2011年03月19日

ヴァルヒャ 没後20年

 いま、涙声でリスナーに話しかける児山紀芳さんのDJ を聴いています(「ジャズ・トゥナイト」)。

 …ほんとうはこういう内容の記事を書くべきではない非常事態なので、どうしようかとも迷ったのですが、あえて書こうかと思います。震災当日はやはり音楽どころじゃない気分にもなったのですが、自分はエピキュリアンなので、どうしても音楽が必要だし、これなくしては生活できない、と思う。ようするに心の弱い人間なんですが、それでも芸術の力は偉大なり、と信じて疑わない人でもある。

 2月最後の日曜の朝、「名演奏ライブラリー」にて、ヘルムート・ヴァルヒャの弾くバッハの鍵盤作品の特集が組まれてました。案内役の諸石幸生さんに言われて気づいたのだけれども、そうか、今年はヴァルヒャ没後20年の節目でもあったのか。…曲によってはひさしぶりに耳にするものもあって、個人的にはこの企画、とてもうれしかった。

 そのあと思うところあってこれまたひさしぶりに英語版Wikipediaヴァルヒャの記事を見たら、なにげに外部リンクが増えていた。片っ端からクリックしていったら、もうおどろきの連続。「オブリガート・チェンバロとヴァイオリンのためのソナタ BWV.1018」の第1楽章を練習する音源ファイルとか、見たことのないプライヴェートな写真画像(? これが噂に聞いた自宅の練習用オルガンか)、そしてある音楽祭のドキュメンタリー番組に収録されたとおぼしきヴァルヒャの演奏クリップ!! このドキュメンタリー、制作されたのは40年くらい前らしく、惜しいことにヴァルヒャの演奏風景はモノクロ映像しかなかったが、それでも聖ピエール・ル・ジュヌ教会のジルバーマンオルガンでバッハの「前奏曲とフーガ BWV.541」を弾くヴァルヒャの姿に文字どおり釘付けです。BWV.1018 の音源では、みずからヴァイオリンパートを歌いながら弾いています! 教え子たちに他のパートを「歌うように」要求していたというヴァルヒャ教授みずからもこうやって練習していたのかと思ったら、本人もよくわからんが泣けてきた。また、教え子のひとりの米国女性奏者の寄稿したこちらの文章も師匠の教授法が書かれてあったりで、貴重です。

 …震災の話にもどりますが、当たり前のことながらNHK-FM も特別編成、いつも聴いている「バロックの森」とか「弾き語りフォーユー」とか「ベスト・オヴ・クラシック」、「インストルメンタル・ジャーニー」の流れない一週間というのがにわかに信じられなかった。そして15日夕方、東電による計画停電をはじめて経験した。電気が復帰したなと思いきや、こんどは
ズシンと突き上げる大きな揺れ。いまのは震源が近いぞと警戒していたら、震源が富士宮付近だと聞いて愕然とした。気象庁はなにも言ってないけれど、富士山西麓直下じゃないですか。これってマグマの動きと無関係だと言い切れるんでしょうか? M. 9.0 に誘発された(?)つよい地震は新潟 - 長野 - 富士宮とほぼ一直線上で起きている点もひじょうに気になる。「大地鳴動の時代」と書いたとはいえ、一刻もはやく沈静化して、被災地支援および通常の生活が取りもどせるようにと祈らずにはいられない。今日の午後、NHKラジオ第1で「明日へのことば」の再放送を聴く。尊敬するカウンターテノール歌手の米良美一さんのインタヴューだった。こういうときだからかもしれないが、米良さんの壮絶な半生と音楽に生きる道を見出したお話は、ほんとうに心に染み入るものでした。

追記:オルガンビルダーの「どら」さんのブログ経由で知ったのですが、来たる23日にみなとみらいホールにて被災地支援のチャリティーオルガンコンサートが開かれるそうなので、当日の計画停電…がどうなるか、JR がどうなるかわかりませんが、行ける方は聴きに行ってみてはいかがでしょうか。

posted by Curragh at 23:41| Comment(6) | TrackBack(0) | NHK-FM
この記事へのコメント
こんにちは、一日一バッハのaeternitasです。
東北地方太平洋沖地震に続き、Curraghさんのお住まいの地域でも地震(その後いかがですか?)。ほかにも地震が発生していて、この先日本は、いったいどうなることやら。
さて、ヴァルヒャの記事、未知の情報もあり、興味深く拝読いたしました。バッハのステレオ録音からでも、すでに40年も経過していますが、いまだに静的な構築性と、声部進行の明瞭さでは、群を抜いた存在ですよね。いま、弊ブログでも、ヴァルヒャの演奏をきいていますが、改めてそう感じています。
Posted by aeternitas at 2011年03月21日 13:50
aeternitasさん、

地震ですが、さいわい自分の地域はなんともありませんでした。富士宮には以前書いた記事でコメントいただいた方のこととか心配しておりましたが、ご無事だったようです。

拙記事、お役に立ったみたいでうれしいです。自分もヴァルヒャの教授法の書かれたpdf 文書はプリントアウトしてじっくり目を通してみました。声部処理の鮮やかさは、40年以上経過した演奏とはとても思えないほど新鮮ですね。感動をあらたにしております。影響を受けやすく冷めやすい人間ゆえ、いまBWV.1018 のラルゴ楽章の出だしだけでも歌いながら(?)弾けるようにと、すこしばかし練習しています(才能もないくせに「4声反行フーガ BWV.1080-5」や「3声のリチェルカーレ BWV.1079-1」、「シチリアーノ BWV.1031」とかも同時に練習していたりします)。

それと、以前ここでも書いたことの焼き直しですが、↓のサイトにも貴重な音源が転がってます。

http://orgelconcerten.ncrv.nl/node/3990304
Posted by Curragh at 2011年03月21日 19:54
はじめまして。フランス語で書かれたヴァルヒャの伝記は読まれましたでしょうか?貴重な写真が豊富で買う価値はあると思います。
Posted by Masui at 2017年06月12日 00:09
Masui さん、

コメントありがとうございます。

いえ、仏語伝記本は未読、というか、仏語は万年初心者レベルなので、あまりたいして読み解けない、と言うべきでしょうか。Masui さんは読まれたのですか? 
Posted by Curragh at 2017年06月12日 14:32
いえ私もフランス語は全くの無知です。ですがこの本はネット上にないヴァルヒャの写真が結構のっていてファンの私には楽しめました。ちなみにですがブログ主様はbwv541以外のヴァルヒャの映像はご存じないでしょうか?なぜか大演奏家なのにヴァルヒャの映像はほとんど残されてないので。
Posted by Masui at 2017年06月12日 22:55
Masui さん

いいえ、ワタシも知っているのはこのクリップだけなんです。YouTube あたりにもうすこし転がっているといいんですが … 。
Posted by Curragh at 2017年06月14日 13:59
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