2009年01月03日

電子ブック元年? 

1). クリスマス前の先月23日付けの記事から(書き手のひとりはよく見かけるMotoko Richさん。文芸評論の専門家なのかな?)。いま米国Amazonは、自社開発したKindleという名の電子ブックを売り出し中。電子ブック…とくると、液晶は見にくいし、あの文字のギザギザも生理的に嫌いで、国内市場でもこれまでいろいろモデルが投入されてはいつのまにか消えていったという印象しかなかった。歌田氏のこちらのコラム記事を見ますと、NYTimes社は経営そのものが――昨年自己破産したTribune社みたいに――かなり傾いていて、そっちのほうも気にはなるけれども、画面上で新聞を読むことにはさほど抵抗がなくても、「書籍」とくるといまだにアレルギーがある(新聞・雑誌記事のたぐいはわりといいかげんに読んでもあまり気にならないけれども、一冊の本となると話はべつ)。たとえば長めの論文とかはよくWeb上でpdfファイル化されているけれども、いちいち紙に印刷してから読んだり。小説でもエッセイでも、こういう「文芸作品」というのはやっぱり紙の本でないと…そう思ってました。



 でも記事を見ますと意外にもこのKindle、売れているみたいで、たしかに上記リンクに行ってみますと、'Due to heavy customer demand, Kindle is sold out.'なんて書いてある。Amazonに言わせると、オプラ・ウィンフリー女史ご推薦のあるベストセラー小説も、売り上げの二割がこのKindle版だというからちょっとびっくり。液晶画面はたしかに昔の電子ブックより見やすいし、フォントも印刷された活字みたいにひじょうになめらかで、大嫌いなギザギザもなし。デジタル機器なので、たぶん文字の拡大・縮小なんかもかんたんにできるのでしょう。無線LAN機能もあって、電子ブック化されている一般書籍のみならずThe Irish Timesとか新聞もダウンロードして読めるみたい。もっともWeb上で読める新聞なら、ふつうにPCで見てもかまわないが…Kindle版は有料ですし。

 ジョブズさんは「いまどき本なんか読んでいるやつなんかいない」とばっさり切って捨てていたようだけれども、じつは電子ブックリーダーとして使われているデバイスのひとつがほかならぬApple社のiPhoneだったりする。iPhone用のリーダーソフトのダウンロード数もなんと60万回(!)にものぼるとか。そんなに米国人ってみんなこういうデバイスで本を読んでいるの?? Scroll Motionという会社は、iPhone用のリーダーにランダムハウス社とかサイモン&シュースター社とか、大手出版社から刊行されている書籍の電子ブック版を販売すると発表したり。ジョン・グリシャムとかダニエル・スティールとか、超売れっ子の書き手の作品までもが電子ブック版としてぞくぞくと追加予定だとか。もちろんなかには「紙の本でなきゃイヤだ!」という向きもいますが、この流れはもはや止まらないようで、今年にはAmazonとSonyが新型電子ブックを出すとか。新規参入組もあいついでいて、Plastic Logicという開発元は、従来型よりさらに薄く、軽くて紙みたいに曲がるデバイスを来年には売り出すそうですし。しかしどうでもいいけれど、トロントに本社のあるハーレクイン社ってひと月当たりの刊行点数がハンパじゃないですね…なんと120冊。ちょっと多すぎやしない…?? さらに驚くのは新刊本はすべて電子ブック版でも読めるとか。また電子版のみの短編を2.99ドルで提供しているとか。まるで楽曲ダウンロードサイトの書籍版みたいだ(とはいえ中身は…あんまりたいしたことない感じ)。

Harlequin, which publishes 120 books a month, makes all of its new titles available digitally, and has even started publishing digital-only short stories that it sells for $2.99 each, including an erotica collection called Spice Briefs.

「活字中毒」を自認し、当初この手のデバイスを嫌っていた本好きでさえ、ウィンフリー女史も絶賛したというKindleを旦那さんからもらった女性みたいに、いざ使ってみたらハマってしまった、という人もすくなからずいるようで…こればっかりは自分で使ってみないとなんとも言えませんが。

2). そんな折りも折り、多作で知られるミステリ作家のドナルド・ウェストレイク氏が急死した、という一報も入ってきた。享年75。休暇先のメキシコに滞在していた大晦日、夕食を取ろうと移動途中で心臓発作を起こしてそのまま不帰の人になってしまったようです。記事にもあるように、ウェストレイクという人はさまざまなペンネームを使い分け、ものした作品ものべ100冊を超えて、そのうちすくなくとも16作は映画化され、また映画脚本も5本書き、そのうちの一本「グリフターズ・詐欺師たち」は1991年度アカデミー賞候補にもなった。日本でも、リチャード・スタークの筆名で書いた「悪党パーカー」ものが翻訳されていますね。自分は「サミュエル・ホルト」名で書いた作品をちょこっと知っているくらいですが、ほんとはウェストレイクが書いていたんですね。年に4冊ペース(!)で書いていたこともあるというから、その馬力たるやすさまじいものがある。日本の作家でもいましたねぇ、「座っちゃうと睡魔に襲われるから、立ったまま書くんだ」と言った人。ちょうどそんな感じですね。またウェストレイク氏の自宅を訪問した友人の話では、自宅書庫には各国語に翻訳されたものもふくめて、すべて「自分の書いた本」でみごとに埋め尽くされていたという。そして記事の掲載写真を見ればわかるように、この人は一貫して「メカニカルな」旧式のタイプライターで作品を書いてきた(言わずもがなだけれども、キーボードのQWERTY配列というのももとはタイプライターから。Qから右の列をそのまま呼び名にしたもの)。電子ブックとかPCとか、そういうものにはいっさい関心がなかったらしい。なので生産中止になったタイプライターが壊れると仕事になんないので、いつでもパーツを交換できるようにとつねに4,5台のタイプライターをもっていたと言います。そうして書き上げたタイプ原稿は完璧で、「ほとんど手で書いた」ような原稿だったそうです。

Otto Penzler, a longtime friend of Mr. Westlake’s and the owner of the Mysterious Bookshop in TriBeCa, said, “He hated the idea of an electric typewriter because, he said, ‘I don’t want to sit there while I am thinking and have something hum at me.’(トライベカは、NYCマンハッタン南にある芸術家たちが多く住んでいる地区名)”

Mr. Westlake kept four or five typewriters and cannibalized their parts when any one broke, as the typewriter model was no longer manufactured, his friends said.

これらタイプライターを使って、50年も作品を書きつづけてきたのはやっぱりすごい。記事を見てはじめて知ったけれども、多彩なウェストレイク作品も、その舞台は自身が生まれ育ったニューヨーク近辺という。生まれはニューヨークのブルックリン地区、育った場所も州都オールバニーで、通った大学も地元ニューヨーク。生粋のニューヨーカーというわけですね。死の直前まで書きつづけていた作品が絶筆になったけれども、もっとも本人はもっともっと書くつもりだったにちがいない。最後の作品はGet Realというタイトルのもの(警察犬のシリウスがドレッドに言っていたことばですね、これ)。昨年暮れには『文明の衝突』で知られる政治学者サミュエル・ハンティントン氏も亡くなっているし、年末年始をはさんでここのところ訃報つづきです。ご冥福をお祈りします(念のための追記。Times記事中、The Axの主人公Burke Devoreは当代の象徴的な人物だと評した箇所で列挙されている作中人物について。順にGeorge F. Babbittはシンクレア・ルイスの『バビット』の鼻持ちならない典型的な俗物の主人公、Holden Caulfieldは新訳も出たサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の主人公、Capt. John Yossarianはジョーゼフ・ヘラーの『キャッチ=22』の主人公の名前)。

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2008年12月28日

オバマさんは歴史本好き?

Times記事関連はここのところ書けずじまいでした。なので古いものばっかりですが…とりあえず目についたものから。

1). 一ユーザーとしてあんまりいい印象のないMS社ですが、そんなMS社もエンドユーザーのためにいろいろがんばってやってくれている面もあります。たとえば、いま流行っている「ボットネット」の尻尾を捕まえようと日夜、奮闘している「ボットネット・ハンター」なるMS社内チームの話とか。そんなMS社がとある報告を公表した。中身は、'ciberchondria'について。この造語、「心気症」を意味するhypochondriaとcyberとを引っかけたもの(ミトコンドリアじゃないです)。記事中の例を引けば、朝方ひどい頭痛で悩まされた人がさっそくWebで検索して、これは「脳腫瘍」にちがいない、と早合点してしまう、というような行動を指します。早合点くらいならまだしも、なかには真剣に悩んでしまう向きもすくなからずいます。「サイバー心気症」ということばじたいはすでに2000年から登場しているそうですが、今回のような系統だった調査というのははじめてらしい。自分の症状を検索エンジンで調べることじたいはとてもいいことだとは思いますが、問題は向こうが機械的に返してくるこたえを、人間のお医者さんとおんなじような「診断結果」として額面どおりに受け取る人の多いこと。もうひとつは検索結果上位に表示されるリンクしか見ていないこと。なのでもし上位リストに「脳腫瘍」とか「筋萎縮性側索硬化症」とか表示されるととたんにそれに飛びつく。あるいは悪性・両性のものとある場合、悪性のほうに目が行きがちだったりする。「頭痛」で検索すると、「脳腫瘍」によるものにしてもカフェインの禁断作用によるものにしても、表示される検索結果はどっちもおなじくらいの数で、しかも前者に起因する頭痛はかぎりなく可能性が低い。にもかかわらず「悪いほうの」検索結果にしか目がいかない、という方は「サイバー心気症」を疑ったほうがいい、とのこと。記事によると全Web検索キーワードのうち2%が健康関連だとか。調査対象者の2%が、調査期間中にすくなくとも一度は健康関連で検索していて、うち3分の1の人がさらに検索を重ねて「深刻な」症状のほうへ深入りしていったそうです。いっぽうでこのような人間の傾向というのは早くも70年代に観察されていた、とも。つまりは人としてごくごく普通の反応ということなんでしょうが、いずれにしても気になることがあったらきちんとお医者さんに診てもらったほうがいいですよね(→国内関連記事)。

 MS社がこんな調査をしたのは、独自に健康関連アドヴァイザー的役割を果たす「現状よりさらに高度な」検索サービスを開発するためでもあったらしい。健康関連にかぎらず、検索エンジンもどんどん「人工知能化」していくのだろうか(記事では、MS社が90年代に妊娠と保育にかんする似たような助言提供システムを作っていたことにも触れている)。

2). Time誌の'The Person of the Year'にも選ばれた、次期米国大統領(president-elect)のバラク・オバマ氏。先月16日、大統領選当選後はじめてCBSの'60 minutes'に出演したさい、「F.D.R.――フランクリン・デラノ・ルーズベルト――政権発足後の百日について新しい本を読んだ」と具体的な書名は明かさずにこたえたところ、いったいだれの書いたなんという本なのかと憶測を呼んだそうです(→元記事)。フランクリン・ルーズベルトとくれば、「ニューディール政策」とか写真がらみでは農業安定局(FSA)によるドキュメント写真によるキャンペーンとかが思い出されますが、大恐慌まっただなかに米国の舵取りを任された先達の「最初の百日」についての本を読んだとオバマ氏みずからが語ったから、いっそう関心を惹きつけたのでしょう。「F.D.R.政権最初の百日」を書いた本として「候補」にあがったのは3冊。放映翌日から「ウチで出したこの本じゃないのか?」とか、候補に挙がった本の著者に――ちと気が早いが――'congratulations!'と祝メールが送信されたりとちょっとかまびすしくもなったりしたけれど、けっきょくその日のうちに次期大統領のスポークスマンが候補にあがった本の著者のひとり、ジョナサン・オルター氏の本(The Defining Moment: FDR's Hundred Days and the Triumph of Hope)と、ジーン・エドワード・スミスという人の書いたFDRという伝記だったと発表した。前者は一昨年、後者は昨年刊行とけっして「あたらしい本」ではなかったけれども、これがきっかけでF.D.R.ものが売れているという。時節柄、これはしごく当然の成り行きなのかもしれませんが、いずれにせよ版元の人が言っているようにこういう「歴史もの」が売れるのは悪いことではないと思う。オバマ氏がじっさいに読んだ本ではなかったけれども、候補として取りざたされた本の版元の場合、初版は5千部以下、書評もほとんどなかったという(つまり話題にならなかった)。それがオバマ次期大統領の「読書」がきっかけで急遽5千部増刷、書店最大手のB&Nでも注文が多く寄せられるようになったとか。世の中そんなもんですな。オバマ氏の読書リストからは惜しくも漏れた本の著者までが、おなじ過ちを繰り返すのが歴史を忘れた者の常とすれば、次期大統領が過去の歴史から教訓を学ぼうと努めていることに歴史を書く者はみな喜ぶべきだとべた褒め(もっともヨイショではなくて、これは歴史家の本心だと思いますが)。5千部増刷した版元の広報担当はこんなおもしろいことも言ってます。

Jeff Seroy, a spokesman for Farrar, Straus & Giroux, said he was delighted to have a president-elect who might improve book sales. “Maybe he’s the new Oprah,” Mr. Seroy said, “and a rising tide of interest in F. D. R. could float a number of boats, even the ones he hasn’t read.”

