前にも書いたことの蒸し返しになるけれども、吹けば飛ぶよな薄っぺらい懐の持ち主としては、しょせん安酒専門の身ではある … でもですよ、たまーにはおや、これは … と瞠目、というとまた大げさだが、けっこうおいしいワインに「当たる」こともある。今さっき栓を開けたばかりのニュージーランド産の白がまさにそうでした。
それはシレーニ・エステートというワイナリーのソーヴィニヨン・ブラン。シレーニってなに ? と思ったら、ギリシャ神話の酒の神、バッカスの「賢くて、忠実なる下僕」とか瓶の裏ラベルに書いてあったりして。なるほど。いかにもなネーミングではある。
だいぶ前にここで Alice White という豪州産の白のことをちょこっと書いた記憶があるけれども、正直申しあげて、こっちのほうが断然いい。南半球のワイン、というと、行きつけのスーパーとかに置いてあるのはたいてい豪州とかチリ、南アフリカなどで、ニュージーランド産はめったにお目にかからない( もっともほかのスーパーやワイン専門店に行けばあるかもしれないが )。今回とあるルートにて手に入れた 1,700 円のこの「シレーニ・ソーヴィニヨン・ブラン」、期待以上のおいしさで正直、うれしいおどろき。
ソーヴィニヨン・ブランっていままであんまり飲んだことがなかった … こちらの記事によると、どうもブレンド用として使われる場合がほとんどで、単一種として使われることはほとんどないらしい。ところがニュージーランドの白ワインは例外で、この品種で勝負して成功しているようです。じっさい飲んでみて、むべなるかな、と感じたしだい。
まずグラスから立ちのぼる精妙な「香り」におどろいた。ラベルには 'TASTE : Fresh, intense fruit flavors of gooseberry & passionfruit.' とある。たしかにベリーやパッションフルーツの突き抜けるような香りが感じられます。でもライムとか柑橘系も感じられて、日本みたいに蒸し暑い夜にはぴったりなまこと爽快な香りです。昨年収穫のソーヴィニヨン・ブランなので、いわゆる熟成香というのはあんまりなくて、ヌーヴォーのような、いかにも新鮮な白、といった印象( 確認したらヴィテージが 2013 となっていたけれど、「セラー・セレクション」なので、新酒ではない )。
つぎにまるで水みたいな透明な色からはちょっと想像できないくらい、深みのある味におどろいた。これは安酒専門だからかもしれないが、どうも元祖フランス産の白、シャルドネ種を醸した地酒( Vin de Pays )とか「超辛口」だから当たり前なんだろうけれども、やたら辛くて舌がヒリヒリするだけ、みたいなワインが多いという印象を持っている。でもこのソーヴィニヨン・ブランはまるでちがっていて、分類的には辛口なんでしょうけれども、なんというか舌の上でふんわりひろがる感じです。ひじょうにまろやかで、それでいて後味しっかり、そんな感じです。アルコール度数もなかなかで、12.5% あります。
安い白、とくると、だいぶ前に飲んだイタリアのソアーヴェはおいしかった。このニュージーランドのシレーニの白は、それ以来かな。最近、なにかと鬱々とした気分になったりすることが多かったりしたけれども、おかげで今宵は気分がいいです ( 笑 )。
ここで脱線して、英語のお勉強。このソーヴィニヨン・ブランは「開栓後はお早めに、保管は軽く冷やして」とある。'Drink young & lightly chilled' という一文がそれなんですが、へぇ、drink young ですか ! こういう発想は慣れないとなかなか出てこないのではないでしょうか。個人的にはこの手のワインを「早飲み用」と呼んでます。
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