2007年12月02日

ベーゼンドルファーの身売りと242年前のクラヴサン

1). あのベーゼンドルファーが身売り! しかも買い手が日本のヤマハ(→関連記事)!! 地元紙報道によると、最初にこのニュースを報じたのはThe Times紙らしい。とはいえまだ正式に決まったわけではなく、ヤマハ側も交渉の詰めの段階に入ったことを明らかにしただけらしい。オーストリア国内の同業者と「一進一退の攻防戦」を繰り広げていたようですが、ただでさえ音楽にやかましいオーストリア国民としては今回の買収劇をどんなふうに思っているのかすこし気になるところではあります。Timesの記事を見て知ったのですが、ベーゼンドルファーって一度、米国鍵盤楽器メーカー最大手キンブルの傘下に入っていたのですね。2002年にふたたびオーストリアの銀行傘下に組み込まれたものの赤字つづきでふたたび身売りの憂き目にあったようです。ヤマハにしてみれば、フランツ・リストの「酷使」にも耐え、同郷のデームスはじめ世界一流の奏者たちからも愛されているその特有の響きをぜひ自社製品にも取り入れ、安価な中国製品に対抗しようという狙いもあるみたいです。と、ちょうどときおなじくして磐田市に本社のある日本ベーゼンドルファー(浜松ピアノセンター)が自己破産を申請した…という記事もつい最近見ました。本社の身売り劇とは関係ないでしょうが、なんとも残念な話ではある。

2). 昨夜NHKテレビのローカルニュースを見ていたら、浜松の楽器博物館所蔵の1765年製作のフランスのクラヴサンの名器ブランシェが10年にわたる修復を終えて、記念のリサイタルをおこなった、と伝えていました(→博物館サイト)。たまたまビデオテープがデッキに入っていたので、間髪いれずに録画。1765年に製作されたクラヴサン、ということはバッハが亡くなって15年後、いまから242年も前に作られた歴史的な楽器ということになります。たしかこれを使用した録音盤を山野楽器かどこかで見かけたことがある。きのうの講義つきリサイタルでこのすばらしい楽器を弾いたのは中野振一郎氏でした。なおきのうのリサイタルのもようは、BS2の「クラシック倶楽部」で放映されるそうです(具体的な放映日時は未定)。

 まったく身勝手な希望としては、この楽器で「フーガの技法」を聴きたいです。

3). …いまさっき、NHK-FM「海外コンサート」を「ながら」聴きしていたら、ベートーヴェンの「大フーガ 変ロ長調 作品133」をやってました。この作品、「弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調」の最終楽章として作曲されたものの、あまりの難解さで出版社からクレームがついて、しぶしぶベートーヴェン自身、この大フーガをはずしてまたべつの小フーガ楽章をくっつけて出版したというこぼれ話つき。一昨年だったか、米国のフィラデルフィア郊外の神学校の図書館から、この「大フーガ」のベートーヴェン直筆によるピアノ4手用編曲版がまったく偶然に発見されたりして、話題になりました。いまNYTimesのアーカイヴを探してみると…あった。じっさいに聴いてみるとたしかに前衛的な響きというか、二重フーガと斬新な書法が巧みに結合されて、なんとなく「バッハ晩年の対位法大作群ベートーヴェン版」のおもむき。ひさしぶりに記事を見ると、最後にこんなエピソードがくっついています。

 初演のとき、聴衆が大フーガの最終楽章ではなくて中間楽章のみアンコールを要求したことを聞いたベートーヴェンは、はき捨てるようにこう言ったんだそうです。

... 'And why didn't they encore the Fugue? That alone should have been repeated! Cattle! Asses!'

…いかにもありがちな科白ですな(笑)。

 それと、演奏者のスイス国際音楽アカデミー合奏団というのは、一昨年ロバート・マン氏と小澤征爾氏が立ち上げた音楽家養成学校。解説者の先生によると、「お金がなければ音楽家になれないなんておかしい。優秀な若い音楽家を育てる無償の学校を」という趣旨のもと開設された音楽アカデミー、とのこと。これはなんとすばらしい取り組みではありませんか! バッハでさえ、教会に納める「多額の謝礼」の持ち合わせがなかったばかりに、当時97歳だった巨匠ラインケンからその即興演奏を大絶賛され、ハンブルク聖ヤコビ教会オルガニストとして採用決定を受けながらもけっきょく断ったという話も思い出します(いわゆる官職売買に近い慣習だった)。そうですとも、才能ある若い人が経済的理由から前途を閉ざされるというのは、どう考えもおかしなことです。

posted by Curragh at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/7489810
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック