2012年08月26日

スヴェーリンク、グールド、モンセラート

1). 「ビバ ! 合唱」の昨晩聴いた再放送分。今年生誕 450 年の記念イヤーに当たる初期バロックオランダ最大の作曲家にして「ドイツのオルガニスト作り」、スヴェーリンク特集でした ( 本放送のときはあいにく寝ていた人 ) 。のっけからオルガン作品「ニ調のエコー・ファンタジア」がかかってました。演奏は「古楽の楽しみ」でもよく音源がかかるハラルド・フォーゲル。で、ルター派以上に当時のカルヴァン派の事情にはうといのですが、どうも「コラール」のカルヴァン派版ともいうべき「ジュネーヴ詩編歌」なるものがさかんに歌われていたという ( 150 編からなる「詩編」はアイルランド教会やローマカトリックの別に関係なく、原始教会時代から典礼の最重要レパートリーだった ) 。で、当然スヴェーリンクも多くの「ジュネーヴ詩編歌」にもとづく声楽曲を残しています。とはいえ自分はもっぱら「オルガン音楽の先駆者」としてのスヴェーリンクしか聴いてこなかったので、こちらの声楽曲はなにも知らないにひとしいから、今回の企画はまさにタイムリーでしたね。6 − 8 声というからかなり複雑で技法的だと感じた。スヴェーリンクはフランドル楽派の「模倣対位法」に代表されるルネサンス音楽からバロックへと、ちょうど橋渡しの役目も果たしていたから、いってみればこれはその後のバッハへとレールを敷いたことにもなる。バッハがモーツァルトやベートーヴェンなどの時代への橋渡しをしたのとまったくおなじ役割を、アムステルダム古教会 ( Oude Kerk ) オルガニストだったスヴェーリンクもまた果たしていた、ということになる。多くの弟子を育てた名伯楽でもあったという点も両者は共通している。

2). この前も書いたけれどもグールドの特番の再放送もありました。で、唯一のオルガン独奏版「フーガの技法」について、その後グールドが残りのフーガを収録しなかったのは収録に使用した、「グールドお気に入りのトロントのオールセインツ教会のカサヴァン社建造のオルガン」がなんと、その後教会とともに焼失した、との解説が ( → 現在のオルガン ) 。さっそく図書館に立ち寄った折、グールドの伝記本 3 冊をひろげてみたらたしかにそう書いてあった。でも手許のアルバムのライナーにはこの楽器のほかに、ニューヨークの Theological College という聖職者養成専門の大学 ( ? ) チャペルのオルガンでも録音したとある。グールドはこの録音セッションのあと肩の故障に悩まされていたので、もうそれに懲りた、というのが主たる理由のようです。それにしても来月 25 日で生誕 80 年、10 月 4 日で没後 30 年。あらためて伝記本を読むと、どうも 50 歳の誕生日あたりから頭痛など不調を訴えていたようで、病院に担ぎ込まれてからわずか二週間で脳死と判定され、その後家族の同意を得て生命維持装置が取り外されたのが 10 月 4 日だったという。グールド指揮によるヴァーグナー「ジークフリートの牧歌」の音源や多重録音による「マイスタージンガー」の音源は聴いたことなかったから、すごく新鮮でした ( あと、大好きなベートーヴェン「田園」のグールド自身のピアノ編曲版とかも聴けてよかった ) 。それにしてもグールドってかぎりなくストイックだし、いろいろ伝記とか読んでるとなんかヴァルヒャにも似ているなあとさえ感じる。たとえば、あのハミング。グールドのあの明瞭なアーティキュレイションによるフーガの演奏は、ときに旋律線どうしの会話にも聴こえるし、なにより生命というか、音に宿っている魂みたいなものも感じる。同時に、歌心に満ちている。ヴァルヒャも心がけていたのはほかならぬこの「旋律線どうしの奏でる歌」だったから、方向性はちがえど、けっきょく表現しようとしていたことはそんなに大差なかったように思う。ちなみにグールドのデビューリサイタルはピアノではなくなんとオルガンでして、1945 年、 わずか 13 歳のとき。バッハが「ゴルトベルク」を書きあげたときその愛弟子は 14 歳で、しかもグールドのデビュー盤も「ゴルトベルク」だったし、こう考えるとグールドってゴルトベルクの生まれ変わりなんじゃないかって気さえしてくる。

3). この前 E テレで見た「スペイン語」講座。なんとあのモンセラート修道院付属学校少年聖歌隊が取りあげられてました ! … 「モンセラートの朱い本」や「黒マリアさん ( 地元では 'Moreneta' と呼ばれている ) 」で有名なモンセラート修道院。文字どおり「のこぎり山」の異様な山容と山麓から湧きあがる雲に包まれるさまはまさしく圧巻、畏敬の念に打たれる絶景です ( 登山列車の駅で降りるともう目の前に奇岩怪石の絶壁がそそり立っている ) 。… こんなとこ来たら、人生観まで変わりそうだ。もっともそういう風景はアイルランド西海岸地方にだってあるけれども ( いま問題になっている「竹島」のあの威容は、世界遺産のスケリグ・マイケルそっくりだ ) … 。子どもたちの練習のもよう ( 腹式呼吸法による発声訓練のように見えた ) やミサでの清冽な歌声は、まさにこの世のものとは思えず、天上の音楽そのものです。Montserrat は現地語カタルーニャ語の言い方で、「ムンセラ」あたりがもっとも近い表記らしい。

 ここの聖歌隊についてすこし補足。以前、NYTこういう記事が掲載されてました。ここの修道院付属学校少年聖歌隊は設立が 13 世紀、800 年の歴史があるというから、レーゲンスブルクとならんでおそらく欧州でも最古の少年聖歌隊だろうと思う。記事によると寄宿制のこの付属学校、規則がだいぶ緩和されたようで、なんと ! 近い将来は女子聖歌隊員も養成するとか。いま現在は TV で見たかぎりではまだそうではないようだが、いずれはここもそうなるんでしょうね。ちなみにスペインバロックの作曲家のひとりアントニオ・ソレールも、少年時代はここの聖歌隊員だった。ソレール、とくると、曽根麻矢子さんの奏でる「ファンダンゴ」なんかも思い出す。

"I'd compare the Escolania with Hogwarts in 'Harry Potter,' " said Xavier Palá, a 14-year-old who is graduating. "There they teach you to make magic with wands, and here they teach us how to make magic with music."

そう、ここの子どもたちはまさしく「音楽で人に魔法をかけること」を教わるんですな ! それはそうと、parasol がスペイン語とは寡聞にして知らんかった ( 『ランダムハウス』ではイタリア語起源になっていた ) 。

posted by Curragh at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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