2007年06月02日

Choral Evensong at Guildford Cathedral

 BBC Radio3のChoral Evensong。この前の日曜は前にもすこし触れたとおり「聖霊降臨祭」でして、ギルドフォード大聖堂からの中継でした。

 後日、聴いてみたらけっこうよかったので、もうすこし書いてみたくなりました。

 アンセムの「来たれ、聖霊」ははじめて耳にする作曲家ガウアーズの作品。ガウアーズが2000年7月、'The Federation of Old Choristers' Associations' という聖歌隊員OB組織から、カンタベリー大聖堂で開く年次総会用として委嘱されて書いた作品で、今回がラジオ初演。閉祭前の聖歌は、S.S. ウェズリー作曲の「おお汝、高き御空より来たりし者よ」。その前にもう一曲追加されているのが、1925年の「ウスター・グロスター・ヘレフォードの三聖歌隊フェスティヴァル」用に書かれたサムションの「ト調のテ・デウム」。こちらの作品は定旋律っぽく歌われるテノール声部の部分がおもしろく感じました。

 この'evensong' という英国国教会特有の礼拝は、1549年に刊行された「第一共通祈祷書」によって、それまでラテン語だった典礼を原則すべて自国語つまり英語でおこなうようことが定められ、またローマカトリックの修道院で一日に8回捧げられていた聖務日課を、朝と夕に集約・簡略化することによって生まれた典礼様式です。じっさいにストリーミング放送を聴いてみればその特徴が実感できると思いますが、たとえば日本のプロテスタント諸派の礼拝とはあきらかにちがう。最大のちがいは「聖歌(ルター派などでは賛美歌、呼び方は教派によって異なるのでややこしいけれどようするに礼拝で歌われる歌全般。日本の『賛美歌21』とか)を歌うのが専属の、訓練されたプロの聖歌隊」だという点にあります。ローマカトリックでも、会衆(一般信徒)がミサで歌うようになったのはじつは20世紀、第二ヴァティカン公会議以降のこと。それまでは聖歌隊の歌を「聴くもの」でした。

 英国国教会の音楽は独特ですが、その音楽はほかのプロテスタント諸派とくらべて、ローマカトリックの古いスタイルをとどめている点が大きな特徴です。入祭唱とか答唱聖歌とか。Anglican Chant という特有の形式ながら、詩編もしっかり毎日歌っていますし。そしてなによりもオルガン好きとしては、閉祭後のorgan voluntary と呼ばれるオルガン独奏があるから好き、というのもある。そうは言ってもこれだけ音楽を効果的に用いる礼拝、というのはバッハの所属していたルター派と英国国教会くらいのものではないかと思う。ローマカトリックのミサも音楽はつきものですが、歌われる作品の数、豊富なレパートリー、ヴァラエティさという点にかけては英国国教会のほうが上のような気がします。主任司祭によるお説教とお祈り、2回の聖書朗読(最初は旧約から、二回目は新約から)をのぞけばほとんど教会音楽の演奏会みたいな形式です。

 当日、説教をおこなったヴィクター・ストック師の話は時事問題ともからめた広い視点に立ったもので、このへんが教義説明に終始しがちな日本の教会とちがうところかなとも思った。そしてこの司祭先生、けっこう軽口もたたきます(「…以前ロンドンでおもにcabby、[運ちゃん]相手に月曜日にDrive Time というラジオ深夜番組をやっていて、おもしろおかしい話ばかりしていた…」)。英語の説教だから日本人には敷居が高いけれども、「聖霊降臨」のエピソードを伝える使途言行録の朗読箇所(2. vv.1-13)、とくに「どうしてわたしたちは、めいめいが生まれた故郷のことばを聞くのだろうか」という一節を引き合いに出して、「おなじ『声』を聞いても聞き手の環境がちがえば受け取り方もまるでちがう」と話し、おなじアングリカンでも米国では同性愛者の司教が誕生しているいっぽう、ナイジェリアではおなじ教派の司教が同性愛者はみな5年の懲役刑だと息巻いているとか、現在の状況を無視してやみくもに過去に範を求めることはむしろ危険だとか、大切なのは雑音の聞こえない「完全な静寂」のなかで語りかける神の声に耳を傾けること…とか、非信徒も思わず耳を傾けてしまう話し方というか、「教義のゴリ押し」にならないところがいい。どうもこのストック師、話し上手で有名らしい。BBCラジオにも番組をもっているようですし。

 それからBBCのサイトはSecond Lesson の朗読箇所をなぜか「コリントの信徒への手紙 2」にしてますね…?? 

 それと最後のウェズリーの聖歌。出だしを耳にしたとき、あれ、これアトウッドの「来たれ、聖霊」に似ているなぁ…と「気まクラの」の「どこ似てコーナー」よろしく思ってしまった。

 いまギルドフォード大聖堂公式サイトにて確認したら、ここの音楽監督ってずいぶん若い人みたいです(40歳!)。オルガニストも負けずに若い(33歳!!)。

 それとこちらのページには、2005年時点でコリスターだった母親の書いた記事が載ってます。

 …ちなみにこのギルドフォード大聖堂、聖歌隊学校もちゃんともっているのですが、問題は聖堂からなんと5.5km も離れていること。なので、学校→聖堂へ子どもたちを送る親御さんの車が走る距離は、一年で地球一周分(!!)にもなるそうです…。

posted by Curragh at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
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