2007年12月29日

オルガン版「第九」

1). きのうの「バロックの森」。今年最後のブクステフーデ尽くしだったのですが、最後がなぜかベートーヴェンの――この季節はおなじみの――「第九」から合唱つきの終楽章。驚くべきはこれをオルガン編曲版でかけるという!! わくわくどきどきしながら放送を聴いていると、謎が解けた。ブクステフーデゆかりのリューベック・聖マリア教会のオルガンで録音した盤があり、それを掉尾として流すという趣向だったのです。弾いているのはマリア教会のオルガニスト、エルンスト・エーリヒ・シュテンダー。

 バッハも弾いたとされるオルガンは残念ながら第二次大戦の空爆で破壊されたため、戦後(1968年!)になって建造された現代の楽器。そうはいっても音色はすばらしい。レジストレーションもフランスの奏者だったらもっと派手に、原色をぺたぺた塗りたくったようなカラフルな音響効果を狙ったレジストレーションを選択するところでしょうが、総じてpianoとforteの音色の対比以外は抑制の効いたレジストレーションだったように思え、好感がもてました。フルオルガンの重厚な響きもよかったです。でも欲を言えば、オルガンのみの伴奏に乗せた「合唱つき」だったらもっとよかったかも。もっともこれはオルガン好きが好き勝手な妄想を言っているに過ぎませんが(→CDを出しているレーベルのオルガンについて解説したページ)。

 「バロックの森」は年末年始をはさんでバッハのクリスマス・オラトリオ全6曲を送る、とのことですが、たしか昨年のクリスマス時期もヘンデルの「メサイア」とバッハのこの作品――6つの旧作カンタータをひとつにまとめたもの――をオンエアしていたような記憶が…たまには「ドイツ3S」のひとり、ハインリヒ・シュッツの「クリスマス物語」とかかけてくれると個人的にはうれしいかなーなんて思ったりもする。それでも今週は冒頭に、聖トーマス教会聖歌隊による「一輪の薔薇が咲いて」や「来たれ、羊飼いたち」の歌が聴けたのはよかった。トーマス教会の鐘の音なんてのもはじめて聴いた。カリヨンではないけれど、もっと音階的で高らかな響きなのかと思いきや、意外としぶい音色というか、「除夜の鐘」っぽい響きに聴こえたのは自分だけ? たしかここの鐘の音は、ドイツのクリスマスキャロルを歌った聖トーマス教会聖歌隊のDVDの出だしに出てきて耳にしたことがあるはずだったが…こんなくすんだ音だったかしら? 

2). クリスマスついでに、「地球ドラマチック」ではBBC制作の聖ニコラオスの話を再放映してましたね(くどいけれども教会暦での祝日は12月6日)。いま一度確認のために見てみたら、なんとニコラオスって325年のニケア公会議に出席していたんですね。そればかりか、当時「イエスは神と同一ではない」と主張していたアレクサンドリアの司教アレイオスと言い合いになり、頭に血がのぼったニコラオス、なんと相手に平手打ちを食らわせていたという!! やるなあニコラオス(笑)! 実在したトルコ・ミュラの司教ニコラオスについてははっきりしたことはわかっていないものの、アレイオスを殴った件や、司教の権威を振りかざしてキリスト教徒の処刑を中止させたことなどを考えると、自分の信念に忠実なあまり、他人と衝突することもいとわなかった、きわめて情熱的な人だったらしい。その証拠に、現在バーリの聖堂内に安置されている亡骸――これとて当地の船乗りが勝手にトルコから略奪してきたもの。当時は聖遺物信仰全盛時代だったので、巡礼から落ちる喜捨目当てにバーリの教会当局が船乗りをけしかけたらしい――は1953年に一度調査され、そのときの写真や分析資料にもとづき頭蓋骨をコンピュータで解析した結果、なんと鼻骨が骨折しているという。迫害を受けたときの「名誉の負傷」なのか、はたまたアレイオスからも一発お見舞いされたのか?? ともあれニコラオスの激しい性格が垣間見えるような話ではあります。またコンピュータによって「複顔」された当人の顔つきはいかにもトルコの男というか、じつに精悍な顔立ちでした(番組中、コンスタンティヌス大帝の改宗にも触れていたけれど、母親は熱心な信徒だったようですが、皇帝本人の改宗は死のまぎわになってから。それもいわゆる「正統派」ではなく、「アレイオス派」の司教、ニコメディアのエウセビオスから洗礼を受けた)。さらについでに、クリスマスがいまの12月25日になったのは354年ごろ、ローマ教皇リベリウスの決定にもとづくと言われています(→クリスマスの起源についての論考)。

 そういえば今週はフランスの放送局が制作した、ベートーヴェンの「第九」にまつわる話もやってましたが…あいにく前半を見逃した。あわてて途中から見てみたら、「第九」そのものの成立云々…ではなくて、「その後欧州ではどのような機会に演奏されてきたか」の受容史のみで、ちょっと残念ではありました。いずれにしても、この作品はどこの国でも特別な機会に演奏されてきたことがよくわかった。たしかにこれは聴くたびに、特別な重みを感じさせる作品ですね。当時としてはきわめて斬新・革新的で、かなり冒険的な作品だったことは言うまでもありません。これを残してくれたベートーヴェンという作曲家は、やはりすごいと言うべきでしょう。

posted by Curragh at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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