この前、「リトル・チャロ 2」のラジオ版講座のテキストを買いに行ったおり、ふと「3か月トピック英会話」のテキストも目に入ったのでついでに立ち読み。ふんふん、来月はじめの放送分は冠詞・定冠詞か。これはおもしろそう…録画しておこうかな、などとひとりごちて帰る(こちらのテキストは買わなかったが)。この前録画したものを見たのですが、なるほど、英会話におけるリズムに焦点が当てられてまして、ちょっと新鮮でした…だいぶ前、欧米人はけっして単語単位でなんか発話しているわけではなく、意味内容のひとかたまり(チャンク)でいっきに話す、抑揚の起伏も単語単位ではなくて「チャンク」単位、このひとかたまりの単位で聞き取れる / 話せるようになることが重要、みたいな特訓講座のような広告を語学雑誌で見かけたことも思い出していた。大西先生の書いた番組のテキストには、「3か月、とにかく歯を食いしばってがんばってください」みたいなことも書かれていました。時間はないが、とにかくいま、英会話の必要に迫られている人はこの番組で学ぶのはとても効果的だと思うし、なんたって出費もテキスト代だけですみますし。
以前にも書いたけれども、その昔「前置詞3年、冠詞8年」と言われていたくらい、この英文における最小単位語句は、日本人学習者泣かせの最たるものかもしれない(関係詞とか仮定法、12時制もややこしいと言えばややこしいけれども)。以下は自分自身への戒めも含めた備忘録。
たとえばテキストにも載っていたような、
My daughter married a guy from London.
My daughter married some guy from London.
のちがい、即座にわかるでしょうか。また、関係詞で「限定」されているから先行名詞は定冠詞でくくられる、ということを鵜呑みにしてはいないだろうか(↓下線部)。
In our cathedral there was an organ of which we were very proud, as it was one of the biggest in the kingdom; not much like the organs you see nowadays of course; but it had two rows of keys and a lot of pipes, and it took ten men to keep the bellows supplied with wind.(Sydney Nicholson, Peter : The Adventures of a Chorister 1137 - 1937, p. 32)
なんでか、というと、ここではじめて登場する一台の'organ' だから。つづく'the organs you see nowadays ...' というのは、「みんながこんにち見て知っているようなたぐいのオルガン」なので、定冠詞がつく。また、たとえば幼い男の子が父親に向かって、
This is a book I bought yesterday!
と言ったら、その子の父親ははじめてそのbook を見せられていると想像できる。もし「パパが買ってくれたのはこの本だよね?」みたいな感じで見せに来たら、その子は、
This must be the book you bought me yesterday!
みたいに言う(はず)。
また居酒屋で「ビール一杯、ください」と言いたいときは、
I'll have a beer, please.
みたいに言えばいいと思う。この不定冠詞 a は文字どおり「(不特定多数のビールのうちの)一杯」だから。では最初に挙げた例文の'a guy' と'some guy' のちがいは? 後者は、たとえば嫁さんの父親が、「ロンドン出身とかいうなんだかわからんウマの骨なんか」みたいな気持ちがこめられている。これは不定冠詞と可算・不可算名詞にくっつくsomeとのニュアンスのちがいの問題ではあるが、文芸翻訳、ことに英米の小説の翻訳を仕事にしたいという人はこれくらいの注意深さが必要だということです。
名詞の可算・不可算も冠詞の使い分けについでつかみにくい。拙い英文メールとか綴っていて冠詞および名詞の可算・不可算問題にぶつかると、辞書とにらめっこするか、アタマを掻きむしっている(大袈裟に表現してみました)。まあそれでも、
There is no room for misunderstanding.
みたいな文なら文字どおり「誤解の余地なく」すんなりわかる。学校ではnews, information, water, fish なんかは「不可算」だと教えられる(fish については基本的には「単複同形」)。でもたとえばanxiety, possession, disappointment なんかは複数形になるとそれぞれ「個々の心配の種」、「所有物」、「がっかりさせられる人・物」という具体的な対象物を指す。可算・不可算両方とも可能な名詞ってひじょうに多くて、French food と表記する場合があるかと思えば、dairy foods と表記できる場合もある。後者は、たとえば「チーズ、牛乳、バター…」といった具体的な乳製品を売っている売り場なんかに使える。あ、それで思い出したけれども、いつも買い物に行っている某スーパー。あそこの乳製品売り場って'daily foods' と麗々と表記してあるから、いいかげんに店長さんに誤記を教えてあげたいと思う今日このごろ(苦笑)。
定冠詞the については、いまひとつ基本的な使い方として「直前の名詞の繰り返しを避ける代名詞」にも使われますね。たとえばSaint Brendan と書いたあと、すぐthe Irish がどうしたこうしたとかつづいたら、「そのアイルランド人」つまり聖ブレンダンその人のことを言っているのであって、けっして「アイルランド人(全体)」という意味ではありません、念のため。
不定冠詞のちょっと変わった(?)使い方として、あきらかにだれでも知っているような「固有名詞」にくっつく場合もあったりします。たとえば'a Mt Fuji in Japan ...' みたいな文。Mt Fuji なんて日本の象徴とも言うべき日本最高峰の火山、知名度だって世界的だと思うのに、なんでまた不定冠詞がくっついているのか? この文は、たとえば「日本にある、えーとなんだったかな、たしか『富士山』とかいう山…」という気持ちが表れている。知っているくせに、「わざと」言っているのかもしれない。'Did you know of a Pooh bear?' ときてもおなじ(「パディントン」でもいいけど)。「プーさん」は一頭しかいないしあのおなじみの「プー」さんなんですが、「あのプーさんとかいう熊の子」くらいの気持ちになる。「あなたも知っているあのプーさん」だったら、ふつうにthe Pooh bear になると思う。またsun, earth, moon なんかは「ひとつしかなく、かつなにを指しているかが明らか」なので、定冠詞つきで表記される。
以上まとめ:不定冠詞 a:one among many。定冠詞 the:the only one。
「だれでもよいから、英会話のできる人を雇いたい」と言いたいときは'I want to employ a guy who can speak English well.' で、「とにかくだれだっていいから」が強調されると'anyone who can speak ...' もしくは'any guy who can speak ...' というぐあいになる。
また「話者の断定的な気持ち」が強いときなんかもthe を使ったりする。
As a result of the two wars, ...
As the result of the two wars ...
では、こめられているニュアンスがまるでちがう。前者は「両大戦の結果であろうか、…」、後者では「両大戦のまぎれもない結果として…」となって、ほとんど書き手の結論というか、主張になっている。そしてもちろん'He decided to wash his Cadillac. He loved the car.' ときたら、the car = his Cadillac ということ。定冠詞the の概念は、「既知との遭遇」もしくは「情報共有のしるし」ととらえていいように思う。
本日のおまけ:最近、とんでもないクソ番組を垂れ流していたことが発覚して個人的にもかなり頭にきた英国BBCですが、こんな興味深い記事がありました。8000Hz 以上の領域で「特有な輝き」が発揮されるのですって。それはそうと、音楽というものはそういう物理的要素のみで決まるものではなく、またこの調査を行った教授先生が言うような、「人工合成」聖歌隊(?、ようするにロボットみたいな存在に歌わせるということみたいなので、いまはやりのなんとかミクというやつか??)の開発にも役立つみたいなこと書いてありますが、音楽というのはもっともっと深い芸術だと思うぞ。
2011年01月23日
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