2007年09月29日

WikiScannerにザヒ博士

 いま「名曲のたのしみ/わたしの試聴室」を聴いてるんですが、アントワーヌ・タムスティという人のヴィオラ独奏によるバッハの「無伴奏パルティータ BWV.1004」。有名なシャコンヌ――怒ったレオンハルト大人(「たいじん」と読みます、念のため)をまたしても思い出す――つきの作品ですが、ヴィオラ独奏盤はたしか今井信子さんも出していたと思う。以前「バロックの森」で聴いたような気が…とにかくヴィオラで弾かれると、カン高いヴァイオリンよりもこの作品のもつ内面性というか、深みがさらに増すように思えて、自分としてはヴィオラによる独奏ヴァージョンのほうが好きです。レオンハルトや曾根麻矢子さんによるチェンバロ独奏版も好きでこっちもよく聴いています。そういえばけさの「バロックの森」では、往年の名手ヴァルヒャにリヒターとドイツ人バッハ弾きによるオルガン曲(「おお人よ汝のおおいなる罪を嘆け BWV.622」と有名な「ニ短調トッカータ BWV.565」)がかかってました。

 マクラが長すぎました…本題です。

1). 先週末に見たNHKの「つながるテレビ」。Webをネタにするような番組はあんまり好きではないけれど、いま話題のWikiScannerが取り上げられていたのでつい見てしまった。これ作った人――現役の大学院生――まで登場しまして、へぇ、この若い人が…とまずは感心しきり(画像にSafariブラウザが写っているから、この人はMac使いらしい)。ログインしている利用者までは調べられないけれども、ログインせずに書きこみしている利用者のIPアドレスは特定できるので、たしかにこれはおもしろいツールですね。いまでは日本語版も用意されていますが、一発で検索できるのは国の機関とか大企業とかでごく限られているので、まだ発展途上と言ったところでしょうか。ためしに――意地が悪いのは承知のうえ――nhk.or.jpでIPレンジを調べて、関連会社のアドレスで検索したら「高見映」とか「源義経」とかいちおうNHK関係の検索語が出てくる…と「山ねずみロッキーチャック」??? 懐かしいなぁ、芋づる式に「フランダースの犬」とか「ハイジ」とか思い出したりして…NHKついでに「タップ」なんてのもまた思い出してしまった。皆さん、お仕事もたいへんでしょうに、Wikipedia記事の追加・加筆にも熱心なようです。

 と、またしても脱線。本筋にもどしまして…「全員参加型百科事典」Wikipediaにはいろいろ問題もあるけれど、壮大な実験であることに変わりはない、と思う。でもあきらかに偏った書き方をした記事、というのはだいたいわかるものではないかな。記事を書く側にそれなりの責任がともなうのは当然だけれども、読み手も安易に鵜呑みにするのではなくて、批判精神が肝要だということでしょう。とはいえ自分もなにか適当な解説記事がないと、ついWikipediaの英語版・日本語版にリンクを張ったりするから、自制すべきかもしれない。ともあれ前にも書いたことですが、記事中にあるWikipediaのリンクはあくまで参考の目安にすぎないということをお断りしておきます(→WikiScanner関連参考記事)。

2). いまひとつは4時間まるまる「ザヒ・ハワス」みたいな番組。いまや知らない人はいないくらいに日本でも顔が売れている感ありのエジプト考古学最高会議長官のザヒ博士ですが、一昨年米国でツタンカーメン王の財宝関連の巡回展を開始したとき、NYTimes取材記事は「エジプト考古庁のショウ・ビズ(ファラオ)」という見出しをつけるほど、かなりの出たがり屋というか、とにかく自分が主役じゃないと気がすまない人らしい。Timesの記事は公平な視点に立って書かれていると思う。それでもツタンカーメンのミイラのCTスキャン調査とか、ピラミッドに隠された未知の部屋やオシリスの墓の発見とか、いろいろと功績もあるので「天才」かどうかはべつにして、エジプト考古学史上に名前を残す学者先生だということは認める。でもTimesの報道でも引用されているThe Sunday Times Magazineの評に「ザヒ・ハワスに逆らってただですむ者はひとりもいない」とあるように、自分を敵に回したり、自分に「報告」するより先にマスコミに「こんなものを発見したよ!」とかしたらもうたいへん。エジプトでの発掘許可は取り上げられ、最悪の場合は追放なんてことも。「ハワス博士はメディア大好き人間」と記事中に引用されているように、Discovery Channelとかで古代エジプトのシリーズものに「主演」しているものだから、行く先々で見知らぬ米国人に声をかけられたらしい。「いまやわたしはスターだよ、それも故国エジプトの映画俳優以上の大スターだ」と言ってはばからない博士のこと、今回の「日本デビュー」はさぞかしご満悦だったでしょう。そうそう、バハレイヤ・オアシスへの移動の車中、えなりさんが日本の俳優だとこたえると、「きみは有名か?」なんてさっそく訊いてましたしね。名前が売れているかどうかも関心事のようで。

