2010年09月19日

ハサミとチャロは使いよう

 …この拙いブログも気がつけば記事がたまりもたまったり、その数570台に迫ってきました。で、以前、アクセス解析を見ていたら、検索キーワードのひとつに「チャロで英語力はほんとうにつくのか?」というものがありました…なるほど、そう感じている向きもきっとおられるだろう、と思いました。

 前回のシリーズは、よくあるタイプの英語講座仕立てで、栩木先生が物語に出てくる言い回しから問題を作り、解答を懇切丁寧に解説するという構成になってました。週ごとに「鑑賞のポイント」というページはあったにはあったけれども、補足ていど。ところが今回の「ミドルワールド」ものからはガラリとテキストの作りも変わりまして、解説が「使える表現」と「心にしみる表現」とに分かれ、さらには「語句の本質に迫る」という小コラムみたいなものまでくっついています。

 テキストだけでなく、放送の内容じたいも前回とはまるでちがって、最初はなんだこれ、と感じていた。…なんだか「雑談」みたいなノリだったので。でも聴取していくうちに、はたと気がついた(前にも書いたかもしれないが、田舎者は悟りが遅い)――今回の講座の狙いは、たとえば英語で書かれた小説などをより深く読めるように聴取者を導くことなのだ、と。14日分の放送では講師の松本先生が、「それぞれの科白にこめられた感情を読み取りましょう!」と言っている(下線強調は引用者)。なので、「短期間で最低限これだけのことは言えるようになりたい」とか、そういう目的だったらほかの講座を探したほうがいい。やはり「書きことばとしての英語」をいかに深く読めるようになるか、ということに尽きるような気がする。

 というわけで、それまで「雑談」ぽく聞こえていた講義のなかに、ただたんに字面を追うだけの皮相的な理解にとどまらず、ほんとうに言わんとしているところを「感じる」ようになるための有用なヒント、要諦みたいなものが随所に散りばめられているということに気づきはじめた。「使える表現」では「発信するときに使える表現/言い回し」をレクチャーしているけれども、卑見によればそのあとの「心にしみる表現」における松本先生と出演者二名との「雑談(に聞こえるところ)」にこそ、「書きことばとしての英語をいかに深く読むか」を考えさせてくれるヒントがたくさん隠されている(と思う)。とくに「…これってどういう気持ちですかね?」という先生の質問とか。書きことばとしての英語に接するときの日本人の態度はけっしてよろしくない、と昔から感じている(自分も含めて)。つまり字面だけ追って、ここの先行名詞はこれこれで、これは'make up one's mind'というイディオムで、これは仮定法でここは第五文型で…みたいなところで「わかった、わかった」としてしまうような態度。もちろんこういう「表面的な」理解は大切だし、とくに書きことばとしての英語を読もうとする場合、必要最低限の理解(解釈)だとは思う。でもたとえばペンギンのムウの科白、'I would if I could!' にこめられた、したくてもできないというどうしようもない苛立ち、焦り、怒りが感じられるようになってはじめて「読めた」と言える(反対に、ドゥーマの'Maybe you should move your feet faster.' という発言には、nonchalanceというか、とくに深く考えもせず相手の立場も斟酌せずに「もっと脚を速く動かしたら?」となんの気なしに投げつけた感じがします)。またムウが自分の脚の遅さについて、'I'm such a slow runner.' と言っているのもじつに英語らしい発想の言い方。いわゆる形容詞 + 動作者(-er形)というかたちですが、'He is a good organist.' と聞いて、てっきりプロのオルガニストかと思いきや、じっさいには「彼はオルガンをじょうずに弾く」と言っているにすぎない。

 …前週分の放送では、小悪魔ランダが'I almost had him!' とほくそ笑む場面がありましたが、「あともう少しだ」も使う場面によってさまざまな言い方になったりします。鋸でなにかを切っていて、「あともうちょいだ!」と言う場合なら'Almost enough!' だろうし、「あともう少しだけ!」だったら前々週の放送でチャロがムウに言っていた、'Just a little longer!' がぴったりでしょうし。真の英語力というのは、こういう使い分けが瞬時にできるようになることではないかといつも思っている(ところで「ラジオ英会話」でもおなじみのKatie Adlerさんて、ひょっとしたらランダの声役なのか!?)。

