2011年11月28日

備忘録ていどに …

 いちおうここは、巷で売れているものについてはあまり取りあげない方針で記事を書いてますが、先月亡くなられたジョブズさん公認の評伝について感じたことを少しだけ。

 「セガンティーニ展」で書いたように、先日、ようやくこちらの巡回展に行ってきまして、「アイルワースのモナ・リザ」はじめ、すばらしい絵画作品の数々をたっぷり堪能してきまして、個人的に大満足! でした。

 そのことはまた後日書くとして … 美術展のあと、ひさしぶりに静岡の街に来たのでついでに本屋さんにも立ち寄った。洋書コーナーがあり、行ってみてまず目に飛びこんだのが National Geographic の黄色い表紙。『欽定訳聖書』の特集。これはおもしろそう。日本語版が出たら目を通してみようかしら。で、そのまま視線を上へ移すと … ウォルター・アイザックソン著の例の評伝本がデンとこちらを見据えてまして、なにげなく手にしたら … 重ッ ! なんとこの本、本文だけで 700 ページ近いとんでもない分厚さ。性格がひねくれているので、とりあえず最終章の最後の部分、'Coda' という見出しではじまるパラグラフを立ち読み。あまり具合のよくないときに、死や神の存在について、ジョブズさんが著者に語ったということばで閉じられています。オン / オフスイッチのくだり、ジョブズさんにとってはなんだか人生をオン / オフする装置にも思えたんでしょうか。

 そのすぐあと、こんどは邦訳本のあるコーナーに行っておんなじ箇所を立ち読み。なるほど! これはメモメモ … ( 笑 ) すくなくともその箇所は鏡で写したような訳文だったと思います。

 帰宅して、ちょっと気になったものだから訳者先生のブログ記事ものぞいてみました。こういうふうにきちんと回答される翻訳家先生というのは、まずいないでしょう。お人柄というか、ひじょうに良心的だし、なにしろ正直です。そうですよ、こんな分厚い本をこれだけの短期間で訳了する、なんてことふつうではありえない ―― それも下訳者も使わずに、ご自分だけで!! 超人的としか言いようがありません。まったくもって頭のさがる思い。てっきり数人で分担して脱稿したのかと思ってましたから。

 Amazon の書評で指摘されていたらしいんですが、見たかぎり、あきらかなケアレスミスはべつとして、なんというかほとんど「好みの問題」 … という気がした。もちろん自分も SW シリーズは好きだし 1978年の初公開時に見ている人なので、これが当初 3 つずつ計 9 つのエピソードで構想されていたことも知ってますが、邦訳本の訳でもとくに問題はないかと …。「の」が連続するのはだれだっていやなので、自分だったら「 SW シリーズ後半部最初の三部作」みたいに端折るかもしれない。とくにケチつけるようなところでもないんじゃないかな? 「先駆ける」と「先立つ」の指摘についても、語感の個人差ではという感じです。

 難関の 'the excess, the permission and warmth after the cold salads, meant a once inaccessible space had opened' については、門外漢のアタマではただたんに A, B, and C after ... というふうに思えるんですが … 。前後関係の説明を考慮してたとえば「冷たいサラダを経て示されたあの度が過ぎた量、許しとあたたかさ ―― かつて近づきがたかった空間が開けた、まさにそのとき」くらいの感じになるのかなーと思ったり … 。'... somebody said ...' の指摘についても、いちいち「だれそれが言った」なんてできないですよ。これは英語の癖みたいなもので。ためしに川端とか読んでみればいい。ようは、多すぎず少なすぎず、サジかげんしだいかと思います。また ' "...," he said, "..." ' のようにふたつにわかれた科白というのもよくあるけれども、生理的にしっくりこなかったら科白部分をひとつにまとめたってかまわない。

 自分もエラソーにここで「ヘンてこな翻訳本」について書いたことがあったけれども、すくなくとも重箱の隅をつつくような、揚げ足取りのような記事は書いてないつもりです。自分だってヒドいまちがいを何度もさらしてひとりで勝手に恥かいたりしてますし。ここで取りあげる訳本は、そんな自分でも首をかしげざるをえない本だけです ( 具体的にどんな本なのかはもう喋々しないけど ) 。いまひとつ解せないのは、最初に指摘した方はせっかくの指摘をなぜすぐに引っこめてしまったんだろうか、ということ。ひょっとしたら英語が専門の先生なのかな? ついでに比較神話学者キャンベルの『神の仮面』という本の邦訳。おなじく Amazon の読者評にて、「神話のイメージを期待して購入したが失敗。書いてる内容が意味不明」とありましたが、あれはまちがいなくヒドい翻訳の見本みたいな本。誤訳のみならず、とにかく日本語として読めたものじゃありません。ひとつの文に「の」が 4 つも連なっていたり。改訳をせつに希望。できれば分厚い 4 巻もの原本すべてを完訳してほしい ( 叶えられそうにないだろうけど)。

 ついでに … 「セガンティーニ展」を見に行ったおり、ジョブズさんの追悼特集を組んだ Time も買いまして、評伝本の著者アイザックソン氏が 'American Icon' と題する記事を寄稿してました。それによると2004年の夏、著者を散歩に誘ったジョブズさんみずから、自分のことを書いてくれないかと切り出したみたいですね ( 追記。有名になった 'Stay hungry. Stay foolish.' というジョブズさんのことばですが、自分だったら「ハングリーであれ。愚直であれ」と訳したい ) 。

posted by Curragh at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 語学関連
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