2013年12月02日

'Robohand' の衝撃

 今年になって、日本国内でも話題にのぼるようになってきた感ありの 3Dプリンター。超がつくほどのアナログ大好き人間のくせして、おなじくらい新しもの好きという名辞矛盾が服着て歩いているようなワタシですが、はじめて 3Dプリンターなるものにお目にかかったのが、Eテレでやってた「サイエンス ZERO 」という番組。そのときは、「ふうん、こんなのがあるのか」くらいしか感じていなかったのですが、朝の NHK 静岡のニュースでも岐阜県だったか、地元町工場の方が「将来のモノ作りを変える」可能性を秘めたこの 3Dプリンターを1台買って、子どもたちに開放しているという話も見て、だんだんにではあるが気になる存在になりはじめてました。

 と、そんな折も折、ふとしたはずみでとんでもなくすごい話を知ってしまった。なんと、義手をこれで自作してしまおうという !! 

 その名も Robohand というプロジェクト。そもそものきっかけは、南アフリカ・ヨハネスブルグ在住の大工リチャード・ファン・アスさんが2年前、丸のこで作業中に誤って右手の指4本を切断してしまうという悲劇に見舞われたこと。これだけでもとんでもない災難ですが、なんといっても大工さんですから職業生命にもかかわります。とにかく時間がない。かといって従来の高級な仕様の義手製作にはとんでもない大金が必要( 最低でも 1万ドル、つまり 100万円以上かかるらしい )。どうするか ? ―― そんなら自分でなんとかして作ろう ! というわけでいろいろ Web 上の情報を探しているうちに、YouTube に上がっていた一本の動画に目がとまる。舞台上演のために製作された機械じかけの手。これだ ! と思って、米国ワシントン州シアトルに住む手の製作者、アイヴァン・オーウェン氏にメール。ふたりは意気投合してそれ以来、時差もものともせず Skype などで連絡を取りあい、募金までつのってこの米国人デザイナーが南アフリカに来る旅費を捻出し、地元の大学の先生の協力も取りつけ、… そうこうしているうちにこの話を聞きつけた甥っ子の友だちの奥さんが、生まれつき右手指の欠損した幼い息子にも義手を作ってほしいと願い出る。本来は大工さん本人の指を再生するための事業だったけれども、将来ある子どものためにとまずはそちらを優先して開発が進められた。その最初の成果が Robohand だったという。大工さんの指はどうなったかというと、このすばらしい話を聞いたプレトリアの機械メーカーが、無償で生産ラインの一部を提供し、ぶじ完成させたとか。

 このときふたりがぶつかった問題が、試作品製作に時間がかかりすぎるということ。シアトルのオーウェン氏はこのときすでにニューヨークに本社のある 3Dプリンターメーカーの MakerBot ( いまはイスラエルの大手 Stratasys 傘下 )とコンタクトをとり、ふたりのこの大西洋を挟んだ壮大な共同作業を聞いてそれならばと家庭向け卓上機種 Replicator 2 をそれぞれ1台ずつ、贈呈した( 廉価機種とはいえ、日本円で 20数万円はする機械です。ちなみに業務用 3Dプリンターはけっこうでかいものも造形する必要があるのでひじょうに大型で、お値段もとんでもなく高い。最近ではなんと ! 「家」をまるごとプリントアウトして組み立ててしまう「クレーン型」3Dプリンターの試作機まであるらしい )。おかげで当初は試作に2週間かかっていたものが 20時間ですむようになった( 最初は 3Dプリンターではなく、ふつうのフライス盤を使って加工していたようです )。