 オプラ・ウィンフリー女史はTVのトークショーの司会者のみならず、本の評論家としても非常に有名な方なので、こんなたとえになったのでしょうね。それにしてもたまさかTVニュースで耳にするオバマさんの演説には得もいえぬ独特の魅力を感じます。人柄がにじみ出ているというか。このへん、どっかの国の首相とかどっかの知事さんみたいに、人の話にはろくに聞く耳を持たず、ただ人を威圧して黙らせるタイプの人とは文字どおり天と地ほどの差をどうしても感じてしまう。だから、というわけではないが、NHKラジオ第一に出ていた「日本のオプラ(?)」児玉清さんが、「この本いいよ!」と勧めていた書籍に入っていたのがその名もズバリ『オバマ演説集』。これひじょうに売れているらしい。売れているものにはいっさい目もくれないたちながら、この本ばかりはおおいに興味あり。こんど本屋に行ったときに置いてあったら、買おうかしら。対訳形式らしいから、英語の勉強にもなりますしね(大統領選に敗れた共和党候補のマケイン上院議員の「敗北宣言」もラジオで流れたとき聞いていたんですが、その爽やかさというか、党派のちがいを乗り越えてともに団結することが大切だ訴えた内容も負けず劣らずすばらしくて、じつはこっちのほうにも感動していた人)。

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2008年11月16日

両者仲良く(?)「歴史的合意」

1). Google関連で目に留まった記事ニ題。まずはせんだって、Google社の書籍検索サービス Google Book Searchをめぐって米国作家協会と米国出版社協会が起こしていた訴訟で、「甚大な著作権侵害」だと訴えられていたGoogle社と原告側双方が「歴史的合意」に達した、という内容の記事から(→国内関連記事1関連記事2)。

 和解に達したのは書籍をスキャンしてデジタルアーカイヴ化するサービスを訴えたふたつの訴訟で、Google社は1億250万ドルという巨額の著作権料を原告に支払うことで決着したという(合意にいたるまで二年かかっている)。最初、Google社がいくつかの大学と共同で大学図書館の蔵書をスキャン・データベース化してWeb上で検索できるサービスをはじめた、と知ったときには正直ひじょうに驚いた。もっともこの会社のやることはみんなとほうもないことばかりとはいえ(street viewサービスとか)、いくらなんでもこれは本を書いた当人ならびに版元からの反発がすごいだろうし、頓挫するのではないかと思っていました。図書館員や法律家のなかには、書籍のデジタルアーカイヴ化をGoogle一社に任せることは、Googleというひとつのフィルターを通ったものしか見えなくなるとして懸念を抱く向きもあります(現行の「ニュース検索」でもおなじことが指摘されている)。いっぽうGoogle社は、

Google has long said that the scanning project was part of its mission to provide access to all the world’s information.

と言い、またGoogleの共同設立者で技術部門担当社長セルゲイ・ブリン氏も、「自分たちがこの会社を設立したのはまさにこういう事業を行うためだ」とも言っている。全世界の知と情報をあまねくすべての人に「使いやすいかたちで」提供し、いっぽうで権利者側へも正当な対価を支払うシステム。今回の和解で、Google社は著作権管理のための第三者機関設立の資金も提供するという。これは画期的かもしれない。著作権料関係の煩雑な手続きが第三者機関に一元化されることになれば、このひじょうに大胆かつ野心的な試みに参入するもの書き版元が増えると思う。またこれとはべつに公立図書館などが購読料金と引き換えに全文閲覧できる、一種のポータルサイトも構築するという。一般読者にとっても、たしかにGoogleというひとつの視点でしか選択の余地はないとは言え、米国内で刊行された絶版本のほとんどが無料で、あるいは格安で読めるというのはたいへんうれしいことではある。うれしいことに変わりはないけれど、記事にもあるように、

The deal goes some way toward drawing a road map for a possible digital future for publishers and authors, who worried that they were losing control over how their works were used online, as the music industry has.

これがきっかけとなっていよいよ紙からデジタル媒体の本へと本格的な移行がはじまるのだろうか。近年日本でもかなり浸透してきた感ありの音楽配信サービスが幅を利かせて、このままでは音楽CDが消滅してしまうかもしれない。活字媒体もそうなってしまうのだろうか。そうなると、こんどは逆に困るな(苦笑)。ちなみにGoogle社がサービスをはじめた2005年からスキャンした書籍数の合計は、なんと700万冊(!)だそうです。

2). こんどはMail GogglesなるGmailの新機軸についての記事。酩酊状態(intoxicated)で意味不明、もしくは失礼なメールを書き、しかも宛て先までまるで見当ちがいの人へ送信して大失敗、という経験は…いまのところはないけれど、このMail GogglesなるプログラムをこさえたGoogleの技術者はみずからの失敗をもとに、「酩酊状態でわけわからん迷惑メールを出さずにすむ方法」としてこれを思いついたんだとか。記事見ますと、おんなじような失敗をして航海、じゃなくて後悔しているけっこう人がいるもんだ。お酒に強くない人ですので、何杯かワインが入るととたんに眠くなるから、たぶんこの「新機能」を導入する気遣いはないと思う。だいいちメールを書くのになんで計算問題を解かなくてはならないの、みたいな(笑)。どうでもいいけどこの記事のイラスト、なんかだれかに似ているような…気もしますが。とにかく「メールで失敗しないための」新機能、有効にすると週末の深夜、22時から4時までのあいだにメールを送信しようとすると、送信前にかんたんな計算問題5問を1分で解かなくてはならない。タイムアウトになるとメールが送信できない仕掛けです。

 アルコールが入ると寝てしまうような人間から見ますと、米国人って「筆まめ」な人が多いんですね。日本で言うところの「ケータイメール」みたいな感覚なのかな。記事の最後のほうに携帯電話のテキストメッセージで失敗した話とか出てきますし。しらふ(sobriety)ならともかく、酒の入った頭でメールを書こうという気には――よほどのことでもないかぎり――ならないですね。筆まめな方には意外と使える機能かもしれませんが。でも↓の記述は、たしかにそういうところはありますね。見方を変えれば、それこそがメールという手段の利点でもあるように思う。対面方式ではない、時間をおいてから読み返すことのできるメールの利点を利用したカウンセリングというのもありますし。

Text-based communication and alcohol are a potent mix in part because people already tend to be more candid online than they are in person, even before they loosen their inhibitions with a drink, said Lee Rainie, the director of the Pew Internet & American Life Project.

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2008年11月01日

文芸世界では反グローバル派?

 せんだって目に留まったこちらの記事。フランクフルトの国際ブックフェアのリポートで、なんでも米国の出版社は英語圏以外の国の作家の作品を翻訳したがらない、というもの。ちょっと意外だったのは、今年、米国内で刊行された書籍15,000点のうち、英語圏以外の外国文学は330点、全体のわずか2%しか英訳出版されていないという事実。「翻訳ものは売れない」という格言もよく引き合いに出されるのだとか。日本は開国してからというもの、とにかく大量の横文字文献を翻訳する必要に迫られたから、米国とは事情がまるで逆で「翻訳大国」と言えるかもしれない(「野球」とか「文化」とかも明治時代の「造語」。文芸翻訳にかぎって言えば、零細漫画家やアニメーター同様、翻訳だけではなかなか食べていけないのも現実)。それでもこの国だって、「翻訳ものは売れない」とはよく言われること。もっともバカスカ売れるような例外もたまにはありますが(売れる本イコール良書にあらず、ということは断っておきます。文芸翻訳についてはこちらのログが参考になるかも)。

 では英語圏以外の作品がなかなか翻訳されない米国ではだれががんばってこの手の外国文学を米国読者に紹介しているのか、とくると、これがおしなべて中小の独立系版元。記事を見るかぎりでは、その奮闘ぶりには頭が下がります。記事にもありますが、今年のノーベル文学賞に輝いた仏人小説家ル・クレジオ氏の作品を米国で英訳出版しているデイヴィッド・ゴーディン氏は、ある意味ラッキーだったかもしれない。いずれにせよ毎年、フランクフルトの見本市に来ては「英語圏以外の」国の版元ブースを渉猟して一週間を過ごす米国版元は、このゴーディン氏もふくめてほんの一握りにすぎない。大手版元は、ゴーディン氏の言を借りれば「目の見えないリスでも最後には木の実にありつける」場所にいながら木の実のほうには目もくれず、おなじ一週間を英米版元ブースしか回らずに過ごしていると言います。こういう現状を嘆いているのが、なんとノーベル文学賞を授与するスウェーデン・アカデミー代表のホーラス・エングダール氏でして、

The U.S. is too isolated, too insular,” Mr. Engdahl said in an interview with The Associated Press. “They don’t translate enough and don’t really participate in the big dialogue of literature.”

とかなりきつーい言い方で批判しています(文学賞選考過程について、AFPBBサイトにちょっとおもしろい記事があります)。

 ブースにいたガリマール社の版権交渉担当に言わせると、米国の版元は翻訳ものについてはマーケティング予算も組まず、いざ売れ行きがさっぱりだと文句をつけてくるとこぼしてもいます。また逆に、英国のリトル・ブラウン社の人に言わせると、翻訳ものはたとえぜんぶ読んで気に入ったとしても、やはり出版はむずかしいと。ほんの数ページ分の抄訳だけで出版を決断するのはリスキーだという認識が強いみたいです…いや日本でもそうか。なにしろただでさえ刊行点数がやたら多くて、返本の山…という悪循環に陥って久しいですから。またベルギーの文学基金の人によれば、英訳出版にかかる諸経費を言い訳にする場合も多いという。まあたしかに版権を買わないとそもそも話がはじまらないから…でもゴーディン氏は反論する。「国内の並みの書き手の版権を買うより、国外にいる世界一級クラスの書き手の版権を買うほうが安い。多くの版元がそうした書き手に投資しないのはまったくバカげている」。ゴーディン氏によれば、作品一点につき2000ドルで版権を取得したこともあるという――いまの急激な円高を考慮しても、20万円そこそこで買ったことになりますね。ちなみに手許にあるThe English ChoristerDeep Economyでは、当然のことながら版権は後者のほうがはるかに高い…はず(じっさいにいかほどなのかは知るよしもないですが)。後者の書き手はすでに日本でもあるていど名の知られた存在だし、前者は…「無名」氏(日本なんだから当然ですか)。ル・クレジオ氏の版元ガリマール社の人によると、見本市最初の夜に会った米国の出版関係者に、われらがノーベル文学賞受賞者をこぞって「無名作家」呼ばわりされて少々イラついたそうですが、その人はこんなことも言ってます。

“American publishers are depriving the American readership of the cultural diversity through translation to which they are entitled,” Ms. Noble said. “It is what I call the poverty of the rich.

最後の捨て台詞(?)がなかなかパンチの効いたもの言いでおもしろい。このすぐあとの発言でも言ってますが、これは米国人の書き手の質が劣っている…なんてことではもちろんなくて、ようはバランスがあまりにも悪いということ。もっと英米圏以外の書き手も紹介されなければならないのに、そういう努力を怠っている、米国内の大手出版社の怠慢を嘆いているのでしょう。微々たるものかもしれないが、良心的な中小新興出版社がそういう努力をつづけているということです。米国で本を売るというのはやっぱりたいへんなんだろうな。Amazonみたいに容赦なく値切られるし(日本のような「再販制度」もない)。

 でも個人的にちょっと気になったのが、

American publishers devoted to translating say there is no shortage of gems. On Thursday Mr. Post of Open Letter eagerly plunged into one of the international halls, plucking brochures of translated English excerpts from stands hosted by cultural agencies from Croatia, Latvia, Poland, China and Korea.

…ややや、Japanがない! Japan missingだ! これはなにを意味しているのだろうか…?? 

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2008年10月05日

LHCと'Android'スマートフォン

1). CERNのLHC、超巨大なハドロン加速型衝突器による壮大な実験の続報は――すでにご存知のとおりトラブル発生のためあっけなく挫折。こちらの記事によると、今月中旬までに5兆電子ボルト(!)ものエネルギーにまで加速して陽子どうしを正面衝突させる…予定だったのが、変圧器不調、冷却用のヘリウム流出、それにともなう超伝導磁石の焼き切れ、といった想定外のトラブルがつづいて、運転を停止せざるをえなくなったらしい。陽子の通り道である円周状チューブは絶対零度付近まできんきんに冷やされた巨大な真空管みたいなもので、修理したくてもまさかすぐに入るわけにもいかないから人間が入れる温度まで上げなければならない。修理が終わったら終わったでこんどはまたぞろ絶対零度近辺まで冷却しなければならない(-270℃以下!)。もともとこの加速器、あまりの巨大さゆえに電力をものすごく消費してしまうので、冬場は実験を停止する取り決めになっている。というわけで、実験再開にこぎつけるのは早くても来年春ごろになる見通し。思うに、いまこの時節柄、こんな莫大な金がかかり電気もバカスカ喰う実験をしなくてはいけない必然性があるのだろうか。当のLHCの報道担当官は、

“This is just an unfortunate fact of life when starting up a machine like the L.H.C,” Dr. Gillies said.

