2011年08月14日

これぞ音楽(芸術)の力

1). 「疎開」。先の大戦終結を学童疎開先で迎えた体験をしたお年寄りのなかには、よもや終戦66 年目にして「放射能疎開」などという事態に陥るとは夢にも思っていなかったと思う。

 先日、NHK 総合の朝のニュースを見ていたら、世界的指揮者の佐渡裕さんが釜石市を訪問して、なんと子どもだけの弦楽オケによるチャリティーコンサートを避難所などで開いたことを報じてまして、つい見入ってしまった。なんでもきっかけは被災した女性からの手紙だったとかで、佐渡さん以外にも現地入りして「音楽の贈りもの」を届けに行った演奏家は多数、おられるとは思うけれども、佐渡さんの行為はほんとうにすばらしく、見ているこちらも感動した。いまもっとも音楽が必要とされているところへ音楽を届けることこそ、音楽で飯を食べている人の務めでもあるといつも考えているので。音楽はなにも高い金払って演奏会場だけで聴かせるべきものじゃないし、以前書いたかもしれないがたとえば長期入院している患者さんとかにはもっともっと音楽が必要なんじゃないかといつも思っている。大震災と大津波、そして原発事故とたいへんな心労を抱えている人たちこそ、もっとも音楽を必要としているはずなので、こうした試みは今後もぜひつづけていただきたいと思います。↓ の動画にもありますが、かつての松原 ( 波高20m の津波に襲われた場所らしい) で海に向かって子どもたちがバッハの「アリア」を奏でるという場面は、佐渡さんらしい気遣いがつよく感じられました。津波で流され、いまだに行方不明の人が届出分だけでも4700 人近くにものぼる。そうした御霊にたいして、鎮魂の気持ちをこめて子どもたちがバッハの音楽を演奏してくれたというのは、どんな一流の著名な海外の演奏家の演奏よりも御霊の魂に届き、残された方々の心に深く深く響いたのではないかと思う。そして「ふるさと」の演奏。やはりこの作品は日本人の心に深く染み入るものがある ( → 関連記事。東北地方はじつは学校音楽活動、とくに合唱部の活動がさかんな土地柄でもあり、ラテン語歌詞のミサ曲とかもレパートリーとするようなひじょうに高いレヴェルの公立学校がいくつもあります )



2). 音楽が必要、といっても必要とする音楽はむろん人それぞれ。自分みたいにバッハが好き、という人もいればクラシックを毛嫌いする向きもいる。ひとつ言いたいのは、「食わず嫌いはダメ」ということ。佐渡さんはクラシックの指揮者で、はじめてバッハの「アリア」を耳にした被災者の方も多かったかもしれない。でもすばらしい音楽には国籍も時代も言語も人の趣味さえ超越してズバっと聴く者の心を鷲掴みにするものだと思う。「アリア」も「ふるさと」も、どちらにもその場にいた人たちが深く感動していたことは、TV 画面を通じてこちらにもよく伝わってきました。

 クラシックを敬遠する人というのは、たとえば辛気臭い、演奏時間が長い、堅苦しい … という一方的な思いこみで「食わず嫌い」な向きが存外多いのではないかという気がします。といってもべつに西洋音楽崇拝者、というわけではないが … 。NHK とくると音楽好きは「名曲アルバム」というパブロフの犬的反応があるけれど、以前少し触れたように今年は番組開始から35 周年だそうで、まずはお祝い申しあげたい。先日、そんな「名曲アルバム」35 年の歩みを振り返る特番みたいなものが放映されていてつい録画していたんですが、考えてみればこのたった5 分のミニ音楽番組の功績はひじょうに大きいと思う。5 分でその「名曲」のエッセンスをすばらしい演奏と作曲家ゆかりの地の取材映像と組み合わせて伝えよう ! という試みは成功したと言っていいでしょう。とはいえ尾高忠明さんはじめ、当初その話を聞かされた音楽家はみな異口同音に「無茶苦茶だ ! 」と思ったとか ( そりゃそうだ ) 。あれはすべて番組オリジナルの編曲で、番組のためだけに東京フィルやN響とか、一流オケや演奏家を投入して収録しているというのは知ってはいたけれど、その舞台裏を垣間見たのは今回がはじめて。なかなか貴重な映像ではある。思うんですが担当ディレクターのみなさんは、音楽にそうとう造詣が深くないとつとまりませんよね ( ブラームスの「1番」スコアとにらめっこして収録したい箇所に線引きしていた場面はおもしろかった ) ? いま放映中のイザークの名曲「インスブルックよ、さようなら」では、キャプションであの歌の歌詞を作ったのは当時のハプスブルク家皇帝マクシミリアン 1 世だと出ていてびっくり ( そしてこれは前にも書いたけれども、「ウィーン少」の原型となる宮廷礼拝堂少年聖歌隊を設立したのが、このマクシミリアン 1 世)。「外交や戦争で都を離れることが多かった皇帝は、その寂しさをこの詞に託した」。むむむそれは初耳。手許のCD ライナーには、「インスブルック宮廷を去るにあたって作曲した惜別の曲」とかなんとか、書いてありますけれども ??? それにしてもインスブルックって意外と大きな町ですね。人口12 万弱、ということは三島市よりすこし多いくらいか。この前も「世界ふれあい街歩き」にて見ましたけれども。こういう行ったことのない世界の風景を音楽とともに堪能されてくれるのも、「名曲アルバム」の魅力。取材はいつもディレクターとカメラマンのたったのふたりだそうで、150kg 以上もある機材を運んで取材しているというから、それだけでも頭がさがる。サン-サーンスの「オルガンつき」も今月初旬にかかってましたが、最後の北フランス・ディエップの灰白色の絶壁のつづく海岸風景なんか、もうすばらしいのなんの。あんな美しい光線条件は、撮ろうと思っても撮れるものじゃないです。

 「未来に残したい名曲」ランキング11 位にバッハの「アリア ( エール、エア、BWV. 1068 ) 」が入っていたけれども、個人的には「小フーガ BWV.578 」のほうが印象深い。たしか広野嗣雄氏の演奏だった。もちろんぴったり5 分におさまるようにややゆったり目 ( ? ) な演奏。使用楽器はたぶんNHKホールの大オルガン。リューベックの「ホルステン門」やブクステフーデゆかりの聖マリア教会内部とかが映ってました ( いまは、FM版の「名曲の小箱」や「名曲スケッチ」とかでかかったりする ) 。ところで「どんな名曲も5 分におさめる」名人の作曲家・栗山和樹さんが出演して苦労話とかしゃべってましたが、いまひとり編曲者としてよくお見かけするのはニウ・ナオミさんという方。「インスブルックよ … 」、「モンセラートの赤い本」、「あふれよ、わが涙」とか歌曲系の編曲が多いけれども、こちらも栗山さん同様、「5 分にする名手」なんかな ?? 

posted by Curragh at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
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