ここのところずっと『フィネガンズ・ウェイク』三昧全開 ( ? ) だったので、このすばらしい作品のこと書こうと思っていて書きそびれてました。記憶がそろそろ薄れてきているので、ごくごくかんたんではあるけれども、感想など。
主演は、ご存知日本を代表する名優、高倉健さん。NHK の番組でこの映画の撮影中の健さんのようすも見たけれども、例の台本、しっかり見ましたよ、気仙沼のあの少年の写真記事が貼りつけてあるという「あなたへ」の台本。しかしどうでもいいけど、今年御年 81 ですよ !!! こちとらまだその半分くらいなのに、あのピシっとした姿見たらコケちゃいそうですよ、もう。
作品ですが、ある意味オーソドックスなロード・ムーヴィー、といった感じでした。自分が刑務官として務めている富山刑務所に慰問にやってきた田中裕子さん扮する女性歌手にひと目惚れ、夫婦になったまではいいが最愛の奥さんは不治の病に倒れ、あっけなく不帰の人となる。残された刑務官のもとにある日、奥さんからの「遺言」が届けられる。生まれ故郷の長崎県平戸の海に、散骨してほしいというものだった。ワゴン車を自家製キャンピングカーに改造して、いつか夫婦で旅して回るつもりでいた刑務官、さっそく自家用車の改装にとりかかり、「ほんとにこれで行くんですか ! 」と心配する同僚を振り切るように奥さんの故郷・平戸を一路、目指すのであった … 。
と、こんな筋書きなんですが、出てくる役者さんがみな実力派、個性派ぞろいで健さんの脇をがっちりかためているし、平戸にたどり着くまでのエピソードも人生の悲哀に満ちていて飽きさせない。そしてなんといってもその道中の、日本各地の風景の美しいこと ! とりわけおどろいたのが奥さんとのなれそめを回想したシーンで登場した、霧にぽかっと浮かぶあの山城 !! 兵庫県朝来 ( あさご ) 市にある、竹田城址とのことですが、いやー、ウィッカりしてたなー、こんなすごい風景がまだ残っているなんて ( いささかヤナセ語訳『フィネガン』を引きずっております ) !!
それと、クライマックスで出てきたあの「ダルマ夕陽」のみごとなことといったら … 「約束の地」、あるいは「西方浄土」そのまんまではないですか。とにかくそれだけでも感涙ものです。
残念ながらこの作品でもすばらしい演技を見せていたもうひとりの名優、大滝秀治さんはこれが遺作となってしまったが … 最後の科白、「ひさしぶりに美しい海ば見た ! 」は、耳の奥にいつまでも反響しています。時間があればもう一回、観たいくらいです。日本の風景のよさを実感させてくれた、味わい深い作品でした。
… ここでまたしても脱線だが … 今日はハロウィーン間近 … そして比較神話学者ジョーゼフ・キャンベルの命日でもある。1987 年に 83 歳で亡くなったから今年でちょうど 25 年目、四半世紀の区切りの年でした。手許にはいつのまにやらキャンベル本が増えたりもしたけれど … そしてありがとう、キャンベル先生、あなたのおかげでようやくジョイス最大にして最後の傑作、20 世紀文学最高峰にも数えられる『フィネガンズ・ウェイク』の邦訳というすばらしい作品を読み切ることができたよ … といっても「浅い」読みしかできてないけれどもね。
2012年10月30日
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