なんてこたえてますが、なんかこういう話を見聞きすると、「バベルの塔」の逸話が思い出されますね。

2). Googleがおもしろそうなスマートフォンを投入した、という話題は国内でもけっこう見かけます。こちらの記事にもいろいろ書いてありますがApple社のiPhoneがかなり話題になっているスマートフォン市場に、GoogleとT-Mobileの出した「対抗馬(answer)」が、G1というガジェット。画像を見ればわかるようにこっちはスライド式のキーボードが用意されていて、これなら長めのテキストでも楽々打ちこめそうです。すくなくとも日本のケータイのあのはなはだ使いづらい配置のキーボードよりはましというもの。価格はiPhoneへの対抗か、ライヴァルよりも低く抑えてあるし、もちろんフルブラウザにWi-Fi、GPSナビ付き。というわけで、けっこう新しもの好きとしてはiPhoneよりこっちのGoogleスマートフォンのほうが好印象。iPhoneは、出る前はこれ買おうかしら、なんて考えていた時期もあったけれども、店頭でいじってみたらやっぱりスクリーンキーボードでの長文入力はむりがあると感じた。ただYouTubeとか見ているぶんにはいいと思うけれど。それにPCのiTunesと同期して認証しなければ使い物にならないとか、バッテリは「本体ごと」そっくり交換、しかも万札が飛ぶとあっては、はっきり言って興ざめ。でもAppStoreなんかはいいアイディアだと思うし、こういう革新性はしっかりGoogle側も追従していて、自前のサードパーティ向け開発市場もオープンしています(こういう発想がなぜか日本のメーカーにはない)。ちなみに音楽配信では、Amazonの配信サイトと連動することになっているらしい(こっちのほうはあんまり関心ないけれど)。それとGiにしろiPhoneにしろ、もはやいまの携帯端末は数年前のPCとおんなじですね。時代の流れを感じます。おんなじことGoogle創業者のひとりが言ってますけれども。

“This is as good a computer as you had a few years ago,” said Google’s co-founder Larry Page, who along with co-founder Sergey Brin arrived on Rollerblades at the New York stage where Google and T-Mobile held a news conference to unveil the G1.

 Googleスマートフォンが搭載している心臓部とも言うべきOSは、Google社がオープンソースとして公開しているAndroidというもの。iPhoneOSとは、OSじたいに世界中の開発者がだれでも手を入れられる仕様になっている点が決定的に異なる。これからiPhoneと、日本にも上陸がはじまったカナダのRIM社製Blackberry、それにWindowsMobile陣営とにわかに多機能型端末市場は活気づいてきた感じがします。じつは「PCのような機能をもつ携帯端末」がほしいと思っていた個人の需要って、自分もふくめて国内にはけっこうあるのではないかと思っていたのですが、いくつか関連記事を見るといままではそうでもなかったらしい。日本は「i-mode」タイプの「限定的な」Web閲覧機能しか搭載していないブラウザとメーラーしかもたない端末が市場を占めているので、業務用途以外とこの手のデジものが好きな一部の人のあいだでしか需要がなかったみたいです。でもこんどはそうはいくまい。こちらの記事書いたライターの方も言っているとおり、iPhoneはまさに日本の携帯市場に乗りこんできた最初の「黒船」にほかならない。いずれは淘汰されるでしょうね。すくなくとも自分にはG1のほうが国内の既存機種よりはるかに魅力的に見える。それと記事読んで気になったのが、これ作っているメーカーが台湾だということ。Made in Japan製品が多かったのは、いまは昔、ということか。Japan nothingとかJapan missingとか言われるけれども、このへんも気がかりではあります。

 Google側が、スマートフォン市場にAndroid投入を決めたのは、たとえばiPhone発売後、iPhone経由での自社携帯端末向けサービスへのアクセスがほかを差し置いて急激に伸びたことも背景としてあるようです。PCの世界では覇者みたいなものですが、このG1をひっさげてスマートフォン市場に乗りこんできた新参Googleの動きには今後も注目していきたい。Googleと提携しているのはドコモとKDDIらしいですが、早い時期に日本市場向けG1端末出してくれないかしら。選択肢が広がるのはいいことです(→国内関連記事)。なおT-MobileサイトではG1のエミュレータまで用意されています。ちょっといじってみた感じとしては…ほしくなってきた(笑)。すこし前に'wearable computing'ということばが取りざたされたことがあったけれども、ひょっとしたらこういう携帯端末の進化型がまさにそれなのかもしれない。

追記。「週刊アスキー」誌にも連載している歌田氏のコラム。いまこちらの記事を見たら、GoogleのブラウザChromeについて書いてありました。なるほど、Google側の意図はそのへんにありそうですね。ネットサーフしているときに、ブラウザの存在を意識させないこと。たしかにメニューバーなんかいつもはいらない。必要なときにだけ表示させればいい。窓を「閉じる」ときはタイトルバー左端のアイコンをクリックするか、右端の赤のバツ印で用は足りますし。それと、歌田氏もフォクすけブラウザ愛用者みたいです。タブブラウザはいくつかあるけれど、なんだかんだ言ってもFirefoxがいちばん完成度が高いと思う。オンライン辞書サイトを開いて、ブログサイトを開いて、検索結果を表示させて、表示されたリンクをつぎつぎとタブで開き、目に留まった記事をどんどんGoogleノートブックにクリッピングしてゆく…Firefoxを使いはじめてから、Webサーフのやり方が以前とは完全に変わったことはたしかです。IE7もタブブラウザなので、例のヘンテコなバグさえなければ、かなり使えるブラウザに仕上がっていると思う。

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2008年09月13日

LHC稼動開始

1). まずはこちらのひじょうにわかりやすい解説記事から。寄稿者はコロンビア大学で物理と数学を教えている教授先生で、書き手が書き手ならさぞ、と思って読んでみたら、今回の壮大な実験の目的というか内容がずぶずぶの素人でもそれなりにわかってきた('E=mc2'という有名な等式を交換可能な通貨にたとえているのはちょっと斬新な比喩だと思った)。関連記事は国内外問わずたくさんあるので、Firefoxのようなタブブラウザで複数のページを同時に開いて読みくらべてみるとけっこうおもしろいかも。

 CERNの今回の実験ではやはり「極小ブラックホール」がらみの記事が多いとは思うけれども、かりにブラックホール生成に成功したとしても、それは「ほんの一瞬(「ビッグ・バン」生成時の1兆分の1秒後を再現するらしい)」での出来事で、それこそ発生したか思ったらあっという間に消えてしまうていどのもの。なので記事の最後に太字強調した見出しの部分で著者はこう自信たっぷりに書いています。

Why might one worry that this would be a problem? Because black holes have a reputation for rapacity. If a black hole is produced under Geneva, might it swallow Switzerland and continue on a ravenous rampage until the earth is devoured?

It’s a reasonable question with a definite answer: no.

Work that made Stephen Hawking famous establishes that tiny black holes would disintegrate in a minuscule fraction of a second, long enough for physicists to reap the benefits of having produced them, but short enough to avoid their wreacking any havoc.

ようするに「惑星を呑みこむほど成長する前に消滅する」から大丈夫ということか。でもこの件については同業者から訴訟まで起こされているから、ほんとうに安全なのかどうか――人間のやることに完全はないし――この記事読んで、まあそんなことはあるまいとは思ったが、安全性という点では「浜岡原発が東海地震にはたして耐えられるのかどうか」に近いかもしれない。

 今回の実験、稼動にこぎつけるまでなんと20年はかかっているという。日本の企業体もこの真空管(!)の化け物みたいな巨大円形粒子加速器建設にかかわっているらしいけれども、もちろん目的は危険なブラックホールを作ろうということではなくて、解説記事にもあったように「宇宙というのはどのように生成されたか」、そしてまだだれも目にしたことのない素粒子、とくに「ヒッグズ粒子」とか「ヒッグズ場」の発見に期待が集まっている…といってもよくはわからないが、この「ヒッグズ粒子」がもし発見されれば、物質の「質量」がどこからきたのかが解明されるかもしれないし、いままでずっと仮説どまりだった「ヒッグズ理論」も証明されることになる…らしい。またいわゆる「4次元」という空間は存在するのかどうかも調べるらしい。「ひも理論(string theory)」では、これなしでは素粒子の質量も説明がつかないようです。計算上では、陽子どうしの衝突で生じたエネルギーの残骸の一部が質量を失ってべつの次元に閉じ込められる可能性があるようですが、スイス−フランス国境地帯の地下深くに建設されたLHC内で衝突させる陽子のエネルギーが、そのような別次元の空間を作り出せるのどうかはやってみなければわからない。また未知の素粒子が発見されるかもしれないし、宇宙空間を澎湃と満たす暗黒物質(dark matter)のもとになっている素粒子も発見できるかもしれない。とにかくなにかひとつでもあらたな発見があれば、われわれのこの世界にたいする見方もしくは自然観がひっくり返る可能性はあるみたいです。なので著者に言わせると、

Should any of the particles described above be produced at the Large Hadron Collider, from Higgs particles to black holes, corks will rightly pop in physics departments worldwide.

だそうです。みんなでシャンパンでもかけあってお祝いでもするのかな。きわめて楽観的ですね。ついでにAFPBBのこちらの記事には笑った。100ドルですか。どうせならもっと賭けましょうよ、ホーキング博士。

2). つぎはこちらの記事こちらの国内関連記事でも報じられているとおりの内容なんですが、いまや超がつく巨大企業になったGoogleの野心はとどまるところ知らずという感じです。そしてこれは知らなかったが、Googleってすでに2年前からNYTThe Washington PostとかTimeなどの過去記事をWebアーカイヴ化していたのですね。それをこんどはさらに拡大して、発行された当時のままの体裁、つまり印刷紙面まで再現するというからさらに驚き。いまのところこの計画に参加しているのは北米の新聞社数社ですが、究極的には地球上に数十億存在するという新聞過去記事のマイクロフィルムをスキャンしてデジタル化、オンライン上で検索できるようにしたいとか。いやはや頭が下がるというか、これで国会図書館でマイクロフィルムを見に行く手間が省けるのかどうか、よくわかりませんが、でもこんなことしたらただでさえ発行部数が伸び悩み、経営危機に陥っている新聞社が多いというのに、定期購読者をまたぞろGoogleに横取りされてしまうのではないかしらという気もするのですが、記事にも出てくるカナダのThe Quebec Chronicle-Telegraph社のように、この壮大な企画を歓迎する新聞社もあります。見方を変えれば、自分たちに代わってすべてGoogle側の負担で過去紙面のデジタル化・Webアーカイブ化してくれるし、収入の一部は記事提供元の新聞社にも入るから、これも時代の流れなのかなとも思う。Googleでニュース検索しているほうとしては、閲覧可能な記事は多いほうがいいと思うし、世界各国の新聞紙面の過去記事がWeb上で閲覧できるなんて夢みたいな話。当面はGoogle News Archive Searchサイトで利用可能で、いずれは各新聞社サイトでも閲覧できるようにするという。Googleの開発したブラウザについては個人情報の扱いという点でちょっと考えさせられるしまだまだバグも多い――beta版だからしかたないとはいえ、サービス開始から4年も経ったGmailがいまだにbeta版なのはどういうこと? ――のであんまり興味はないけれど、分野横断的に学術論文が読めるサービス(Google Scholar)とか版権の切れた本とか図書館の本が検索できるサービス(Google books)とか、ネット上の百科事典Wikipedia同様、もはやGoogleの展開するオンラインサービスなしの生活が考えにくくなってしまっているのもまた事実。まだ携帯電話サイトを運営しているジョン・ゲール氏ほどどっぷりと「依存」しているわけではないけれども…自分のメールがスキャンされるのはイヤだけど、強力な検索機能を持つGmailはスペルチェッカーがひじょうに充実していて、すこぶる使い勝手がいいのも認めざるを得ない。たとえばいま「ブック検索」でBrendan Voyageと入力したら、Visitors to Ancient Americaなる本の、ティム・セヴェリンの復元カラフ航海のことが書いてあるページが瞬時に出てきた。世界中のいろんな書籍が一部とはいえこうして「立ち読み」できるようになるとは、数年前までは考えられなかったこと。Googleには利用者を強制的に巻きこむ仕掛けでうまいこと取りこんでいるようにも見えますが、使い勝手のよさというのもきちんと考えて設計しているところがやはりひろく支持されているようにも思う。新聞過去紙面検索・オンラインアーカイヴ化のプロジェクトも今後の展開が楽しみではあります。

3). 最後にこちらを。買い物にもそれぞれ「お国柄」が出ているというもの。たとえばイタリア・ギリシャ・エジプトでは技術製品より衣料品のほうにお金をかける傾向があるとか。とくにギリシャ人は衣服を買うさい、家電製品を買うときの13倍近い金をつぎこんでいるんだとか(Greeks spend almost 13 times more money on clothing as they do on electronics.)。また逆にアジアではノートブックPCの新製品とか薄型TVに、服を買うときの1.5倍の金をかけているという。身なりには安く、その分浮いた金を家電製品に回しているということか。Flashアニメーションを使った世界地図グラフも見ていておもしろい。こうして見てみると、日本人は意外にも(?)、「娯楽」に費やす金額がなによりも増して多いことがわかりますね(米国に次いで多い)。つぎに多いと感じたのは「アルコールと煙草」。その金額、なんとフランスよりも倍近く多い! ですね。

"Some areas in the Pacific Basin are technologically savvy, and clothing is very casual," Mr. Slater said. "In Australia, what else do you need besides a bathing suit and a pair of Uggs?"

