2007年07月01日

西暦578年からつづく老舗企業?!

 土曜の早朝になんとなく見たNHK総合「視点・論点」。「老舗(しにせ)の力」と題して、拓殖大学教授の野村進氏が出てました。昨今の企業不祥事も引き合いに出しつつ、じつは日本は世界有数の老舗企業大国でもある、というお話。で、この話を聞いてもっとも驚いたのは、なんと創業が西暦578年という会社が奈良にある、ということ。578年! ブレンダンの生きていた時代から1.400年あまりもつづいてきたことになります(宮大工の会社らしい)。ほぇーっ、そんな会社あるんだ…と感心しきり。

 話のポイントは野村氏の著作『千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン』の内容と一致しているみたいですが、時代の波をくぐりぬけて存続してきた老舗企業の多さというより、それらに共通するのが「代々受け継いできた古代の人の技術・知恵」をたいへんうまく時代の最先端 (state of the art)を代表するような製品づくりに活かしている点にある、ということ。たとえば日本最古といわれる鳥取の旧岩美銅山。ここで長年にわたって培われた精錬技術が、こんどは大量に廃棄処分される携帯電話などの端末から金銀銅といった貴金属を取り出す作業に生かされている。廃棄された携帯電話をゴミの山ならぬ文字どおりの宝の山に変えた、と。そういえば、ぶじ解体工事の終わった高松塚古墳の石室。先日「クローズアップ現代」を見て、やはり古代に人の高い技術力を知って驚きました。石室の壁を床からはずそうとしたら、床石と石壁との接合部には紙切れ一枚も入る隙間さえなく、まさにぴったり組み合わさっていたというのです。これは当然、解体するほうとしてはやっかいな問題。現場監督の石工の方(かつてイースター島で、倒壊していたモアイを復元した人でもある)がさんざ知恵を絞ったあげく、思いついたのは、「やっとこ」みたいな特殊な金具で側面を挟んでほんのすこしもち上げ、あいた隙間に金物屋で仕入れてきた金属製の「ころ」を何本も入れること。「ころ」も古代人の発明した技術。昔の人の知恵・技術の高さはやはりすごい、と感じたしだいです。自分の好きな楽器オルガンだって、いまでこそ送風装置(blower)とかストップアクションなんかは電気式、レジストレーションの組み合わせを記憶するコンビネーション記憶装置もコンピュータ制御が当たり前ですが、いまだに手鍵盤は「てこ」の原理で連結されたトラッカーアクションという昔ながらの方式を採用しているのがふつうです(バロック時代のオルガンを忠実に模倣した楽器の場合、ストップアクションも昔ながらのトラッカー式を採用している場合もあります)。19世紀、ロマンティックな楽器が増えたころ、バーカーレバーに代表される「空気式」や「電磁石式」のアクションが実用化されたりしたけれど、これらのアクションで連結された鍵盤では鍵を押し下げてから空気弁が開き、パイプから音が出るまでどうしてもタイムラグが発生します。ようするに反応が鈍い。けっきょくオルガニストにとって、指の動きに瞬時に反応する理想的なアクションは昔ながらのトラッカー式しかない、ということで、現代の技術も導入しつつ、いまではコンサート用大オルガンも、鍵盤だけはトラッカー式アクションが主流になっています(舞台上に移動式のコンソールをもつ一部のコンサートオルガンの場合、移動式のほうは当然電線でつながれた電気式を採用しています)。

 野村氏の本、未読ですが、「筆ペン」で有名な「呉竹」なんかも出てくるし、おもしろそうですね。

 こうした日本の「元気な」老舗企業、とくると思い出すのが身近にある老舗、東海部品工業。伊豆半島の真ん中、伊豆市(旧天城湯ヶ島町)にネジ製造工場がありますが、じつはHDDに使われている精密ネジ、ほとんどがここで生産されているのです。世界中のノートPCの内蔵HDDには、みんなここのネジが使われていると言っていいくらい。番組では、携帯電話の送受信部に使われているのがじつは日本の老舗企業の技術だ、とも言ってました。ということは、あのiPhoneだってその会社から供給された技術がないと通話もできない、ということか。

 番組を見終わって、最近、企業の不祥事ばかりが目につくけれども、こうしてまっとうにがんばっている会社だってたくさんあるわけですし、TVもこうした元気な会社をもっともっと取り上げてほしい、とも感じた。

 …日本人の快挙、とくると、やっぱりチャイコフスキー国際コンクール。ヴァイオリン製作部門で邦人が優勝をさらった、との一報に接したときもおおッ、と思いましたが、こんどはなんとヴァイオリンの演奏部門でも優勝者が! この前のミス・ユニヴァース世界大会でも静岡県出身の方がみごと女王に選ばれたばかりだし、世界を舞台に活躍する日本人がどんどん出てくるのはほんと喜ばしいし、励みになる。

posted by Curragh at 16:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 日々の雑感など
この記事へのコメント
神尾さんの優勝、めでたいですね!

鳥取県岩美町の荒金銅山といえば、実は小生の母の実家のすぐ近くなのであります。まったく知らなかったのですが(実はCurraghさまの記事を拝見して初めて知ったのですが)、予め連絡すると見学できるようですので、機会があったら行ってみようかなと思います。

Posted by cepha at 2007年07月01日 19:37
cephaさま

おおッ! なんという奇遇でしょう。

そういえば、自分の母の実家のとなり、旧土肥町にも有名な金山がありまして、その一部が観光用として公開されています。もしなにかの機会に伊豆半島方面にお越しになられることがあれば、立ち寄ってみるのもおもしろいかと思います(すぐ近くの土肥山川沿いにある「土肥」バス停には無料の足湯もあります)

http://www.toi-annai.com/asobu/asobu800.htm#
Posted by Curragh at 2007年07月01日 21:05
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