2006年06月25日

首の皮一枚

 …つながりました、とりあえずは

 とはいえいまだにBS関連は俎上にあがったままですね。TVとFMのちがいはあるんでしょうけれども、NHKの改革云々と視聴者側の選択肢であるチャンネル数をどうするかは別次元の問題ではないですか。どうして一部の人たちだけで決めようとするのか。

 FM放送にかぎって言えばいちおう存続…ということになったとはいえ、またろくに放送も聴かずにこんなトンデモない発言が飛び出しかねないことには変わりありません。NHK-FMを聴取しているファンからすれば、6月6日の報告書はリメイクされたあの映画以上にショッキングな出来事だったわけで、また亡霊のごとく復活しないように警戒しなくては。

 土曜の夜の「FMシアター」もまたおもしろい作品でした。その前の「名曲のたのしみ/私の試聴室」で聴いたモーツァルトのVespereもよかった。でもなにより驚いたのは、朝の「名曲リサイタル」。NHK-FMをかけっぱなしにしたまま自室から出て、ちょっと腹ごしらえ(ブランチ…と言えるようなごたいそうなものではなくて)、していたら、女性オペラ歌手のような、甲高い歌声が響いてきたので、「けさは弦楽合奏と声楽か」なんて思いながら部屋へもどってみると、「声」の主はなんとノコギリ!? 先細になった西洋ノコギリ(押して切るタイプ)を楽器にしてしまうサキタさんという方の演奏でした…でもこれがじつにいい!! もうほんとにビックリです。ノコギリからかくも美しい調べが生まれるとは…。前半に登場した弦楽合奏団との共演による、バッハの「ふたつのヴァイオリンのための協奏曲 BWV.1043」の中間楽章やモーツァルトの珠玉の名曲Ave Verum Corpusなんか、もう涙が出てくるほどでした。と、こういううれしい発見があるのもNHK-FMならではですね。

 マーラーの交響曲みたいな、やたら演奏時間の長い作品でもだいたいきちんと終楽章まで聴かせてくれるのもNHK-FM以外にありません。手持ちのCDだけでは、どうしても音楽の傾向が偏りがち。書棚におさめてある150枚近いCDも、ほとんどがバッハの器楽作品ものか、少年合唱あるいはボーイソプラノソロのアルバム。公共FM放送のいいところは、世界中の、自分の知らない音楽がたくさん聴けること。受信料問題のことがかまびすしく言われていますが、それよりも携帯電話の通信料のほうが高いと思いませんか? いま現在の放送がけっして理想的ではないにせよ、これだけ幅広いジャンルの音楽を毎日、休みなくオンエアしてくれるNHK-FMは、音楽好きにとっては嘘偽りなく「宝の山」。これを潰してしまおう…という発想じたい、ほんと理解に苦しむ。

 山下達郎さんが東京FM系列の番組で、はっきりとNHK-FM削減反対を表明していたとの記事を読んで、ああ山下さんてりっぱだな、と思ったし、正直うれしく感じました。

 またこの件についてはこんなすばらしい記事もありました。そうそう、そうですよ(以下引用、太字強調はこちらでつけました)! 

 NHKのFM放送が廃止された場合、様々な音楽文化に接する機会が奪われる恐れがある。NHKの放送によってクラシックや邦楽に接するようになった人は多いはずだ。現在のところNHKのFMに換わって多様な音楽に手軽に接することができるメディアは存在しない。インターネットは多様性に富んだメディアであるが、受け手が積極的に検索していかないと接する機会が生まれないからだ。…「総務相懇談会」の面々は放送と公共性の問題を考えるに当たって、産業活性化の観点にのみ関心を払い、文化の担い手としての放送という面には考慮しなかったと思われる。…

 懇談会のめんめんはすくなくとも公共FM放送について、なんら基本的なこともわかっておいでではなかったらしい。アタマの中にあったのは手っ取り早く利益をあげられるかどうか、ただこの一点のみだったのでしょう、たぶん。

 例の報告書にはコンテンツ、コンテンツとお題目よろしく何度も書いてあるけれど、「中身」のないものを垂れ流したところでしょせん電気と労力の無駄遣い。日本のアニメのことに触れているけれども、音楽でもアニメでも一日にして成ったわけでは当然ありません。損得勘定を度外視しても作品を生み出しつづけた長年の努力の蓄積があってはじめて開花したものでしょう。報告書のNHK-FM削減案は、言ってみればクリエイターを育てる土台そのものをないがしろにして、クリエイターに世界に通用する作品を作れ、と求めているようなもの。当然、こんなことがまかり通ってしまうようならクリエイター自身も育つわけがない。言ってることがもう支離滅裂です。

 それともうひとつ、NHK-FMならではの特徴としては、何十年来という固定ファンの多さもあげられるでしょう。週末の「バロックの森」でリクエストはがきが紹介されるとき、「わたしはもう40年以上も聴きつづけています…」のようなことをよく耳にします…ひとつの番組で、こんなに息の長いつきあいをしている聴取者がいるということは、民間放送ではまずありえない。ファンがいてもスポンサーの都合で一方的に打ち切り、ということもままある。

 そして民間ではおそらくできないであろう、12時間近くもぶっ通しでオンエアされる「今日は一日…三昧」や朝岡聡さんのDJでおなじみ「クラシック・リクエスト」などの特番。お正月の「モーツァルト特集」、5月の連休の「弾き語りフォーユー三昧」。でもなんといっても最高だったのは、La Folle Journée au Japon, 「熱狂の日」音楽祭と連携した特番でした。自分も国際フォーラムで生演奏を楽しんでいるかのような興奮をおぼえました…こんな贅沢が許されるのもやっぱりNHKだからでしょう。

 NHK-FMって往年の「名曲喫茶」みたいな存在だと思うのです。受け取るのはコーヒー代だけでいろんな音楽が聴き放題、みたいな。とにかく「公共放送としての役割」はけっして終わってなんかいません。冗談じゃない(とまだ怒っている)。
posted by Curragh at 01:32| Comment(2) | TrackBack(2) | NHK-FM
この記事へのコメント
Curraghさん、お久しぶりです〜

今日私のサイトにアップしたウイーン少年合唱団関係の記事の中で、

> NHK-FMって往年の「名曲喫茶」みたいな存在だと思うのです。受け取るのはコーヒー代だけでいろんな音楽が聴き放題、みたいな。

勝手に紹介させていただきました。(^^ゞ)

http://blog.goo.ne.jp/kurikeinosuke/e/bdfeabd06d0061d55be713355cd504a5
Posted by Keiko at 2007年01月31日 23:01
Keikoさま

こんなつたない記事を引用して下さってかえって恐縮です…。

メールのほう、ご丁寧にありがとうございました。
m(_ _)m

Posted by Curragh at 2007年02月04日 06:23
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