なんかずいぶんと失礼な発言のような気が…Uggというのはサンダルの名前らしい。

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2008年08月31日

不寛容――エジプトの場合

 以前ここでもすこし触れたシャーリー・マクレーンの本に、宗教というのは人々を「ふたたび結びつける」という語源とは裏腹にたがいを分断しているというようなことが書いてありました。エジプトとくると一般的にはアラブの国、ムスリムの国というイメージがありますが、アイルランドはじめヨーロッパに伝わった修道制度というのは、シリアからエジプトを経由したもの。またエジプトには「キリスト単性説」にもとづくコプト教という独特なキリスト教の一派もあり、こちらの記事によると、8千万の国民のうち10%ほどがコプト教徒だといいます。圧倒的多数を占めるムスリムと少数派のコプト教徒とのあいだで近年、衝突が相次いでいるということを報じています。で、2005年には、古代からつづくアレクサンドリアのコプト修道院でムスリムが修道士を誘拐して鞭打ったり、略奪したりといった事件まで起きていたという。その背景にはひどいインフレと高い失業率があるようですが、「宗教間対立」というものをタブー視する政府側はあくまでも特異事例とし、この修道院の事件の場合は土地をめぐる地元住民とのごたごたにすぎないとそっけない。でもそうこうしているあいだにも双方の対立感情は深まり、ちょっとしたことが引き金となって衝突するような、ひじょうに険悪な空気が充満しているという。数か月前に、日本人コプト教司祭の活躍ぶりを伝えた地元紙記事を読んでいたので、現地ではこんな問題もあるのかという印象も受けた。根本的対策を打とうとしないくせに取り締まりだけはやたらと厳しいようで、治安部隊の数は軍の倍だという。

Egypt is an authoritarian state held in line by a vast internal security force, about twice the size of the army. Certain topics are out of bounds. People know it is taboo to say openly that a sectarian problem exists. So they are cautious.

宗教間対立の「し」の字も言いにくいらしい。それでもなんとかしようという動きはありまして、ムスリム・コプト双方の有志が集まって昨年1月に'Together Before God'というブログサイトを立ち上げ、たがいの誤解を解き、歩み寄ろうとする活動をしているというのは、望みがあっていい話だと思う。無関心も困るが、不寛容はもっと困る。たがいの「不信感」を取り除くことこそなによりも大切ですよね。たいてい「不信感」というものは、いわれのない一方的な「誤解」だったりする。エジプト国内のムスリム・コプト信者からアンケートをとったら、5000件の回答が寄せられ、そのなかにはこんなとんでもない「誤解」が含まれていたという。

The survey showed profound misunderstanding on both sides, said Sherif Abdel Aziz, 36, a co-founder of the group. Some Muslims declared that Coptic priests wore black to mourn the Arab invasion of Egypt in the seventh century. Some Christians believed that the Koran ordered Muslims to kill all Christians.

以前、NHKが世界遺産のエカテリニ修道院を取材した番組を見た感想をここに書いたけれども重複も顧みずにもう一度書く。第123代目修道院長ダミアノ大主教は、「たがいの信仰を尊重しあうことこそもっとも大切なこと」と言った。なぜそれができないのか。いまあちこちで跋扈している偏狭な原理主義という毒は、あたらアフガニスタンで汗して努力してきた青年の命まで冷酷にも奪ってしまう。不寛容は憎しみの連鎖を生むだけ、その果てにあるのは…破滅しかない。religionということばが、本来の意味を取りもどす日が早く来ればいいと思います。

 …関係ないけれども、「今日はなんの日」欄を見たら、

On Aug. 31, 1997, Britain's Princess Diana died in a car crash in Paris at age 36.

…そうか、もう10年以上の月日が流れたのか…。

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2008年08月16日

専門家も振り回されている? > 温暖化

 NYTimes電子版から環境がらみの記事二題です。

1). まずはこちらの記事から。いわゆる地球温暖化現象は、IPCCの発表を見てもわかるとおり、大局的に見ればここ百年の人間の経済生産活動によるものとほぼ断定されてはいますが、そうは言っても地球規模の気象変動のメカニズムというのは、じつはまだまだ不明な点が多いのも事実です。で、まだ根拠の裏づけも取れていないうちからマスコミに発表する学者も多いため、舌の根の乾かぬうちにべつの学者先生が異論を唱える、そしてそのまた反論が…というぐあいに堂々めぐりに陥る場合が多い。記事にもあるように、健康問題なんかがそうですね。たとえば赤ワインのポリフェノール効果とか、コーヒーのカフェインの効能とか…でもこれらにも異論・反論はあります。ようするに専門家のあいだでも意見の一致がない、つまりあんまりアテにはならないという「誤った」印象を植え付けかねないことになる。

 記者の社内blogによると、こういうふうに専門家やメディアが一般人を両極端の説にあっちへ振り回しこっちに振り回すことを「鞭打ち」にたとえている。こういうことが日常的になると、振り回されるほうもああまたか、ということになって、そのうち受け流すようになる。これではまずいというわけで、専門家のあいだからも仮説段階に過ぎない説をやみくもに公表しないようにとか、わかりやすさを最優先するあまりかんじんな部分を骨抜きにして誤解を与える報道機関の最近の傾向をかんがみて、専門家みずからが広報も担当すべきだ、という意見も出されているらしい。こういうときに活躍するのがやはりWebで、記事中、いくつかそんな専門家による啓蒙サイトのリンクが張られています。じっさいに見てみると、研究の最前線に立つ気象学者のコメントがいろいろ読めてこれはこれでとてもおもしろい試みだと思いました。いずれにせよいくら枝葉の部分で両極端な仮説が出てこようとも、「この百年で温暖化が進行している」という基本認識はいいかげんなものではない、ということ。温暖化が声高に叫ばれる前に、炯眼な農民作家ウェルデル・ベリーはある著書で、自分たちはごくごく一般的な暮らしをしているだけだ、という意識にこそ落とし穴があるというようなことをすでに書いています(たしかThe Unsettling of Americaという本だと思った)。物質文明に生きるわれわれは、自分たちの便利な生活がいかに環境に負荷をかけているかをつねに意識しないといけないということでしょう。

2). 環境関係では、こちらの記事も。コロラド州はロッキー山脈の麓にある生物学研究所。1960年代の設立当初は、近くに閉山した人っ子ひとりいないようなわびしい鉱山町くらいしかなかったのに、いまやここはスキーリゾートの中心地。車の往来も激しくなり、また40年以上も観察をつづけてきた識別票つきマーモットが車に轢かれたり、あるいは車に乗ってしまってそのままとんでもない場所にまで連れ去られたりといった問題が発生している。「長期間にわたってロッキーの動植物の調査をつづける」ことがいよいよ困難になってきた、研究所は閉鎖するしかないのか、という話。何十年とおなじ場所で定点観測をつづけるというのは、おなじく長期にわたって観測の必要な温暖化といった現象解明にとってもきわめて貴重なデータを提供する…はずなのですが、いまではあまりにも人為的影響が大きくなりすぎ、観測データじたいが使いものにならなくなってきた。ということで、研究者と観光業者、行政側が話し合いを持って、たとえば一定期間は車の乗り入れを制限するとか自主規制をかけるということで合意する方向みたいです。利害関係の対立する者どうしが話し合いの場につくというだけでもまだましなほうで、ニューメキシコの例のように、知らないあいだに観測場所の隣接地が開発業者の手に渡り、いつ重機がやってきて立ち退きを迫ったり、道路をこさえたり消火栓を作るかわからないという場合もある(こっちのケースのほうが多いと思う)。

 そこでふと思い出したのが三島測候所跡地のマンション建設問題。気象庁再編のあおりを食らって測候所は廃止されたものの、無人観測はつづいています。で、残ったのは昭和初期に建てられた歴史的にも貴重な測候所建物と、隣接する広大な空き地。建物のほうはからくも保存が決まったとはいえ、空き地は民間に払い下げられ――土地は財務省の管轄だそうで、こういうところが縦割り行政の弊害――広大な空き地にはなんとマンション建設予定地に。これでは気象観測をつづけることさえ危うくなりかねない。三島測候所跡地問題の場合、地元NPO法人が展開した署名活動が功を奏し、また建設業者も良心的な会社だったため、マンション建設はひとまず白紙撤回。とはいえ土地をだれかが買ってくれないかぎりほんとうの解決にはならない。測候所建物を取得した三島市には財政的にそんな余裕はなし。なのでこの問題はこれからが正念場ということになります。コロラドの場合はおもに観光リゾート化によって発生した問題ですが、本質的にはどっちも大差ない。富士山も夏のあいだだけ一時期新五合目までの登山区間は自家用車乗り入れ禁止にしてはいるけれども、ここコロラドの研究所の学者からも、同州アスペンにある自然保護区域を手本として、おんなじような提案がされているようです。

One oft-cited example is the road leading to the popular Maroon Bells-Snowmass Wilderness, near Aspen, Colo., where a public bus service replaces private cars on summer days.

でも西部の人というのは、ことのほか好きなときにどこでも移動できる自由というものをなによりも大切にするらしいから、公共交通機関に乗り換えろというのがどこまで浸透するかはなんとも言えない。そしてスキー客は増加が見込まれ、そんな観光客を当てこんでホテルやらリゾート施設やらがつぎつぎと建設されているという。まるでいつぞやのリゾート乱開発に荒らされた伊豆半島みたいな話だ。地元トラスト団体は研究所とも協力して、民間に払い下げられた鉱山所有地をこれまでに1600エーカー分買い上げたりして、これ以上の乱開発を食い止めようともしている。

“What's good science is to be able to study the behavior of plants and animals, and their interactions with the climate and everything else, over a long period of time.”

かつては人跡未踏の地で、長期間にわたる定点観測をする研究者にとっては言わば楽園だったはずが、いまや人間の欲によって脅かされている。悲しいことに、こういう事例はあまりにも多すぎます。もうすこしなんとかならないものか。こういうことばかりまかり通るから、とんでもないかたちになってしっぺ返しを喰らうんじゃないかと思いますね。いわゆるバタフライ効果というやつですね。だからウェンデル・ベリーは「自分はただ、みんなとおんなじきわめてふつうの生活をしているだけだ」という言い訳は、もはや通用しないと警告しているのです。

 …関係ないけれど、NYTimesのダイジェストメール末尾には、「今日はなんの日」の記述もあって、本日はこういう日でもありました。

On Aug. 16, 1977, singer Elvis Presley died at Graceland Mansion in Memphis, Tenn., at age 42.

享年42! …ですか…かくいうワタシは今年のLa Folle Journée au Japonの主役シューベルトよりも、モーツァルトよりも長生きして、メンデルスゾーンの没年にまで馬齢を重ねてしまいました。orz

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2008年07月27日

iPhoneとUMPC

1). まずiPhone関連記事から。こちらの記事は、米国では文字どおり第二世代iPhoneの発売当日早々、端末の認証をおこなうApple社のサーバーがさっそく倒れた、というもの。昨年は買った人が自宅のMac/Windowsマシン経由でアクティヴェーションする方式だったのが、今回は日本同様店頭での認証に切り換えたことと、第一世代iPhoneユーザーがファームウェアを我先に最新型のiPhone2.0にアップデートしようとしてアクセスが集中した結果、ダウンしたという。でもこうなることって予測できていたんじゃないかと思うけれども…。iPhoneという製品じたいは完成度は高いと思うが、こういうところがあいかわらずというか、AppleもMSも某セキュリティソフトヴェンダーも大差ないなぁ、というのが偽らざる感想です。

Apple did not comment publicly on the problems, but privately executives acknowledged the missteps and said the combination of the software upgrades and new iPhone 3G owners trying to complete their activation swamped the company’s servers.

公式サイトも見てみましたが、お詫びみたいなことはどこにも書かれてないようです。またMacユーザーのなかには有償Webベースサービスの.Macが突然、MobileMeなるiPhoneとの連携を強化したサービスへと変更したことについてもなんらかの問題を抱えている人がいるみたい。

 また技術コラムニストのポーグ氏の記事によると、米国では日本ほど3G通信網が発達してないから、たとえば10州では3G通信できるところがゼロだったりする。この件について、こちらのサイトによるとAT&T社に非難が集中しているようです。またポーグ氏の記事では、たしかにiPhoneの端末じたいの価格は大幅に下がったものの、2年縛りの契約が終わるころまでに払った合計金額は、旧世代のiPhoneより安くなることはないらしい。でも、音質は飛躍的に向上しているという。

True, iPhone 3G service now matches the plans for AT&T’s other 3G phones; still, by the end of your two-year contract, the iPhone 3G will have cost you more than the old iPhone, not less.

