2006年07月03日

The Da Vinci Code

 先週末、The Da vinci Codeをようやく――いまごろになって――見に行きました(以下、多少のネタバレあり。ご了承ください)。

 けっきょく原作本を読む暇がなくて、先入観のほとんどない状態で見に行ったんですが、作品として集中して見ることができたので、それはそれでよかったみたいです。自分の場合は「原作本を読んでないとわからない」こともなかったですし。もっともcryptexの扱いが原作とは異なる…とか、そのへんのことは原作を読まないとわかりませんが、物語全体から見れば枝葉末節のたぐいで、映画は映画として楽しめると思います(ちなみにcryptexはcryptology + codexからこさえた造語らしいけれども、どう見てもあれはscroll、「巻き物入れ」ですよね)。

 見に行く前はたいして期待していなかったんですが…思っていた以上におもしろくて、作品としては秀逸、とてもよくできていたんじゃないでしょうか。ロン・ハワード+トム・ハンクスのコンビの作品を見るのは「アポロ13」以来なんですが、それと負けず劣らずいい映画に仕上がっているのではと感じました。実物大セットでの撮影とCGが多用されていたようですが、見ていてなんの違和感も感じなかったし、あまりに自然なのでつい「ほんとにこんな地下室あるんかな?」なんて思ったり(ロケ地のことをよく知らないからというのもあるけど)…ひと言で言うと、「講釈師、見てきたようなウソをつき」みたいな感じかな。これはハワード監督の作り方のうまさもあるかもしれないが、やっぱり原作者ダン・ブラウンの書いた歴史ミステリの巧みな語りによるところ大でしょう。映画パンフレットに俳優さんのインタヴュー記事が掲載されてますが、Opus Deiのアリンガローサ司教に扮した役者さんも、「『ダ・ヴィンチ・コード』の最大の魅力っていうのは、フィクション以外のなにものでもないのに、事実がほどよくまぶしてあること。だから、読者は深く引き込まれてしまう」とうまいこと言ってます(休暇先のプールサイドで目にした光景の話は笑えました)。

 個人的には、冒頭に出てくる「モナ・リザ」がなんとなく似てないなぁ…ということ以外はとくに気になる点はありませんでした。ただし、ちょっとエキセントリックなティービング教授の長ったらしい説明にはいささか引き気味…になったことも事実。そもそもコンスタンティヌス帝が325年5月20日にニケア公会議を召集した理由は、当時の教義上の分裂(アリウス派とカトリック教会との対立)をなんとかしようと画策してのもの。「自分たちに都合のいい正典を選んだ」わけじゃありません。それに公会議は何度も開かれているし(うちニケア、コンスタンティノープル、エフェソ、カルケドンの4つの公会議は全キリスト教会を結ぶとりわけ重要な会議として承認されるようになった)。ようするにかんじんの教義がバラバラでは帝国民をまとめるうえで困ります、というわけ。「マグダラのマリヤの福音書」も教授が得意げになって持ち出せるようなものではなく、岩波版『ナグ・ハマディ文書 II』を見ればわかるように、ほんの数ページの断片しか残っていない代物で、いつどこで書かれたのかも不明。おなじナグ・ハマディ文書の「フィリポによる福音書」も、じっさいには福音書というよりたんなる抜粋集で、映画に出てきた箇所も、

 …[主は]マ[リヤ]を[すべての]弟[子]たちよりも[愛して]いた。[そして彼(主)は]彼女の[口にしばしば]接吻した…(p.76)

 のように学者が前後関係から類推して補足した箇所([]で囲まれた部分)だらけであることも付け加えておきます。

 のっけからフィボナッチ数列だのが出てきて、知的刺激に満ちたスリラーだからここまで大いに受けたのだろう、と思ったけれども、館長の孫娘のソフィー…という名前を聞いたとき、ひょっとしてこの人がイエス-マリヤの末裔かしらと冗談半分に思っていたらほんとにそういう展開だったとは…。ソフィーという名前じたいがいかにもグノーシス的だし、盗作(?)されたと主張している作家の歴史ミステリにも、ソフィアなる女預言者が出てくるからそう思ったんですけれどもね。それと、お話が進むにつれ、ティービング教授がだんだんStar Wars episode3 の皇帝パルパティーン(=ダース・シディアス)に見えてきてしまった(イアン〜という名前の俳優には名優が多いのかな?)。

 ラストでラングドンが夜のルーヴルにもどってくる場面。ちょうどぐるっと巨大な円環を描いているみたいで印象的でした。
posted by Curragh at 23:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画関連
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Excerpt: イエスを神とし、それを権力に利用する人々に対する皮肉を込めた映画・・かな?
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