2014年02月24日

H. ベルリオーズの「テ・デウム」! 

1). 先週の「クラシックカフェ」再放送。もっとも印象に残ったのは、イタリアのバロックヴァイオリンとアコーディオンという組み合わせの毛色の変わったデュオ、「インコエレンテ」によるイタリア初期バロックの作曲家・教会オルガニストのメールラの「チャッコーナ( シャコンヌの伊語表記 )」、そしてバッハの「バイオリン ソナタ 第6番 ト長調 BWV.1019 」。メールラのチャッコーナではアコーディオンの低音が調子のいい主題を繰り返し演奏していたけれども、耳を疑ったのはバッハのヴァイオリンソナタのほう。手元にある音源としては往年のヴァルヒャ / シェリング盤とかがあってときおり聴いてますが、いやー、この「インコエレンテ」編曲版はびっくりです。アコーディオンという楽器 ―― 親戚筋(?)のバンドネオンだってどうやって弾いてんたのかさっぱりだが ―― で、よくあれだけ複雑に絡みあったポリフォニックな旋律線が、しかもくっきりと! 演奏できるもんだと心底おどろきました … この曲は全6曲中、唯一の楽章構成で、かつ第3楽章のみほんらいは通奏低音を担うチェンバロが主役、というかチェンバロ独奏曲になってます( なおこの BWV.1019 はバッハが何度も書きなおした形跡のある作品で、改訂の過程をめぐっては、これまでに演奏家・学者のあいだでさまざまな説が提示されている )。うーむ、このイタリア人デュオ、そうとうな手練と見た。これは音源を探してみる価値あり。

 とにかくこのようなバッハは理屈ぬきに聴いててすこぶる楽しい。こういう変わった組み合わせの編曲版でも、やっぱりバッハはバッハなんですねぇ。そういえば最近読んだ鴻巣友季子さんの『カーヴの隅の本棚』というすばらしいエッセイ本にも、文学における「古典」について似たようなことが書いてあり、わが意を得たりと膝を打ったもんです( こちらについてはまた後日、書くかもしれない )。

2). 話変わって … いまさっき見たこちらの番組。いやー、こんな贅沢なプログラム、めったにない! ワタシはスペインの安い赤をちびちびやりつつ、ひとりで感激しながら聴いてました。… エクトル・ベルリオーズって、たとえば「キリストの幼時」は知ってるけれども( とりわけ「羊飼いたちの別れ」は名曲として知られる )、寡聞にしてこっちの「テ・デウム」は知らんかったなあ … プーランクの「グロリア」は、やはり先週の「クラシックカフェ」でもかかっていたけれども。そして曲の出だし、あの管弦楽とオルガンが交互に、まるで「カントリス」と「デケイナイ」の二手に分かれた聖歌隊が呼びかけ合うように交代しながら歌うようなあの出だしの分厚い和音 !! マエストロ・デュトワの魔術にいっきに引きこまれてしまった、という感じです。

 そして子どもの合唱好きにとってさらにうれしいことに、この大きな作品は児童合唱まで加わっている。歌っていたのは通称「N児」でしたが、あれだけの大人数の大人の声に掻き消されることなくしっかり清冽な歌声を響かせていたのはさすが。もっとも個人的にはいつぞやのゲルギエフ指揮のマーラー「3番」のように、TFM( Tokyo FM 少年合唱団 )だったらなあ、と思ったけれども … それでも管弦楽+混声合唱+児童合唱、そしてオルガン! とこれだけオールスター総出演の作品演奏の機会なんてそうそうあるものではないし、当日の夜、NHKホールであの演奏を聴けた人はまこと幸運だったと言うほかなし。

3). … まもなくソチ五輪も閉会式ですね。始まる前はどうなることかと思ったりもしたけれど、開会式の演出や聖火台の洒落たデザイン( もちろん「火の鳥」ですよね、あれは。聖火が駆け上がっていく場面の連続写真を見ると、なんだか「炎のランナー」がてっぺんめざして駆け登っていくかのようだった )、そしてバンクーバー大会からハマってしまった女子カーリングに今回もまたハマり、深夜のフィギュアを食い入るように見入ってそのまま朝になったり( 苦笑 )、スノーボードのスロープスタイルの「障害物」として巨大「こけし」よろしくゴーグルかけた金髪のマトリョーシカがでんと鎮座していたり、ラージヒルジャンプ台の着地点付近にはシンボル(?)のイルカやヤシをかたどった植え込みがあったり … フィギュアのエキシビションも趣向を凝らした演出が光っていたし、個人的には大会は大成功だったのではないかと思います。五輪ついでに毎度、何個メダルを取ったかとか、「金」はいくつだとか、そんなことが喋々されますが、これを見ても明らかなように、4年に一度の大舞台でメダル、それも「金」を獲得するというのは超人的というか、生半可なことではとてもできませんよ。あれだけの国と地域が参加しても、メダルが取れるのはほんのひと握りです。お国のためとかなんとかいうより、まずは参加されている選手みずからが徹頭徹尾楽しむことではないかな。それは時によってはおのれとの孤独な闘いになったりするでしょう。でもとにかく「歌ってるぼくが楽しくなければ、聴きに来てくれているお客さんだって楽しくないでしょ?」とかつて答えていたアンソニー・ウェイと、ワタシも基本的に同意見ですね。まずは選手自身がとことん楽しむ、五輪という大舞台に参加し、競技していることを十全に楽しむことが第一に来るべきだと思います。

posted by Curragh at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々の雑感など
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