The third improvement is audio quality, which has taken a gigantic step forward. You sound crystal clear to your callers, and they sound crystal clear to you. In fact, few cellphones sound this good.

 第二世代iPhoneには「本物」のGPS機能搭載が売りでもあるが、受信アンテナが小さすぎて、カーナビのようには表示できないし、なにか障害物があると受信できなくなったりするようです。とにかく空がきちんと見えないと使えないのかもしれない。

 第二世代機には初代から未搭載のままになっている機能も多い。ヴォイスダイアルができない、コピペができない(これは近いうちに可能になるような話も耳にした)、メモリカードスロットがない、などなど。でもポーグ氏に言わせると、そういった失望の声をだまらせる「大津波」のような目玉機能がある、それがiPhone App Storeだと言います。

 携帯端末、とくにスマートフォンにインストールできるサードパーティ製ソフトというものをちっとも知らないからどんなもんだかなんとも言えないけれども、開発者にとってはこれかなりおいしい話らしい。なんでもiPhone売り上げの70%分が支払われるらしい(→国内関連記事)。App Storeは、言ってみればiTMSのソフトウェア版みたいなもの、一種の囲い込みとも言える。ジョブズ氏の本音は、「とにかくiPhoneを売れ!」ということに尽きる。で、じっさいそうなっているのだから、してやったり、というところでしょうか。

“We are not trying to be business partners,” Mr. Jobs said of the App Store. Instead, he said, the goal is to “sell more iPhones.” Apple gives developers a 70 percent cut of sales.

 開店当日の品揃え(?)は500本ほど。ジョブズ氏によると「うち三分の一はゲーム」という。それでも25%はフリーウェアだし、有料ソフトでもほとんどが10ドル以下で入手できるという。

 さて昨年NHKで放映された「グーグル革命の衝撃」でも取材を受けて、日本でも有名になった(?)青年の運営するサイトは、携帯電話のレヴューサイト。さっそく見てみたら、AT&T社の遅いEDGEネットワークではたとえばNYTimesのようなCSSの複雑に絡みあったページを表示するのにまるまる1分はかかるという。

The combination of a "2.5G" data technology and a HTML/CSS compatible browser can mean some heavy wait times (expect about a minute to render a complex page like nytimes.com).

 とはいえいまさっきTimesサイトを見ていたら、iPhone/iPod touchに最適化したサービスウェアをすでにApp Store経由で配信しているようです。オフラインでも読める機能とかはたしかに便利そうですね。

 しかしながら、いまのところiPhoneは使いやすいとは言いがたいと思う。ジョブズ氏がデモをやっていた中国語では「手書き」入力ができるのに、なぜか(?)日本語版にはなし。おまけに予測変換もかなーり遅いらしい。このへんはいずれコピペともども、ファームのヴァージョンアップで解消されるとは思うけれども、やはり2年縛りの契約を考えるとそうおいそれとは手は出せないなあ、というのが正直なところ(キャリアが…ねぇ)。それに、PCをもっていることを前提にするスマートフォンというのはどうなんでしょ? iPhoneの全機能を使えるようにするためには、どうしてもiTunes経由で認証する必要ありとはっきりキャリアのサイトに書いてある。またバッテリの扱いにくさも相変わらず。うまくすれば2年はもつようですが、充電不能になったら、なんと9800円にて端末ごと店頭交換! しかも2-3営業日は待ちされるという!! デザインはたしかにすばらしいけれども、こういうほんとうの意味での使い勝手のよさまで犠牲にしているところが個人的には納得いかない。

 ちなみに米国では日本みたいな「携帯メール」というものは存在せず、かわりに字数制限つきのSMSというテキストメッセージサービスが主流らしい。ポーグ氏によるとAT&T社提供の基本プランだと、無制限ネット接続+450分の通話、200文字以内のテキストメッセージつきで月額70ドル、それに手数料と税金がかかる(→国内関連記事)

2). つづいてはこちらの記事。ウルトラモバイルというあらたなPCの出現に大手PCヴェンダー各社は戦々恐々、というもの。もとはと言えば台湾(それと日本)の中小のヴェンダーが開拓したマーケットで、途上国向けを想定して出荷していたらしい。それが日本でもそうですが、予想以上に引き合いが来て、気がつけば安価な「ウルトラモバイル」PC市場ができてきた。でも記事にもあるように富士通やDell、IntelにMSといった業界大手は当然のことながら、参入にはいたって慎重。米国富士通の人は、最低価格ラインがさらに下がると懸念しているし、Dellのマーケティング部長という人もしょせんこの手のマシンは出張移動時とかに使うていどの製品にすぎないと言ったり。とはいえIntel社は、2011年までに4千万台を出荷するほどの市場規模が見込めるとも予測。MS社も――しぶしぶながらも――こうした低価格マシン向けにのみ、WindowsXPの出荷をつづけると言ってますし(それ以外のXPはすべて出荷終了)。ただでさえ利ざやの薄いPCヴェンダー各社は板ばさみのディレンマに陥っている、という趣旨の記事です。

 一エンドユーザーとしては、選択肢が増えることはいいことだと思うし、早く日本国内向けモデルでもLinux搭載の安価なマシンをだしてもらいたいところ(Linux搭載機は300ドルで売られている)。たしかにこれ以上の値崩れは長期的に見てあまりよろしくないことだとは思うが、買っている人だって「出先でちょこっとネット接続」みたいな使い方が多いのではないかな。アプリケーションだって、いまやWebベースアプリを土台とした「クラウド・コンピューティング」に移行しつつあるし、Webに接続さえできればたいていのことはできちゃったりする。いらんお世話的機能がごてごてくっついて値段を吊り上げたようなマシンはもうだれも見向きはしないと思いますが、どんなもんでしょうか。できればXOマシンみたいに、発電用「手回しクランク」付きのノートブックも出してほしいと思います。この分野のマシンのラインアップが充実するのはこれからですね。

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2008年07月13日

売れているそうです> The Shack

1). まずはこちらの記事から。この小説、なんと著者と、もと牧師で著述家など周囲の人が自前の出版社まで設立して売り出したものらしいのですが、売り出して1年ちょっと経った今年6月、突如NYTimes紙のベストセラーリスト(trade paperback部門)のトップに躍り出たと言います。この本がコンスタントに売れつづけたのも、ひとえに読者の口コミの力によるものだという。売れに売れて、いまや100万部突破…らしい。最大手書店バーンズ・アンド・ノーブルでも5月末以来、首位の座をキープしているとか。記事冒頭で出てくる男性の場合、はじめにまず一冊買って読んだらいたく感動、すぐさま10冊(!)買って友人知人に贈呈したというからある意味すごい(自前の版元をなけなしの金をはたいて起こしたのは、当然のことながらどこの出版社に持ちこんでも門前払いにされたから。キリスト教系の版元からは「これは問題作だ」と言われ、非宗教系の版元からは「あまりに宗教色が強すぎる」とつっぱねられた)。

Thousands of readers like Mr. Nowak, a regular churchgoer, have helped propel “The Shack,” written by William P. Young, a former office manager and hotel night clerk in Gresham, Ore., and privately published by a pair of former pastors near Los Angeles, into a surprise best seller. It is the most compelling recent example of how a word-of-mouth phenomenon can explode into a blockbuster when the momentum hits chain bookstores, and the marketing and distribution power of a major commercial publisher is thrown behind it.

 小説の出だしは、早春のみぞれ混じりの嵐のなか、主人公の男性が'Papa'と名乗る差出人不明で切手も貼ってない手紙を受け取るところから(→版元公式サイトで第1章が読めますってなんだか「なか見! 検索」みたいな仕様だ)。男性には幼い愛娘がいたが、娘は誘拐され、殺された。その4年後、差出人不明の手紙に導かれて、殺害現場になった小屋(shack)に向かう。そこで男性は有色人種の女性の姿をした神と出会い、一週間とどまるあいだに、霊的に癒されてゆく…みたいな物語らしい。

 この小説を書いたのは自身も虐待された過去を持つウィリアム・ヤングという今年56歳になる人で、小説の舞台になったオレゴン州に住んでいる。このThe Shackという処女作――と言うべきか――は、自身の6人の子どもたちの贈り物として書き上げたという。原題のThe Shackとは、読書会に向かう途上で電話取材に応じたヤング氏曰く、「各人が抱えこんでいる苦しみを土台にして建てた家のたとえ」だという。

 米国宗教界の保守的指導者やブロガーたちからは「異端だ!」と非難の声もあがり、それがかえって小説の売り上げに寄与していたりするのですが、なかには最初はなんだこんなもん、と憤慨したけれども最後まで読み切って「転向」したという牧師さんもいたりするから、おそらく物語は説得力ある展開なんでしょう、きっと(すくなくとも冒頭部だけを読んだ感想としては、なんだかもたついていて、まどろっこしいような印象を受けた。もっともこれはこちらの読みこみ方が不足しているだけなんでしょうけれども、とにかく物語の出だしだけで判断すると、Harry Potterシリーズの第1巻のほうがずっとおもしろいし、どことなくミステリを思わせるようなもったいつけた書き方も、たとえばメアリ・ヒギンズ・クラークのような手練れの書き手の小説のほうがやはりいい。ミステリついでに、ジャック・リッチーの犯罪もの短編とかもけっこう好きだったりする)。

 ただしこの小説、読者のほとんどがクリスチャン(カトリックもふくむ)。第1章の終わりで神話学者J.キャンベルと対談したこともあるビル・モイヤーズが出てくるところなんか、いかにも、という感じ。熱心な読者は信徒ばかり、そうでない人は見向きもしない。だから、「4か月で9冊しか売れなかった」とぼやく書店も(→関連blog)。

2). つぎにこちらを。Web黎明期のころは、文字どおりただ「閲覧(browse)」しているにすぎなかっただろうけれども、いまやなんらかのかたちで年がら年中、Webとかかわる生活スタイルになってしまうとそうも言っていられない。たとえばAmazonの中古品売り場に出店しているような場合。オークションなどでも多いけれども、ここもけっこう業者さんが多い。あるいは「楽天」サイトを思い浮かべればもっとわかりやすい。もし営業日に、何日もサイトが倒れて復旧しないとしたら…われわれ個人の一般客ならぶつぶつ不満を言うだけですむかもしれないけれども、商売している人にとってはたまらない。一日、いや数時間のダウンでたいへんな損失を被りかねない。記事にも出てくるように、本家の米国Amazonが先月、二日間にわたって数時間ダウンするというトラブルに見舞われたさいは、時間当たりの売り上げが数百万ドルも落ちこんだという。Googleなんかも、日本語版ができた当時はしごくシンプルに「Google検索」だけだったのが、いまやスプレッドシートにスクラップノート、写真画像管理ソフト(Picasa2)連動のWebアルバムに6GB超(!)のGmail。昨年見た「Google革命の衝撃(いまは単行本化されている)」でも紹介されていた例の若者のように、Googleのサイト連動型広告で生計を立て、しかもメールのやりとりのみならず、買い物履歴にクレジットカード情報までGoogleという一私企業に預けて生きているような人は、ほんの数時間でもGoogleサイトがダウンしただけでパニックに陥るんじゃないでしょうか。ようは一種の中毒状態。これは利用者側の意識にも問題があるということでしょう。かくいう自分も使いたいときに大家がダウンしたり、「英辞郎」が使えなかったりすると、こんな行動に走る心情も理解できるけれども。

Web addicts who find themselves shut out of their favorite Web sites tend to fill blogs and online bulletin boards with angry invective about broken promises and interrupted routines.

 もっとも自分の場合はさっさとあきらめて、手許のスコアを繰りながらバッハを聴いたり、まだ読み終えていない本を読んだり、あるいは単純に寝てしまう(現代人ほど目を酷使している人間はいない)。

 というわけで、「いま自分が利用している(またはお気に入りの)サイトにアクセスできないが、これって自分だけの現象なのか、それともサイトじたいがダウンしているのか?」という疑問にこたえてくれるというサービスを立ち上げた24歳のエンジニアを紹介しています(Down for everyone or just me? サイト)。こういうサービス、案外ありそうでなかったかも。さすがこういう思いつきは米国のほうが早いですね。

 もっとも「タダほど高くつくものはない」という見方もある。日本人はとくにそういう傾向が強いかもしれない。タダで提供してやってるんだ、文句言うなみたいな高飛車な態度。いまはあまり感じなくなったが、以前はそんなサイトをときおり見かけた。それもこれもGoogleやAmazonをはじめとする、「利用は基本的に無料」でありながら、しっかり収益確保するというビジネスモデルが確立してきたから、たとえタダで利用できるサービスであっても、従来のように利用者――いまやりっぱな顧客――は肩をすくめてしかたないとあっさり引き下がるようなことはたぶんないと思う。たいてい、自分が利用したいときに「必ず」アクセスできるものと思い、それが当たり前だと思っている。記事にもあるように、Webベースのサービスを提供する会社は、たとえそれがロハサービスであっても、一日24時間365日、稼動しつづける責任がある、というのが共通認識になりつつあるようです(すくなくとも米国では)。

“When these sites go away, it’s a sudden loss. It’s like you are standing in the middle of Macy’s and the power goes out,” he said. “When the thing you depend on to live your daily life suddenly goes away, it’s trauma.”

