2006年04月17日

山田Alternative 騒動に思うこと

 最近、にわかに他人事でないのが「山田 Alternative」と称される一連の「情報暴露ウィルス(分類上はバックドアを仕掛けるトロイの木馬型マルウェア)」。先日、NHK地上波の子ども向けニュース番組でも Winny に感染する Antinny というウィルスとその被害の深刻さが取り上げられたくらい。

 ところが「山田〜」のこわいところは、自分のマシンに Winny を導入していなくてもネットサーフィンしているだけで感染する危険がある点。「Winny をもっていない/使っていないから大丈夫」ではないのです。Winny に感染するタイプならばおなじ Winny を使っているネットワーク内でのみ「晒される」けれど(のぞき見た人がさらに外部へ流出させればけっきょくおなじことだが)、「山田〜」のほうはHDD内の全データを片っ端からhttpプロトコルで送信してブラウザで閲覧可能な状態(html化)にしてしまうというから始末におえない。つまりはこれに感染すると、自分のマシンが全世界からアクセス可能なWebサーバに変えられてしまうということ。原型となった山田ウィルスの亜種としては最悪で、今年2月に発生が確認され、いまだに感染台数が増えつづけている…らしい。

 これ最初に作った人、犯罪ですね。まったくロクなもの作らない。不正アクセス禁止法とか、いろいろと抵触するんじゃないでしょうか。とにかくこれバラまいた張本人を検挙してほしい。

 自分がインターネットに接続しはじめたころ、コンピュータウィルスといえば、たいてい海外から一方的に送りつけられる(unsolicited)件名も差出人も不明のいかにも、という感じのメールで、お決まりの .exe とか .com とかの添付ファイルつき。まだ当時は Norton などのウィルス対策ソフトさえ導入していない利用者がけっこういた時代で、ウィルス感染はおもに海外とのやり取りの多い利用者に限られた、いわば「対岸の火事」みたいな認識しかなかったころです。

 …それがいまは昔、国産ウィルスのほうがはるかに凶悪で、やることが愚劣かつ卑劣です。寡聞にして知らないが、海外産の「悪意あるプログラム(マルウェア)」は、たとえば他人のマシンのHDDの中身をすべて消去する、というものはかなり存在するけれど、HDDの中身をあらいざらいWeb上に暴露してしまう、という悪さを働くものはないように思う。このへん、日本人の悪い意味での民族性が垣間見える。2003年の「MS Bluster」騒動以降、ようやく個人レベルでもウィルス対策ソフト導入が加速され(おかげでアンチウィルスヴェンダーは笑いが止まらない)、Microsoft側も、Blusterで攻撃に晒された Windows Update(Microsoft Update)サイトを一新したり、ときおり無償でセキュリティ対策CD-ROMを配布したりと会社を挙げて真剣に取り組むようになった。

 そうはいっても「山田〜」もしくは Antinny で情報漏洩…のニュースを見ると、自衛隊・警察・国公立や私立の教育機関、空港の通用門のパスワードに旅行代理店にJR、病院に裁判所、発電所に国会議員、株式市場に証券会社、Yahoo! 、TBSにNTT…とあまりに多岐にわたっていることに唖然としてしまう…みんな仕事で使うPCになんで Winny なんか入れてあるんだろう…もっとも「山田〜」の場合は Winny の有無に関係なく危険ですが。ほんとに口あんぐりですよ。どこかの女子大生のヨーロッパ古代史関連のレポートまで晒されているらしい。いちばん笑えた、というかあきれたのは、某ウィルス対策ソフトヴェンダーの社員のマシンが Antinny に感染して、営業資料が漏洩した…というお粗末。お客に高いソフトを買わせておきながら、なんとこの社員は自分のマシンには対策ソフトを導入していなかったというわけです。

 不注意に Winny を入れていたほうも悪いけれど、晒されたファイルを見て笑っている輩もいるわけで、これをバラまいた者ともども「愉快犯」という点では同罪だと思う。

 この問題のもっと深刻な点は、携帯電話もPCも所有していない、「まったく関係ない」人の個人情報までが、本人のあずかり知らぬところでどんどん流出してしまうこと。これはこわい。とてもじゃないけどこれではうっかりカゼもひけない。それこそ芋づる式に個人情報が漏洩してしまうので、ほんとに他人事ではないですね。

 …こういうことしておもしろがっている人っていうのは、晒されてしまった、まったく落ち度のない人の痛みというのがわかっていない。過日、地元紙に柳田邦男氏がこの問題に関連して寄稿してましたが、「古典的な情報倫理でもうたい文句だけの倫理でもない、情報窃取ソフトの犯罪視、他者中傷の情報発信の犯罪視など具体的な行動を明示した情報倫理の確立が急務」と書かれていましたが、もっともな意見ですね。とにかくいまの状況は異常です。異常を異常と認識できないことはさらに輪をかけて恐ろしい。

 …インターネット上では Echelon だったか、海底ケーブル内に盗聴装置を仕掛けてあって、個人から会社から国どうしのやり取りまですべて筒抜けになっている…という話を聞いたことがあります。ことは日本国内ですまされないということを、この手の「愉快犯」たちは認識していないのでしょう。日本国内の流出情報はひょっとしたら北朝鮮あたりに傍受されていたりして。けっしてありえないことではない。

 「山田〜」騒動で思うのは、やっぱり想像力の欠如かな。「自分がいまこれをしたらどうなるか」という想像力。「人を殺すところで自分を殺す」と言っていたのはキャンベル先生だったか。倫理以前に想像力欠如のほうが深刻だと思います。自分もふくめて人はみな聖人君子ではないから、だれしも foible はもっているし、自分なんかほんと欠点だらけで恥ずかしいかぎりなんですが、人間が生きていくうえで想像力というものはとても大切だと思う。それを養うのはいわゆる英才教育ではむろんなくて、幼いころから、たとえば満開の桜を見上げては「きれいだね」とか、てんとう虫やダンゴムシをさわって「おおっ!?」と感じること(sence of wonder)とかがけっきょくその人の性格やものの考え方をあるていど決定してしまうのではないかな。そしてよく言われることだけれど、絵本の読み聞かせなんかも大切ですよね。幼少期の英語教育よりも大事なんじゃないかと思います。よい絵本は大人の鑑賞にも耐えるもの、というか、すぐれた絵本というのはたいてい、酸いも甘いも噛み分けた作家でないと書けないものなのです。

 「山田 Alternative」に感染しているかどうかをチェックするツールがあります。

 念のためダウンロードしてチェックしてみるとよいでしょう(自分もやってみました)。

posted by Curragh at 13:08| Comment(0) | TrackBack(0) | Web関連
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