2013年02月02日

追記:「ブラックオートンのマルハナバチ」

 先日、ここですこし触れた、英国の小学生たちと神経科学者の先生が共同執筆したという「独創的な研究論文」をじっくり読んでみました。意外と歯ごたえのある ( ? ) 内容で、リンク先の関連論文とかも参照しながら、これがどんな実験だったのか、素人なりにまとめてみた。もっとも手っ取り早い要約はすでに番組で紹介ずみだから、これは蛇足みたいなもんですが。

1). 実験道具:ハチを入れる 1 m 四方のプレクシグラスで作った立方体を用意。前面にハチをいれる穴が開けられ、反対側には6 本の蛍光管の並んだ陽極酸化アルミ製の箱型光源と、その前方にプレクシグラス。グラス前面に十字型仕切りがあり、仕切りにはそれぞれ黒いアルミ板 4 枚が差しこめるようになっている。各アルミ板には径 8cm の円形の切り抜きが開けられていて、それが 16 個の正方形状に配列されている。切り抜き裏側にはそれぞれゼラチンフィルターを差しこむスロットがある。真ん中にはプレクシグラス製の「おしべ」があって、真ん中のくぼみに砂糖水や塩水を注入できるようになっている。

2). ハチの準備と訓練:マルハナバチの巣箱は Koppert UK. Ltd 社が提供。ハチを馴らすために、まず白色光源のみですべての「おしべ」に砂糖水を入れ、ハチがありつけるようにした。ハチたちが学習するまで 4日かかった。ハチたちを瓶に入れ、冷蔵庫で眠らせてからそれぞれ識別用のマーキングをした。ハチはぜんぶで 5匹、それぞれ黄・・オレンジ・ / オレンジ・ / 黄と色分けした。色分けしたハチはプレクシグラスの実験箱にもどされて、まず外側の切り抜きには黄色、内側には青とその逆の配列を 10 - 40 分おきに入れ替えて実験。真ん中にきた色の花にごほうびの砂糖水 ( 砂糖と水の比率は 1:1 ) 。黄色でも青色でも真ん中にある 4つの「花」にやってきて口吻を差しこんだら正解、ということを学習させた。最初の 2 日間では真ん中の 4 つの花に砂糖水を仕込ませただけだったが、つぎの 2 日間では周囲の 12 個の花に塩水を仕込ませて、色だけでなく「色どうしの空間的配置」を学習させた。ハチたちはたがいに情報交換できないように単独でガラス箱に放たれた。ごほうびがないと当てずっぽうに探しはじめるため、テストは一匹当たり 30 回で打ち切った。

3). 第一の実験:配色はそのままだがハチたちの色の記憶をリセットするため一度、4 枚の黒アルミ板を時計回りに回転させてから実験。真ん中の花にあったごほうびはなし。あいにく「黄色」のマーキングをしたハチだけ参加せず、4 匹のみでの観察。正解率は 90.6% 。うち 1 匹は色の組み合わせを正しく見極めていて、残りは色の好みがはっきり出た。

4). 第二の実験:真ん中の 4 つの花の色を緑に変えて観察。その結果、正解率は 30.9 % にとどまった。これで、前の実験でハチたちは色に関係なく「真ん中に」集まっていたわけでないことが証明された。ただし「 / オレンジと」のハチだけは 5匹中、真ん中の緑の花にもっとも多くやってきた。これはほかの 3匹とは異なる見分け方をしていることを示唆している。

5). 最後の実験:真ん中の 4つの花を抜いて、四辺の四隅にそれぞれ配置。ハチたちが「もっとも数の少ない色」めざしてやってきているのかを確認するため。その結果、最初の実験で真ん中の色に集まってきたハチたちはおなじ色が四隅にある場合では 40.1% しか飛来しなかった。「 / オレンジと」のハチも、前回のときとはちがってこんどは各パネルの真ん中の花には高頻度で飛来してこなかった。このことから、この 2 匹は花の蜜を吸うための条件として、「周囲を異なる色で囲まれた場合」を利用しているらしいことが判明した。

まとめ:実験 1 では、5 匹のハチはおおむねパズルを解くことを学習したといえる。ただし、認識方法にはそれぞれ個体差 ( 個性 ) があり、優秀なハチもいればそうでないものもいた。それぞれ色の好みがあることもわかった。実験 2 では、3 匹のハチは真ん中の緑の花ではなく、前の実験で学習した色の花に向かった。「」を含む 2 匹のハチは、真ん中の花に飛来したので、ほかの 3 匹とは異なるルールでパズルを解いていたことになる。実験 3 で判明したのは、ハチたちは色に関係なく「真ん中に」飛来してくるわけではないこと、もっとも数の少ない色に飛来するわけではないことだった。ハチたちは手当たり次第に花を選んでいるようにも見えたが、それでも「お気に入りの色」に飛来することはやめなかった。

 … というわけで、番組でも出てきた「結論」がつづいて登場します。「ハチたちは、複雑なルールを理解することによって、パズルを解く方法を学習できるけれども、ときおりまちがえる。ひとつのパズルを解くために、ハチたちはおたがいに ( 間接的に ) 力をあわせることができる。 … またわたしたちは、個々の花の、それぞれに異なる『形状パターン』を手がかりに、ハチたちがお目当ての花に向かうことも学んだ。だからハチたちは賢い。ひとつの形状パターンを記憶できるから。… ハチたちはどうやら … 思考するらしい ! 」。

 なお文中の「ゼラチンフィルター」については、たぶん大判写真術でレンズ前にかざして使用する、正方形の薄っぺらいフィルターのことなんじゃないかと思う。自分もそういうのを一枚、持ってました。

posted by Curragh at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々の雑感など
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