He says Web services should be held to the same standard of reliability as the older services they aim to replace. “These companies have a responsibility to people who rely and depend on them, just as people going over a public bridge expect that the bridge won’t suddenly collapse.

 …あんまり想像したくないけれど、AmazonやGoogleといった巨大なWebサービス業のサーバがくしゃみしただけで、世界中の電子商取引にかかわっている人が風邪ひくような事態も考えられなくもない。そこまで酷いことにはならないだろうが、そんな兆候が進行中であることだけはまちがいない。

3). 最後の記事はほとんどおまけていどに。これ書いた記者もなあ…と思わず感じてしまったけれども、それにしても「脱メタボ」→'Goodbye, metabo,'とはこれいかに(苦笑)。というかこの記事読むまでメジャーで胴回りを強制的に(!)計測されるということじたい知らなかった。胴回りを測っただけで生活習慣病(昔は「成人病」と言っていた)の予防になるのかと問いたい。厚労省の隠れた思惑についても言及してはいるけれど、

The campaign started a couple of years ago when the Health Ministry began beating the drums for a medical condition that few Japanese had ever heard of ― metabolic syndrome ― a collection of factors that heighten the risk of developing vascular disease and diabetes. Those include abdominal obesity, high blood pressure and high levels of blood glucose and cholesterol. In no time, the scary-sounding condition was popularly shortened to the funny-sounding metabo, and it has become the nation’s shorthand for overweight.

というのはやはり苦笑…してしまうが、つぎに尼崎市の作ったという「脱メタボ・ソング」までいちいち載せることもなかろうに…(絶句)。でも松下の健康保険組合の内科医が言うように、

“Before we had to broach the issue with the word obesity, which definitely has a negative image,” Dr. Sakamoto said. “But metabo sounds much more inclusive.”

なるほど。それはあるかもしれませんね。でも自分に言わせれば欧米並みに煙草課税額を引き上げることのほうが重要…のような気がする。とにかく喫煙とそれに巻き添えを食わされるほうの健康被害のほうが深刻ですよ。

“Smoking is even one of the causes of metabolic syndrome,” he said. “So if you're worried about metabo, stopping people from smoking should be your top priority.”

 胴回り計測については、「自分は大丈夫だから、行かない」と頑強に抵抗する向きも。もっとも自分もけっして引っかからない自信だけはあるので、こういう無意味な検診には、たぶん行かない(笑)。

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2008年07月05日

Windowsは崩壊寸前?!

 先日もここで取り上げた、米国サンホセ州立大学教授先生が、また寄稿してました。こんどは、PC市場を事実上独占しているOSWindowsをめぐるMS社の姿勢を痛烈に批判している記事。直販・家電量販店問わず、Apple社のMac OSX搭載機以外でわれわれエンドユーザーがPCを買う、となると、好むと好まざるとにかかわらず買わされるのがWindows。げんに、WindowsユーザーでほんとうにこのOSが好きで使っている人なんているのだろうか。たいてい、いま使っているソフトウェアがWindows版しかないからとか、周辺機器のドライバがMacやLinuxに対応していないとか、消極的理由からしかたなくWindowsOSを使うしかないからではないでしょうか(→関連:ゲイツ会長「引退」の記事)。

Windows seems to move an inch for every time that Mac OS X or Linux laps it.

 寄稿者ストロース教授に言われるまでもなく、Mac OSX、Linux、Windowsのなかで、もっとも時代遅れのOSはWindows。原因は、けっきょくのところ、いままでのMS社自身の市場独占戦略にほかならない。ここへきてそれが仇と出ているわけです。なにしろ市場のほとんどを独占しているのだから、Apple社がかつてOSXへの移行時にしたような思い切った方向転換をしたくてもなかなかできない。どうしても安全策というか、過去ヴァージョンとの「互換性」を最優先せざるをえない。それでもまぁ先代のXPまではそこそこよかったのではと思う。自分もXPの日本語版が出た当初にOEM版を買って、不安定きわまりない9x系から乗り換えた口で、いままで使ってみた感想としては、歴代WindowsOSのなかではもっともいい製品だったと思う。しかしながら現行のVistaは、プリインストールモデルはさておき、製品版とDSP版の売れ行きはXPにはるかに及ばないらしい。発売後1年が経過して、いまだに売れゆきがかんばしくないようです。WindowsOSは言ってみれば古い土台(WindowsOSのソースコードはかれこれ20年は経過しているらしい。いいかげん寿命ですな)の上に建て増し建て増しをつづけた建物のようなもの、土台そのものが時代遅れなのに、Mac OSXのようにいまだに思い切った刷新をできずにいることが不振の大きな理由のひとつではないかと思う。だいいち現行のVistaは、OSを走らせるだけで「メモリは2GBくらいは必要」だなんてバカげています(不要な視覚効果を切ればいいだけの話かもしれないが)。もっとも現行OSX Leopard――次期ヴァージョンはマイナーアップデイトらしく、コードネームはSnow Leopard(ユキヒョウ)――も、従来品からくらべて若干、重いようですが、時代はこんな重くて高いOSは求めていない。おまけにGUIのデザインもあいかわらず散漫としてどこになにがあるのか、わかりにくいし(OEに保存されているメールデータがどこの階層にあるのか、きちんと把握している人がどれくらいいるのだろうか)。その点、がぜん意気盛んなのがApple陣営とオープンソースのLinux。UbuntuというLinuxディストリビューションは、単純にインストールするだけならわずか数ステップで完了するらしい。いまのVistaもXPにくらべればインストールはしやすいと聞いているけれども、それとてそういう技術をもった会社を買収して自社製品に応用したからで、MS社の独自技術ではないですし。Vistaが発売されたとき、IT関係者の反応は、

When I.T. professionals and consumers got a look at Vista, they all had this same question for Microsoft: That's it?

 ラジオの「チャロ講座」聴いている方、ここでも出てきましたよ、例の'That's it?'。おばさん犬マルゲリータが警察犬シリウスにたいしてあきれ顔で言っていたあの科白。IT関係者のみならず、一エンドユーザーも、まったくおんなじ感想しか出なかった。じっさいに店頭でいじってみて、「なんだ、さんざ待ったあげく出てきたのがこれ?」と。この日を境にMac OSXやLinuxのほうを物色するようになりました(笑)。現物を見て、乗り換えるメリットがさっぱり思いつかなかったのも事実。XPからVistaにして、せいぜいいいことはメイリオフォントくらいのものかな、なんて書いたこともあるけれど、なんとXPユーザーも「メイリオ」が使えるようになった。この点だけはMS社に感謝(笑、でもおかげでWebサイトの文章がずいぶん見やすくなりました)。

 Vistaの不振を認めて(?)いるのか、当のMS社の人でさえ、Vistaが出たばかりの昨年2月にもう次期ヴァージョンWindowsの開発にとりかかっている旨の発言もしている。記事中、もっとも目を引いたのが、4月に調査会社ガートナーの研究者二名が「Windowsは崩壊寸前」というなんとも刺激的タイトルのプレゼンをおこなったと書いてある箇所。

But sticking with that same core architecture is the problem, not the solution. In April, Michael A. Silver and Neil MacDonald, analysts at Gartner, the research firm, presented a talk titled “Windows Is Collapsing.” Their argument isn’t that Windows will cease to function but that the accumulated complexity, as Microsoft tries to support 20 years of legacies, prevents timely delivery of advances. “The situation is untenable,” their joint presentation says. “Windows must change radically.”

 じつはMS社内でも「もう根幹から変えないとダメだ」という意見はあり、2003年から'Singularity'なる社内プロジェクトも立ち上がっているという。でもかんじんのWindows開発者にはそのプロジェクトのメンバーはだれもいない。ようするにこちらは「コンセプトカー」みたいな企画で、Windowsはべつものという姿勢。ストロース教授はこの風通しの悪さも批判している。いまWindowsユーザーを悩ませているシステムクラッシュやセキュリティ脆弱性の問題は、OSのソースコードじたいを刷新しないかぎりけっして改善はしないという。

They believe that problems like security vulnerabilities and system crashes can be fixed only by abandoning system design orthodoxy, formed in the 1960s and ’70s, that was built into Windows.

 おもしろいのは、「ならばWindows OSX」にしたら、という主張。いいとこ取りというわけですか。一般のエンドユーザーにとって、いちばん負担のない選択肢になりそうではあるけれど…。

 Apple社がOSXへの移行を決めたとき、株価も最低、市場占有率も3%にまで落ちこんでいたときだったという。ようするにどん底(nadir)。OSXへの移行は、Apple社の起死回生をかけた賭けだったようです。そのときの決断がなかったら、いまのiPhoneだって登場してはいない。iPhoneは、言ってみればOSXだからこそ可能になったモバイル端末(通話機能はおまけみたいなもの)。MS社内ではとくに混乱ということはなくて、平静そのもの、楽観視さえしているようですが、こちらの記事によると、ガートナー社の研究者の発言として、「3年後」がひとつの正念場になるとか。

Silver and MacDonald also said Windows on the whole is becoming less important, since software developers are now designing applications more for the web than for operating systems. Microsoft is falling behind and could face major turmoil in as little as three years, when it will have trouble competing with web and mobile applications.

 クロスプラットフォームとか、いまのトレンドはOSがどうのではなくて、「どんな使用環境でも使えるプラットフォーム」の開発が盛んです。前にここでも書いたけれども、iPhone用の開発キットが提供されて、今後ますます「クラウド・コンピューティング」と呼ばれるWebベースのサービスに開発の重点が移っていくだろうと思います。いまはちょうどその過渡期。Windows陣営も、いまならまだ間に合うと思うんですけれどもね。

付記。先月20日で販売終了したXPのサポートライフサイクルについて。いちおう2014年までは延長サポートが受けられる…ようですが、これはSP3を適用したシステムのみで、SP2のみの場合、来年までとなるようですorz(→関連記事)。

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2008年06月22日

iPhoneと電子メールとシャトル帰還

1). まずはこちら。お待ちかね第二世代iPhone登場という記事。日本もふくめて世界70か国でいっせいに売り出すみたいです(米国本国と独・英・豪・墺・アイルランドの6か国ではすでに販売されている)。公式サイトも見てみましたが、USB経由で充電できる小型アダプターとかも用意されているようですが、電池交換できないという仕様(?)には変更なし。iPhoneのプロトタイプとも言われるiPod touchの場合、最初にMac/WindowsマシンにiTunesを入れ、それ経由でアクティヴェーションしないと製品として使えない。こんな使い勝手の悪い仕様の携帯電話って…とも思いましたが…もっとも仕事でモバイル端末を使っているような人にはBlackberryとか、多機種とデータ同期可能といった新機能もいくつか搭載しているし、3G規格対応で高速通信もできるからそういう意味では以前より実践的で使える端末になったのかもしれない。第一世代iPhoneのセールスは全世界で約600万台、第二世代は1千万台を売り上げ、iPhone市場投入2年以内に名実ともに世界一のスマートフォンメーカーとしての地位を築きたいというのがApple側のもくろみらしい。Appleの開発者向けの集まりで例によって例のごとく新iPhoneをお披露目したジョブズ氏は、

"This is the phone that has changed phones forever,"

と自信満々。第一世代とくらべ電池寿命も伸びているらしいけれども、

It will also have a longer battery life in some cases, five hours for talking on the 3G network and 24 hours for playing music on the phone.

これって長いのかしら? また20GBのディスクスペースつきMobileMeなるWeb同期サービスも――もちろん有料――はじめるとか。でも記事にもあるようにすでに似たようなサービスはGoogleが、もっと安い値段で提供していますし。またこんな調査結果も――たしかに統計数字というのはウソをつくものだが――あります。

 携帯電話の新機種…もいいけれど、自転車乗りながら片手で…というのは危ないからとにかくやめてもらいたい。何度かそれで自転車に引っかけられそうになったことがある。今月からそれは違反行為で罰金対象です、念のため。

2). こちらのエッセイふうの寄稿文は電子メールの話。メールは、昔の郵便とおなじく、転送途中にどこかで設定の狂った中継点(M.T.A.と言うらしい)があると、とんでもない宛先に「誤配」してしまう。こういう場合、正しくはないがきちんと相手に届いているのでMail Daemonサーバーから「配達を試みたけれども、あて先不明なので返送します」みたいなお知らせも投げられてこない(自分も一度だけ、なんだかさっぱり見覚えのない人からメールが来たことがある)。さりとて、ではOEなんかについている「受信確認を求める」という機能も、なんだか押しつけがましくて使う気になれない(この機能を使うとメールサーバーにも負荷がかかるらしい)。記事の書き手――サンホセ州立大学の先生らしい――も、債権者からの取立て配達証明郵便みたいでなんかイヤだと書いている。

When I'm the recipient of an e-mail message, I'm uncomfortable when a sender, seeking reassurance of safe delivery, presents me with a pop-up box requesting that I click to acknowledge its receipt. I routinely decline to do so. Why? I can't say exactly. Maybe it's like the unpleasant business of being presented with a certified letter from an unpaid creditor.