 次週の回では、'The next day his fever breaks.' という言い方が出てくる。breakもさまざまな意味をもつ基本動詞のひとつですが、核となる意味(core meaning)として「壊す(壊れる)」、「割る(割れる)」が挙げられています。だから「その記録は破られた」は'The record was broken.' 、思春期の少年の声変わりも'His voice has broken.'みたいに言える。名詞として'have a break' というのもよく使われる表現ですが、「なにかつづけていたことを急にやめる」からこのように言える。またbreak downという句動詞
になると、「急に泣き崩れる」という意味ににもなったりします。たとえばだいぶ昔に読んだGood-bye, Mr Chipsにも、'And at that ―― both then and often when he recounted it afterward ―― Chips broke down.' という言い方が出てきます(→こちらの第11章末部分)。それと、'Shall I mail these letters?' という例文も掲載されていたけれども、動詞のmailは米語表現ですな。英国だったらpostになるところ。

 英語はラテン語経由の外来語英語表現が多くて、なにかとはやりのcomplianceなんかもその一例ですが、じつはbreakとかcutとか、そういうもっとも基本的な単語(とくに動詞)ほど意味範囲が広くて、習得に時間がかかる。つまりはむつかしいということになります。前置詞と冠詞も同様にやっかいですね。時制という概念も日本語にはないものだから、たしかに戸惑ったりする。でも向こうの人はべつに意識して使っているわけではなくて、あくまで気持ちの問題――「ハートで感じる…」の大西先生が言っていたような感覚で使っているのだと思う。仮定法過去という表現も、現実の自分とはちがう「遠い」世界を仮定して言っているから現在時制ではなくて、一歩引いた過去時制になる、という感じの理解でいいのではないかと思います。もっとも英語史から見た仮定法用法の変遷についても、考える必要はあるかもしれませんが、実用ではこれでまちがいではないはず。

 …なので今回のシリーズは、とくに英文を深く、正確に味わいたいという向きにはうってつけなのではないか、と感じます。チャロのテキストで登場人物に感情移入できるほどに英語の科白が読めるようになれば、これをきっかけとしてどんどん興味の赴くままに多読すると、さらに力はつくでしょう。多読、といってもなにもむりしてTimeとかは読まなくたっていい(苦笑、最近Amazonで買い物するとよくついてくる)。TimeよりはNewsweekのほうがいい(と思う。Timeが好きで読むのなら、それでもいいのですが)。薄っぺらいリーダーのたぐいはたくさん出ているし、「対訳もの」でもいい。National Geographicが好きなら雑誌のみならず公式サイトとかもどんどん目を通せばいいし。スマートフォンを持っていたら、NYTなんかは専用のガジェットもあるので、気になった記事から片っ端から目を通すのもいい。ある作曲家が好きならその人の伝記なんかもいいかもしれない。IT関連が好きなら、関連ブログなんかそれこそ無数に存在するし、とにかくなんでもいいからいっぱい読むことこそ、遠回りのように見えてじつは近道ではないかと思います。発信型という言い方がもてはやされてはやウン年、という感じですが、発信するからには大量のインプットがぜったいに必要です。最近、路線バスの車内掲示もマルチリンガル表記になって、これはこれでいい傾向ではありますが、いかんせんその英文が自分でもそれとわかるほどヒドかったりします… 'Please restrain yourself from using your mobile phone.' なんてのがあったりしてなんだかしゃっくりが出そう。「携帯電話のご使用はお控えください」を日本語の発想のままでそのまんま引き写した言い方。ネイティヴの人に言わんとしていることがこれで通じるのかな?? 'Please do not use your cell phone while on board.' とかじゃ、ダメなのかな? 

 チャロにもどりまして、個人的にはルビーの'Everyone is good at something.' という科白もすこぶる印象的です…こういうのはしっかり覚えて、いざというときにさっと使えるように自分の表現の持ち駒としたい。…もっとも「情報屋ジョニー」氏の過去生も気になってしかたがない(笑)。

posted by Curragh at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 語学関連
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