2007年06月15日

「伊豆 秘密の絶景」

 先週末、NHK静岡のローカル番組「フジヤマTV」で、「伊豆 秘密の絶景」と題された放送を見ました。

 いずれの隠れた名所も、かんたんには近づけない場所にあるため、地元の人以外にはほとんど知られていないところばかり。稲取港北側のトモロ岬付近にある奇岩「ハサミ岩」とか、堂ヶ島の天窓洞とおなじ時期に国の天然記念物に指定された南伊豆町・手石地区にある「弥蛇の岩屋」という神秘的な海蝕洞窟。岩石好き・地学好きなので、名前はもちろん知ってるけれども、めったにTVで見られない場所ばかりなので、番組はとても興味深かった(ゲストのコロッケさんのおしゃべりもおもしろかったけれど)。

 「ハサミ岩」のほうは、まるで合掌でもするかのように屹立するふたつの巨岩の真ん中よりちょっと上に、ちょうど合掌する手と手のあいだに橋わたしでもするかのように水平に石が連結した構造のなんともけったいな奇岩でして、昔はふつうに崖伝いに降りて行けたのですが、四半世紀前の伊豆大島近海地震のときに当時の旧道が崩壊して、陸地からは行けなくなっています(もっとも磯釣り好きの床屋の主人によれば、俗に言う「釣り人の道」はあって、「ハサミ岩」手前の断崖にロープがあるとか…さすが磯釣り師は道の開拓者[笑]。危険なので、自信のない方は陸路ではなくすなおに船に乗せてもらって鑑賞してください)。奇岩へ行くには漁船にでも乗るしかないのですが、番組でもダイビング船に乗船してハサミ岩のある海岸に上陸してました。おお、近づいてみるとけっこうでかい! 高さ20m近くはあるでしょうか。そしてこの岩はいまでも信仰の対象になっているようで、きちんと注連縄が張り渡してありました。

 「弥蛇の岩屋」のほうは、堂ヶ島の有名な「天窓洞」と同様、海蝕洞窟なのですが、規模はずっとちいさい。名前のいわれは、晴れた日に小舟で入ると、洞窟の最奥部天井付近に、金色に輝く阿弥陀如来三尊が出現するということから。ようするに洞窟内に差しこむ太陽光線の芸術、というわけなのですが、これを拝みに行くのは至難の業。最寄りの小稲漁港から小型漁船に乗せてもらうのですが、春から夏の大潮のときの干潮で快晴の午前中、しかもべた凪でないと光輝く阿弥陀三尊は拝めないのです。チャンスはひじょうにかぎられています。というわけで、自宅にいながら阿弥陀三尊を拝見することができて、こちらも大満足。もっともぼわーっとして、よくわからなかったが…。それでもたしかに三体、右上がりに並んで見えましたね。洞窟はスコットランド・アウターヘブリディーズ諸島のスタッファ島に口を開けている「フィンガルの洞窟」の日本版みたい。以前「名曲アルバム」で、メンデルスゾーン作曲の同名の序曲を放映していたとき、この海蝕洞窟の映像を見ましたが、やはりここもちいさい洞窟なので、べた凪の干潮のときでないと入れないようです。光の芸術…という点では、カプリ島の「青の洞窟」南伊豆版と言えなくもないかな。洞窟ついでに堂ヶ島の「洞窟めぐり」遊覧船。昨年11月末以来、中止されていた天窓洞内の遊覧はこのほど再開されたようです。

 最後に登場したのが驚愕小学生。伊東の城ヶ崎海岸一帯を自分の家の庭のように知り尽くしている12歳の少年地質学者です。最近、こんなすばらしい自然の遊び場がすぐ目前に広がっているにもかかわらず見向きもしないような子が増えている…と感じていただけに、こういうたくましい子を見ますとなんだかうれしくなる。かつて川端康成は「伊豆は海山の風景の画廊」と賞賛していたけれど、けだし至言です。バブル全盛期、西伊豆にもゴルフ場だの、リゾート開発という名の壊し屋集団が押しかけてきたことがあったが、伊豆半島ほど海山の自然果汁100%みたいなすばらしい土地はそうない。よく田舎はなにもない…とか揶揄されるけれども、そうではなくて、番組に出てきた伊東のこの子のように、身の回りの自然のすばらしさがわかってないだけの話。伊豆はこのままでもじゅうぶんすばらしいし、ここほど海山の自然が詰まった遊び場なんてないですよ。伊豆は自然が命。もしこれがすべて人工的な、ディズニーランドよろしく人から金を取って稼ぐ施設だらけになってしまったら、伊豆としての存在価値はなくなる。西伊豆の場合、結果として土地買収が難航し、そうこうしているうちに湾岸戦争がはじまり、バブルははじけた…おかげで大規模な環境破壊は免れた。伊豆高原には周囲の自然環境とうまく共存しているちいさなミュージアムが多いけれども、おなじ作るんならそういう施設のほうがはるかに望ましい。西伊豆町にも、「黄金崎クリスタルパーク」という地元ならではのすばらしいガラス工芸美術館があって、春先だったか、開館以来の総来場者数が100万人の大台を突破したとか聞きました。金太郎飴よろしくどこにでもある施設を建設するのではなくて、あくまで地元の宝を発掘してそれを生かす方向に活路を見出すべきです。

 …で、番組で紹介された城ヶ崎海岸の「まん丸い石」というのは、長い年月のあいだに波浪で削られ削られしてお椀状に刳りぬかれた「ポットホール」の中で、荒波に転がされてできた黒光りする、文字どおりのまん丸い溶岩で、第一級の自然の芸術品。この石は地学好きのあいだではわりと知られた存在だろうと思います。

 …そう言えば黄金崎から安良里へ抜ける、通称「大磯(おいそ)の旧道」の途中にも絶壁を降りるロープが樹の幹に結びつけられているけれど、いまだカメラを抱えて降りたことなし。高低差20m以上の急崖を降りる…ことはできるかもしれないが、問題は帰り。自分の腕力じゃ、とても登れそうにない(笑)。

 西伊豆つながりでは、先日もローカル放送で「かも風鈴」の屋台販売体験…なんてものもやってました。よくよく見てみたら、なんだ、安良里漁協のまん前じゃん! 「かも風鈴」というのは、となりの宇久須地区でガラス原料になる珪石(けいせき)が採れることから旧賀茂村時代、村おこしの一環として編み出されたガラス工芸の風鈴。とても涼やかな音色を響かせてくれるので、こんどお盆とかで現地に行ったら自家用として買ってみようかな。

 …それと、伊豆の国市・大仁地区のこちらの津軽三味線の演奏グループ。なんと先月開催された津軽三味線の全国大会「第19回津軽三味線全日本金木大会」で、団体一般の部で優勝! これはすごいこと。心から拍手を送ります。

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