 記事中、90年代にメール転送のソフトウェア仕様開発に当たったキース・ムーアという人が、いまだにエンドユーザー側のメーラーには配達完了というサーバー間のやり取りを組みこめるようにできていないと苛立っていますが、じつは相手にそれと知られずに配達証明してくれるサービスなんてのがあるそうです。記事にはReadNotifyというオーストラリアの会社とMsgTagというニュージーランドの会社のサービスを紹介しています(なぜどっちも南半球の隣り合った国どうしなんだろう…?)。ReadNotify社のほうは、なんとメール受信者が受信メールを開封して読んでいる時間まで送信者に知らせてくれるという!! とはいえこれって一種の「盗聴」、「盗み読み」では…。Gmailも、6GB超のスペースというやたらべらぼうな容量が売りで、自分も使ってるけれども、あれだって「メールの内容に合わせた」広告を表示させたりしている――つまりGoogleに本文が筒抜け。もっとも筒抜けになっているおかげでよからぬことを企んでいるテロリストとかを未然に捕まえることができればそれはそれでよいかもしれないが、「監視」されていることに変わりはないか。監視、監視、監視社会だな。旧共産圏よりはましか。ニユージーランドの会社のほうは「読んでいる時間までは報告しない」というのがオーストラリアの会社とちがうところとか。いずれにせよムーア氏も言うように

"I don't want people to know I'm reading my e-mail," he said. "In particular, I don't want spammers to know I'm reading my e-mail."

 右におなじ。悪用されたらたいへんです。ただでさえろくでもないスパマーが跋扈して、記事書いた人の皮肉たっぷりの言い方を借りれば

Ah, spam. Thank you, spammers, for making e-mail delivery more uncertain than ever.

近年ではスパムTBやらスパムコメントやらも多くて、ここの大家もそのあおりを食らって倒れることしばしば(ご苦労さまです)。記事にもあるように、場合によっては「配達不能」メールまで迷惑メールともどもスパムフィルターにかけてそのまま削除処理してしまうかもしれない。

 個人的におもしろかったのは、最後のコロンブスのエピソード。1493年、「新世界」からの帰路、スペイン国王夫妻宛てに手紙をしたため、樽に入れて流したんだとか(もちろん「配達証明」は期待していない)。これが最初の「大西洋横断途上で行方不明になった手紙」だそうです。

3). 最後にこちらも。先日、「きぼう」の船内実験室棟をぶじ国際宇宙ステーションに取り付け、起動させるという任務を成し遂げてぶじ帰還したスペースシャトル・ディスカヴァリー号(星出さんお疲れさま!)。でも記事をよくよく見てみると、宇宙ステーションにはほかにも重大な(?)問題があったのですね。

The seven-member crew also delivered replacement parts for the station's single toilet, which had been malfunctioning for a week before the shuttle arrived. Although the problem was potentially serious, the crew treated it with good humor. After the shuttle docked with the station, Cmdr. Mark E. Kelly of the Navy, the mission commander, joked, "You looking for a plumber?"

ひとつしかないトイレが不調、とはたしかにこれは一大事ですね。腕のいい「配管工」が交換部品をもって馳せ参じてきてくれたおかげでこちらは一件落着。ただ、太陽電池パネルを太陽に向ける回転部のひとつが昨年から異常に振動するなど不調で、こちらのほうは船外活動でなにやら削られたような金属粉(?)を採取したとか。それでも交換部品を取り付ければ直るようなので、11月のミッションのときに修理するようです。

 フロリダのケネディ宇宙センター滑走路に帰還したディスカヴァリー号はステーションから帰還要員も乗せて帰ってきたのですが、居並ぶ記者たちをびっくりさせたのはステーションに滞在していた飛行士の行動。

Mr. Reisman, surprisingly, participated in the traditional walk-around inspection of the shuttle and a news conference, despite having just returned from three months without gravity. In a news briefing late in the afternoon, Mr. Reisman, who is 5 feet 4 inches tall, said short astronauts tended to recover more quickly than taller ones. "I'm happy that that's finally come in handy for something other than limbo contests," he said.

背の低い人のほうが長身の人よりも重力に慣れるのが早いなんて初耳。背の低さがリンボーダンス競技以外でようやく役に立ってくれてうれしい、なんて科白も笑えます。

 今回のミッションを評して、乗組員のひとりフォッサム大佐は、

Colonel Fossum, at the crew's news conference, said there was" a great feeling of accomplishment for all of us" to pull away from the station and see it 70 percent complete.

と言い、またNASAの副長官も、

"I can't think of a mission that's really been much better than this one."

と手放しの賞賛を送っています。

 …ちなみにこちらのblogに、今回のシャトル打ち上げでアポロ以来酷使しつづけてきた発射台のトレンチ部のレンガが吹っ飛んで損傷した、というこぼれ話が載ってました。

 次回のシャトル打ち上げは10月で、ハッブル望遠鏡がらみのミッション。その後だんだんに打ち上げは減らされ、2010年に現役引退となる予定です。

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2008年06月08日

「窓から眺める人」と、「窓の外でよじ登る人」

1). まずはこちら。「クモ男」の異名をとるお騒がせ仏人、アラン・ロベール氏がまたやらかして、警察のご厄介になった。しかもなんとなんとこんどのターゲットは昨年、できたばっかり新築ホカホカのNYTimes本社ビル!!! いったいなに考えてんだ、というのが偽らざる感想(ロベール氏は過去14回も逮捕されている)。

 国内でも報じられたので、ああまたあの人か…と思われた向きも多いとは思いますが、驚くのはまだ早い。なんとその数時間後、こんどは32歳の地元ニューヨーカーの黒人男性までよじ登ってぶじ「登頂」を果たしておんなじように御用、とあいなりました(CNNの記事)。

 ロベール氏のほうはこれまでもエッフェル塔とか、いろんな国でおんなじような「パフォーマンス」を繰り返しては捕まっているつわもの。で、べつの報道記事を見たら、自分の「登頂」後にタイムズビルに登った黒人男性について、「侮辱だ」と言ったとか。でもはたから見ていると、けっきょくお二方のやられたことはおんなじことではないかと。

 新聞社ビルなので、記事書いた記者もコーヒーでも飲んで見物しながらタイプしたのかな? 掲載写真見ますと、窓際にはけっこうな人だかり。仕事になりません(笑)。しかもこの「ふたり目」の登攀者、登っている最中に窓の内側にいる人にこんなこと訊いたそうです。

"He mouthed to me, 'What floor am I on?'" said Andrew M. Bratt, an associate at Covington & Burling. "I hand-signaled that he was on 41. He nodded and looked down and moved on. He was smiling."

でもそのじつ余裕綽々、というわけでもなかったようで、

Mr. Clarke ― his hands blackened by dirt from the ceramic rods ― looked "fatigued" as he passed the 43rd floor, Mr. Mudge said. "He stopped and hung by his arms. His feet were just swinging back and forth."

このへんがプロと素人の差なのかどうかはいざ知らず、とにかくこういうことはやめてもらいたい。無謀以外のなにものでもないですよ。新聞社の人も最初は「窓拭きの人」かと思ったらしいですが、手ぶらなので、すぐにこれはちがうぞと気づいたそうです。

 NYTimes新本社ビルは、100年近くも使ってきた18階建てネオゴシック様式の旧社屋ビルに代わって、昨年11月にオープンしたばかり。高さ228m、52階建てで、設計者は「ポンピドゥ・センター」も設計した伊人建築家レンツォ・ピアノ氏。で、あらためて新社屋ビル落成時の記事を見てみますと、このビル、デザイン上問題がありますね。写真を見ればわかるように、外壁には「すだれ」よろしく白いセラミックでできた「桟」で覆われ、「桟」は屋上から6階分の高さにまで突き出している。これを文字どおりfootholdにしてぐいぐいよじ登ったらしい。ちなみにこの「桟」、日差しよけ兼窓の内側を外から丸見えにさせないためのものらしい。

 場所によってまちまちですが、この白い桟は地上6-10mぐらいからはじまっている。今回登ったお騒がせ氏二名のうち、地元の黒人男性は8番街側から登りはじめたという。このデザインの新社屋ビルを見て、遅かれ早かれこういうことをする輩が出てくるとはだれも思わなかったのだろうか。ひょっとしたら見張くらいはしていたのかもしれないが…。ロベール氏のほうはどこから登攀を開始したのかについては不明ですが、記事をよくよく見るとどうも西41丁目側らしい(通り反対側の建設工事現場の作業員に手を振っていたそうなので)。罪状認否手続きでは地方検事補が2万ドルの保釈金を要求したものの、けっきょく2000ドルですんだらしい。

 ロベール氏の今回の「パフォーマンス」、なんでも世界環境デイにあわせて地球温暖化の危機を訴えるために決行したという。ロベール氏の弁護士は判事に向かって、

"This was a political act, an act of free speech," Mr. Arshack said.

ですと。ものは言いよう、か。というか、ビルを登ったところで温暖化を止められるものでもないですし。こういう人にとって、温暖化云々は関係ない。なにかにかこつけては高層ビルに登り、みんなから注目されたい、ただそれだけでしょう。またあとから登った人の場合は「マラリアから子どもたちを救え」ということらしいが、精神的に不安定…ということで捕まったあと、医者の世話にまでなっています。どっちにしろ偽善であることに変わりなし。後者のほうは「なんでこれがマラリアへの認識を高めることになるのか?」と訊かれて、こうこたえた。

"I'm going to be on the news, no?"

毎日、事件事故の洪水状態なので、いっとき目立ってもすぐに忘れ去られるということがわかってないらしい。わかっていたら、こんな危険な真似は最初からしないでしょう。おまけにまだできたてのセラミックの桟を傷つけているし(苦笑)。もっとも高層ビルだらけの街のこと、過去にも何回かこういう「見せ物」はあったから、大多数の人にとっては、ああまたはじまったかくらいの意識でしかなかったのかもしれない。

2). こちらは先月の記事ですが、アイルランド関連の話。アイルランド・ロスコモン州の医者の子として生まれ、現在はニューヨークでアーティスト、美術批評家、そして作家としても活動しているブライアン・オドハティ氏。オドハティ氏は1972年、ロンドンデリーで14人の市民が殺された事件(「血の日曜日」事件)に抗議するため、みずから「パトリック・アイルランド」と名乗り、以後、北アイルランドから英国軍が撤退するまで「パトリック・アイルランド」名で小説を書いたり絵を描いたりして、芸術による「静かなプロテスト」をつづけてきたといいます。この話、記事を見るまで知りませんでした。記事は、「歴史的和平」が結ばれたこともあり、36年もの長きにわたって平和を訴えてきたパトリック・アイルランドを文字どおり「葬る」パフォーマンスをダブリンの現代美術館の敷地内にて執り行い、名前をまた本名にもどすことに決めた、という。なので、これは言ってみれば喜ばしい埋葬式、ということになる。

"The degree of antipathy and hatred was such that this seemed like one of those struggles with no end," Mr. O’Doherty said. "It's a miracle it's over."

 オドハティ氏は1928年生まれ。氏の育った一家は、ふたりの伯父が英国軍として戦い、べつの伯父は英国相手に戦ったというアイルランドならではの不幸な来歴があり、オドハティ氏によると「分裂した民族意識」を経験している。その後1957年に渡米、医学の道を捨て、芸術家として生きる道を選び、米国人の伴侶も得た。「つねに自分は何者なのか、を探しつづけてきた」。

 埋葬日には地元の大学教授に詩人、「泣き女」に5人の音楽家も参加。白装束のオドハティ氏が棺かつぎの列のあとからついてきて、かぶっていたストッキングを脱ぎ、墓へ投げ入れた。棺にはオドハティ氏の「デスマスク」が収められたそうです。

Finally, Mr. O'Doherty stepped forward, threw a handful of dirt on Patrick Ireland’s coffin, tossed his stocking mask into the grave and said, simply: "Thank you. Thank you for peace." Decades on, a small private act of protest had ended quietly.

…そういえば先日、もとアイルランド大統領で国連人権高等弁務官をつとめたメアリー・ロビンソン女史のインタヴュー記事が地元紙に掲載されていました。印象的だったのは、つぎのやりとりでした。「『世界人権宣言』はもっとも多くの言語に翻訳されたが、もっとも多く読まれているわけではない」。

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2008年06月03日

今年で祝100歳

1). 米国の作曲家エリオット・カーター氏が今年の12月11日に満100歳になるという。ということはあのカラヤンとおなじ年生まれということになる。さっそく先月22日、お祝いムードいっぱいのコンサートがカーネギーホールで開かれた、という記事。プログラムはカーター氏47歳のときに作曲した「管弦楽のための変奏曲」、シューマンの「ピアノ協奏曲」、チャイコフスキーの「交響曲第4番」。会場には主役(?)のエリオット・カーター氏も登場、やんやの喝采を浴びました。

Mr. Carter, though a little unsteady on his feet, walked near to the stage to greet Mr. Levine and then turned around to bask in the ovation from the audience.