 … それにしてもすごい話です。いわば義手の DIY、自作 PC 機よろしくホームセンターで売っているような材料から義手をこさえてしまおうというのですから。いまではこの Robohand プロジェクトによって「安価で、使い勝手がよく、かんたんに組み立てられる」まさにブレイクスルー、画期的な義手を手に入れて可能性の広がった人は延べ 170 人以上。いろんな年代の方がいるけれども、やはりもっとも恩恵をうけるのは子ども。いままでの高価な義手では、体が大きくなるたびにべらぼうな出費を覚悟しなければいけないところですが、これなら文字どおり日曜大工感覚で交換パーツをこさえることができてしまう。それに子どもですからすぐ壊したりしがちですが、そんなときでも3D CAD データさえあればすぐに自作可能だし、その場合も材料費だけだったらいくらもかからない。

 Robohand プロジェクトに一役買ったかっこうの MakerBot ですが、先日、米国内の直販店としては2店目としてボストンにお店をオープンさせた。そのとき来店した 12歳の少年レオン・マカーシーくんもまた、この Robohand の恩恵を受けた子どもでした。彼の場合も、父親が動画サイトで Robohand を見てこれだ !! とさっそく飛びつき、Google+ 上の公式コミュニティグループで材料や組み立て方などひととおり指南してもらって、息子のために第一号の義手を製作。「最初はクレイジーだと思った」とか TV 局のインタヴューなんかでこたえていたレオンくんではあるけれども、試行錯誤と改良を重ねて、MakerBot ボストン店でお披露目したのは「第三世代」の義手。関連動画も貼っておくので見てもらえければだいたいのところはわかっていただけるかと思いますが、なんかこう、日々、あくせく余裕のない門外漢がこういう心温まるマカーシー親子のやりとりとか見てますと、息子に対する父親のかぎりない愛情がびんびん伝わってきてまたしても涙腺が刺激されてしまってしかたない。パーツじたいはかんたんに 3Dプリンターでできたけれども( このときは友人宅のものを借りて使用、のちに助成金で MakerBot のデスクトップ型 3Dプリンターを買った科学の先生の好意で、学校の 3Dプリンター[ ! ] を使って改良版を自作 )。

 岐阜の町工場さんあたり、このすばらしい話を知ったらどう思うのかな ? 3Dプリンターとくるとすぐ「銃火器」の話題がらみで語られたりするけれども( この前、家電量販店で国産 3Dプリンターの SCOOVO をぼんやり眺めていたら、うしろから中学生らしき一団が「あ、これ拳銃が作れるやつだ ! 」とか言っていた。老婆心ながら SCOOVO は PLA樹脂フィラメントで造形するので、いくらなんでも銃はむりでしょう[ 苦笑 ] )、「日本版 Robohand 」はぜったい、立ちあげる必要があると思う。もっとも Robohand 公式で発言している作業療法士の方の言われるごとく、なんだかんだ言っても 3Dプリンターで素人が自作可能なレベルというのはおのずと限界がある。一番の問題は装着のがたつきらしいですが、たとえばかぶれや炎症を起こさないように指定された素材( Robohand ではOrthoplastic という医療用樹脂を使っている )をかならず使用するとか、いろいろ注意事項が書いてあります。いまプロモーションで来日中の「ガガさま」も、最新アルバムで着用していた衣装が 3Dプリンターで出力されたとかって聞いたり、また「マダム・タッソー」よろしく、3Dスキャンした自分自身のフィギュアが作れるショップができただの、なんかそういう方向の話題ばかりが先行しがちではありますが、いずれにせよ、日本でもこういう真の意味でのブレイクスルーは起こすべきだと考えます、いやほんとうに。

 MakerBot サイトによると、必要なものとして、自社製品( MakerBot Replicator 2 Desktop 3D Printer と PLA 樹脂のフィラメント )、ステンレススチールのハードウェア、熱可塑性樹脂( orthoplastic )、ゴムバンド、ナイロンケーブルを挙げています( レオンくんの父親ポールさんによると、手首の上下動で人工指を動かす連結コードとして、釣り糸を使ったと述べています[ 引用元記事後半部分 ] )。→ 3D CAD データダウンロードサイト上の Robohand ページ。↓ は、FOX News のインタヴュー動画。



posted by Curragh at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースから
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