくださったコープマンの本ですが、この前いつも行っている図書館に本を返却しに行ったら、なんと音楽関連本の書架にしっかりと納本してあるではないですか! 自分が良書と思う本を納本してあるのを見ることほど、心地よいことはなし(笑)。
Posted by Curragh at 2010年08月30日 01:12
>自分が良書と思う本を納本してあるのを見ることほど、心地よいことはなし(笑)。

げにげに!!!

ところで、グルジアのほうのポリフォニー音源も持っていることにあとから気が付きました。
これも面白いですよ・・・と、押し売りしておきます。(^^;

http://music-hongou.art.coocan.jp/audio/history/Rashgwari.mp3
Posted by ken at 2010年09月03日 00:09
Kenさん、貴重な音源、ありがとうございます! 素朴なハーモニーですが、あの歌い方はかつて東方教会系の典礼で歌われた歌唱法なのかもしれませんね。このあたりの伝統音楽についてはまるで疎いので、つい「だったん人の踊り」とか連想してしまいました。^^);
Posted by Curragh at 2010年09月05日 23:57
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