 ところがこの番組、どういうわけかゲストに専門家がひとりもいない。吉村先生が無理だったとしてもだれか代わりくらいいなかったのだろうか。さすがに全編4時間も見てられなかったので、ツタンカーメンのところとかちょこちょこ録画したり、ようするに「ながら」で見ていたのですが、番組最後、えなりさんが偶然見つけた…という墓のシーンが気になると言えば気になった。名前からしてミイラ谷(1万体以上も眠っているらしい)だし、「このあたりにミイラがあるはずだ」とも言われてもいたようなので、だれが掘ってもひょっとしたら墓は発見できたのかもしれないが、なんだか演出臭を感じてしまった。だいいち現場にザヒ博士本人が立ち会っていないことじたいどうかと。それでもバハレイヤ・オアシス周辺の砂漠の奇岩の映像ははじめて目にして自分も驚いたから、見たのは正解だったとは思うけれども。

 …それと、いまさっきひさしぶりに博士の公式サイトのぞいたら、先月はじめに来日してたんですね、ちっとも知らなかった。

... They(NHKのこと) are planning a(sic) to film a program live from Egypt on recent archaeological discoveries. MTV is also planning to make a four-hour documentary in Egypt. I found during my visit that the pharaohs are alive and well in Japan today!

…へぇ、NHKでも放映するんだ。さすがはエジプト考古学の宣伝マン、売りこみのうまさにかけてはApple社のジョブズC.E.O.といい勝負ですな。

posted by Curragh at 23:51| Comment(3) | TrackBack(0) | 日々の雑感など
この記事へのコメント
うーむ、全編、示唆的なご内容で!

BWV1004をヴィオラで聴いたことは無いです。本当にいいなあ、と100%思えたヴァイオリン盤も無い。楽譜を眺めていたり思い出したりすると、実際に音になったものが、どれも理想像と違ってしまう・・・損なこと一定ながら自分では弾けない。・・・あんな「いやらしい」曲は無いと思っています。いい曲過ぎます! 神様がお書きになったに違いありません。

出たがり博士の番組は、娘が見入っていたので、私もたまたま見ることが出来ました。・・・でも、実際にはあの人の功績ではない、前から分かっていたはずの事実なんかも随分あったので・・・上記記事で博士の人格を知ったら、ちょっとがっかりしました。

Wikipediaは、活用が確かに難しいですね。息子は小六の分際で、自分のハマっているゲームの記事にちょっとでも間違いがあると書き換えたりしています。おいおい!
三島由紀夫の項目を読んでいて初めて知ったことを「こんなことあるんですねえ」って、たまたま知り合いの三島の専門家の方に伺ったら「いやあ、あれは怪しいですよ!」って仰っていましたし。私は面倒だとすぐWikipediaにリンク貼っちゃうので・・・気をつけないと。
Posted by ken at 2007年09月30日 04:40
Kenさま

あくまで独断と偏見なので…でもヴィオラ盤もしっとりとして味わい深いと思いますよ。たしかにあのシャコンヌにはなにか言い知れぬ力というか、ただならぬ「運動性」をつよく感じますね。

おお、なんとお子さんも記事を更新されていたのですか?! いやあ、隔世の感ありですねー。でもあの「編集指針」というか記事の書き方みたいなものを読んだとき、さすが事典…だけあってけっこう規制・約束事が多くて、とてもじゃないけれど浅学非才の身にはおいそれと手は出せないなと思いました。かわりにこのblogとか本家サイトとかでだらだらと乱文を綴ってお茶を濁して(?)います。
Posted by Curragh at 2007年10月01日 00:33
乱文だなんてとんでもないですよ!

いつも、新しい記事を楽しみにしていますからネ!

今日から、早く手を付けたかった「キリスト教史3」を、やっと読み始めました。中世史は側面から見ないとダメなんだ、と痛感している次第です。
Posted by ken at 2007年10月01日 22:22
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