2007年10月27日

Stabat Mater

1). 先日の「バロックの森」ではペルゴレージの珠玉の名曲「悲しみの聖母(Stabat Mater)」がかかってました。

 案内役の先生によると、当時のナポリではこの曲を復活祭前主日(Palm Sunday)前の金曜日に歌う習慣があり、ペルゴレージに作曲依頼がくるまではスカルラッティの作品が使用されていたらしい。ペルゴレージはナポリの有力貴族で構成された騎士修道会みたいな組織からStabat Materの新作を頼まれ、ナポリ郊外の修道院で日に日に悪化していく結核と闘いながら1736年に完成させたという、まさに作曲者渾身の絶筆です。

 Stabat MaterはJacopone da Todiなる修道士兼宗教詩人の作と言われたりするけれど、ほんとうのところはわからない。中世後期に流布した続唱(sequentia)のひとつで、ミサの式次第を簡素化するためにトリエント公会議以降、4曲だけ残して廃止。この曲もいったん廃止されたあと、1727年、9月15日の「悲しみの聖母記念日」用に任意で歌われる作品として復活(→こちらのページにそのへんの経緯がくわしく書いてありますので丸投げしておきます)。ペルゴレージの作風はルネサンス期の厳格対位法あり、時代の最先端をゆく様式ありと斬新なものでした。そのためなのでしょう、同時代の作曲家の研究が大好きな勉強好きの大バッハもこの夭折の天才によるStabat Materをそっくりそのまま借用してBWV.1083のカンタータとして転用してもいます。プロテスタント教会の礼拝ではもちろん続唱…なんてものはないから、歌詞だけ詩編に置き換えたカンタータに「変身」させたというわけ。

 番組でかかったのは成人男性・女性歌手による二重唱だったけれども、全編少年歌手で歌った盤というのもテルツとか、いくつか出ていました。手許にあるのはカウンターテノールと組んだハノーファー少年合唱団時代のセバスティアン・ヘニッヒの歌ったものと、いまひとつは仏パリ市郊外のヌィイにある聖十字架教会少年聖歌隊員ふたりによる二重唱盤。どちらもそれぞれお国柄というか、個性が発揮されていて名演だと思います。後者のほうはテンポが遅めで、ひとりの母親の悲しみを追体験するかのように、ひとつひとつの歌詞をかみ締めながら歌っているのが印象的。ヘニッヒ盤のほうは、成人女性歌手も顔負けの堂々たる歌いっぷりで、テンポはやや速め。伴奏もきびきびとしたアーティキュレイションで演奏され、カウンターテノールとの二重唱の美しさをおおいに引き立たせています。

 聖母…つながりで思い出すのはカッチーニのAve Mariaあれぜったいにカッチーニ本人の作じゃないですよ。作曲家事典みたいなものひっくり返しても出てきませんし。有名な「アマリリ麗し(Amarilli, mia bella)」とかほかのカッチーニ「真作」と聴きくらべてみれば一目ならぬ一瞭然。以前からあれはちがうよな…と疑念を抱いていたら、なんとWikipediaにもおんなじ疑念が書いてあったのには驚いた。「カテリーナ古楽合奏団」の一員で作曲家でもある上野哲生氏もおんなじことを息子さんのCDのライナーに書いていましたが、やっぱりあれは現代の作品だったのか。まぁ、バロック時代フランスの作曲家モンドンヴィルみたいに「これはイタリアの超有名な作曲家、ヴィヴァルディ大先生のヴァイオリン・ソナタ集です」と称して自作の曲集を出版して売ったり…という前例もあるにはあるけれども…なんか釈然としない?! 

2). 本家サイトのほうも、おかげさまで開設以来のアクセス総数がこのほど5,000台を突破しました。この場を借りまして、訪問していただいた皆様にお礼を申し上げます。m(_ _)m

 ただ、いまごろになってきわめて重大な誤記があったことにも気づきました…大急ぎで訂正しておきましたが、誤記を信用してしまった方にはたいへん申し訳なく思っております。痛恨のミスを犯した本人が言うのもなんなのですが、猛省しております。今後はこのようなアホなケアレスミスをしないようにじゅうぶん気をつけたいと思います。

誤→ここのページの本文中、「現在のマンスター州クロンファートClonfert…」

正→「現在のゴールウェイ州クロンファートClonfert」

 アイルランドの行政区分である'county'は州というよりフランスや日本のように「県」と言ったほうがいいのかもしれない。邦訳も「州」と「県」の二通りの表記が見られますが、とりあえず「州」表記でいきます。マンスターはサイト内に書いたように、古代アイルランドの王国のひとつであり、現在ではアイルランド南部一帯の地方名として残っています。

posted by Curragh at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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