レヴァイン氏とMetオーケストラは今夏のタングルウッド現代音楽祭を皮切りに、誕生日の来る12月まで「カーター尽くし」のプログラムを組んでいるそうで…。12月にはボストン響によるピアノとオケの新作のお披露目演奏も予定されているそうです。

2). 話は打って変わってこちらの記事。もうじきFirefoxの最新版が全世界同時にリリースされるようですが、記事にもあるとおり、いまやWebブラウザの世界はいつぞやの「ブラウザ戦争」再燃のおもむき。FirefoxにOperaにSafari…と使う側にしてみればいろいろ選択肢があったほうがいいに決まってます。記事によるとFirefoxのシェア占有率は18%だという。1位はあいかわらずIEですが、グラフを見ればわかるとおりここ2年でじりじり右肩下がり。でもApple謹製Safariブラウザについては、

Even Apple, which once politely kept its Safari browser within the confines of its own devices, is making a somewhat controversial push to get it onto the computers of people who use Windows PCs.

ともある。記事後半で具体的に出てきますが、ようするに例のBad Ware騒動のことでしょう。べつにそんな姑息な手段に訴えなくてもいいとは思うけれど。

自分もFirefoxをメインで使っているので、最新版にはおおいに関心あり(Mozilla FoundationがNetscapeを買収したAOL傘下とは知らなかった)。Firefoxは2003年に初お目見えしたんですね。今回のメジャー・アップデートは開発に3年、公開テストに半年かけてのリリースだけに、どんなものなのか、楽しみでもあるけれど、いままで使っていたプラグインとか便利な機能がそのまま引き継げるのか、少々不安でもあるのが正直なところ。でも、

That notion has helped to rekindle the browser wars and has resulted in the latest wave of innovation. Firefox 3.0, for example, runs more than twice as fast as the previous version while using less memory, Mozilla says.

メモリ使用量が軽減されるのは諸手を挙げて大歓迎。動作は軽いにかぎる。

 ブラウザ戦争再燃、といっても、以前とはWebを取り巻く環境はがらりと様変わりしています。いまやメール、ファイルストレージ(本来storageは「ストーリッジ」のように発音)のみならず、表計算やワープロといった従来はお高いオフィススィートのようなソフトを買うしかなかった機能でさえ、ブラウザさえあればなんだって――それもロハで――できる時代になりつつあります。Web上の「デスクトップ」なんてサービスまである。「フレームが…」とかCSSをきちんと解釈してくれずレイアウトが…なんて話は「いまは昔」。

With tasks like e-mail and word processing now migrating from the PC to the Internet, analysts and industry players think the browser will soon become even more valuable and strategically important.

"People in the industry foresee a time in which for many people, the only thing they'll need on a computer is a browser," said Mitch Kapor, the software pioneer who now sits on the board of the Mozilla Foundation and has created a start-up, FoxMarks, that is developing a tool to synchronize bookmarks between computers.

いままで以上に重要性を増しているWebブラウザ。このぶんでいくと、OSとかPCそのものも大きく変えるような気がします。「たかがブラウザ」なんて言ってられません。

 ちなみに公式サイトでは、こういう企画まで用意しているそうです。なにやらお祭りムードですな…。

3). 最後はこちら。英国国防省が、1978-2002年までの「UFO目撃情報」の記録を公開した、というニュース。もっとも本来の調査目的は「英国領空を侵犯される恐れがあるかどうかを調べる」ためだったとか。熱心なUFO信者のなかには――よくあることだが――陰謀論を唱える人までいて、これまで非公開扱いだったのはなにか隠しているのだ、と勘繰る人までいたようで(古くは「死海文書」、最近で言えば「ユダ福音書」でもそんな陰謀説がまことしやかに唱えられたりもした)。で、今回公開された記録、結論から言えば、

Whatever they were, these phenomena reported to Britain’s Ministry of Defense over the years and made public this month were almost certainly not actual alien aircraft piloted by actual alien beings.

という、なんか肩透かし(?)を喰らったみたいな結果。ある意味予想通りか。

Available on the Web from the National Archives at ufos.nationalarchives.gov.uk, they cover hundreds of sightings but are hardly the X-Files.

...It should be that, for sure!

 個人的にはミステリーサークルとか、こういう話はなぜか英国では多いなぁ、という印象を受けます。『ハリー・ポッター』もそうだけど、ファンタジーものというか、妖精や魔女・魔法使いといった存在を信じている人が多いお国柄かもしれない。

 目撃談もそれこそ十人十色で、眺めているだけでもおもしろい。

"I should like to tell your lords about some of the sightings I have seen," said the Earl of Halsbury, “beginning at the age of 6, when I saw an angel." 

これはさる上院議員の話。でも最後に登場する78歳の退役軍人の話ははっきり言って傑作です(笑)。

Out fishing in 1983, the man had just poured himself a cup of tea, he recalled, when he was approached by two four-foot-tall beings wearing pale green overalls and large helmets. They led him into what turned out to be their ship ― "I thought, Christ ― what the hell's that?" he said ― and, apparently considering whether to subject him to extraterrestrial experiments, suddenly announced: "You can go. You are too old and infirm for our purposes."

"Anxious to avoid causing offense," the report said, the man asked no questions, even obvious ones like, what planet do you come from? Instead, he returned to the riverbank, where he finished his tea (by then cold) and resumed fishing.

He was reluctant to tell his family, the report says: "I knew my wife would say 'No more fishing for you, old man.'"

10年くらい前に見たアイルランド映画「フィオナの海」に出てきた老夫婦みたいに、'Superstitious old man!'と言われなかっただけでもまだましかも。

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2008年05月24日

デシカメってKODAKが元祖だったんだ

 あいかわらず遅いのですが、とりあえず目に留まったTimes記事から3題。

1). ネット通販の先駆け的存在にしていまや巨大企業にまで成長したAmazon。ごくごくたまーに、届いたCDを開封したら中身がからっぽで目が点ということがあったり、何か月も待たされたあげく「…ごめん。あなたの注文した商品はどうあがいても手に入らないことが判明、よってキャンセルします」なんてこともときおりあるけれども、もしこの世にAmazonのような世界中から商品を取り寄せ可能な「輸入代行業者」がいなかったら、ブレンダン関連本をかき集めたくてもとうていかなわぬ夢で終わっていたことだろう。なので自分はAmazonにはとても感謝している(本家の米国Amazonではでかい容器に入った牛乳[!!]まで扱っている。このTuscan Whole Milkなる商品も、いつだったかTimes記事で見たことが…もはや「なんでも通販屋」のおもむき)。で、今回はそんな米国Amazonが、ニューヨーク州を相手取って裁判を起こした、という記事(→国内関連記事1記事2)。

 …まずおおいに問題だと思うのは、'Amazon Associate Program'に参加しているサイト、つまり'from big publishers to tiny blogs'まで、すべてのアソシエイト契約者を「Amazonの店」とみなすという、先月末州予算案といっしょ成立したニューヨーク州法の拡大解釈。たとえば自分も本家サイトの「関連文献」ページにアソシエイトのリンクを組んでいます。理由は単純で、Amazonが提供するスクリプトを書きこめばあっという間にリンクが作成できたり、商品画像が使えるから。ありえないことだが、もし自分が静岡県ではなくてニューヨークの住人だったら、サイトのリンクを経由してだれかがAmazon商品を買い、その合計額が課税対象額に達したらニューヨーク州から「売上税」として徴収しろということになる。関連記事にもあるとおり、Amazonのリンクを貼り付けている大手の小売業者には、ニューヨーク州から「撤退」するところも出はじめている。ちなみに米国Amazon本社って、シアトルかと思ったらワシントンD.C.にあるみたい。またこの州法では、顧客がニューヨーク州内に存在するアソシエイトサイト経由で買っていない場合も適用されることも考えられる。かたやボーダーレス、ワールドワイドなオンライン通販と、かたや昔ながらの税徴収にこだわるニューヨーク州当局、といったところか。顧客が、これこれのものをニューヨーク州内のアソシエイトサイトからいくらで買いました、なんて確定申告するわけもないし。第一印象としては、取れるところから手っ取り早く…という感じ。いずれにせよこれは難しい問題かもしれない。でも記事を見たかぎりではAmazonの言い分はしごくまっとうだと思うがな。だいいち、個人で運営しているサイトやブログが、「Amazonのお店」だなんてトンでもない。'... The company’s complaint argues that the statute is “overly broad and vague.” It is impossible, Amazon wrote, for it to determine which of its affiliates are actually in New York State.'と主張するのも、もっともな話。

2). いま日本語版Wikipediaを見たら、デジタルカメラの「元祖」はちょうど20年前に富士フイルムから発売された機種らしいですが、こちらの記事によるとそんなことはなくて、なんと早くも70年代に、Kodak社の技術者だったスティーヴン・サッソン氏がすでに一号機を試作していたという! これはちょっとびっくり。デジカメって日本発のカメラだと思っていたから…。

“My prototype was big as a toaster, but the technical people loved it," Mr. Sasson said. "But it was filmless photography, so management’s reaction was, 'that's cute ― but don't tell anyone about it.'"

サッソン氏かまえる試作機の画像を見ますと、たしかにでかい(笑)。デジカメというより、まるでスピグラ(その昔グラフレックス社が製造したスピード・グラフィックという報道用大型カメラのことです、念のため)ですわ。

 もっともKodak社は、デジカメの開発こそ早かったかもしれないが、けっきょく本業の「フィルム」を圧迫するような商品開発は困る、という姿勢が災いして、その後は転がる石のようにどんどん業績悪化。今世紀がはじまるころには深刻な経営危機にまで陥ったことは記憶に新しいところ。

 原材料費の高騰やフィルム需要の落ち込みなどで、いまだに赤字決算がつづいているけれども、それでも経営危機に陥ったとき、HP社からやってきた現経営陣の断行した社内改革のおかげでずいぶんよくはなったらしい。日本の研究施設なんかそうかもしれないが、以前のKodakの技術者というのは、

“This used to be a closed society, where some researchers kept their records in locked safes," said Dr. John D. Baloga, director of analytical science and a Kodak employee for 31 years. "Some of them were crushed when the secrecy went away."

だったようですので。よく言われることですが、「斬新なアイディアを産み出すことにかけては」米国が、それを「細部までさらに改良を重ねて使い勝手をよくする」ことにかけては断然日本のほうが得意ですね。でもこと写真にかんしてはKodakも応援したいところ(一時期、フジクロームとコダクローム両方を使っていたけれども、「外式」現像方式のコダクロームは時間もお金もかかるのでけっきょくやめて、フジクロームだけで撮るようになった。とはいえコダクローム・ポジ独特のずば抜けた粒状性はすごいと思う)。

3). とそんな矢先、あのO.L.P.C.についにMicrosoftが仲間入り?! みたいな記事が。先日、Microsoft社とO.L.P.C.側が「XOマシンにWindowsを搭載する」ことで――長いことさんざもめたあげく――合意したと発表。当然、搭載OSはLinuxではなくてWindowsXPになるから、途上国向けライセンス料金の3ドル上乗せでXOマシン一台のお値段は200ドルを超えることに。LinuxとWindows両方使える仕様のXOマシンはさらに生産コストがかかるのでもうすこし高くなるらしい。もちろん従来どおりLinuxのみのモデルも並行販売するということなので、これはこれでしかたないかもしれない。顧客の途上国側は――自分たちが使うのではなくて子どもたちが使うのに――Windows搭載のXOがいいという要望が強かった、というのもMicrosoft陣営の参加を促したかっこうになったらしい。はたしてこれがいいことなのか、そうではないのか、はいましばらく様子見しないとなんとも言えない。ただ、今回の一件でソフトウェア開発責任者だった人がO.L.P.C.陣営から離脱して、独自に'Sugar'という低価格マシン向けソフトウェアの開発に乗り出したりと、Microsoft参入をめぐって組織内ではいまだごたごたつづき(→関連blog)。

Inside the project, there have been people who, Mr. Negroponte said, came to regard the use of open-source software as one of the project’s ends instead of its means.

"I think some people, including Walter, became much too fundamental about open source," Mr. Negroponte said.

 代表者のネグロポンテ氏の言っていることもたしかにわかるけれども、こういうプロジェクトに市場を寡占している大企業の製品を搭載するのは、ちょっとどうかとも思う。Microsoft社はIntel社のときとちがって寄付金なし、委員会にも参加しないというかたちでの参加ではあるとはいえ、けっきょくO.L.P.C.という野心的なプロジェクトじたいがMicrosoft社にうまいこと取りこまれてしまうのではないか…というのはたんなる杞憂にすぎないのだろうか(OSとしての完成度で言えば、いまやLinuxのほうが完全に上を行っていると思う)。

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2008年04月14日

ブルックリンでの回顧展

1). いま、世界的に知られたアーティスト、村上隆氏の回顧展がブルックリン美術館にて開かれています(7月5日まで)。もちろんNYTimesにも記事が出てました(→記事1、→記事2)。

 後者の記事はじっさいに展示を見た記者による批評ですが、おおむね好意的な調子。でも今回の回顧展、村上氏らしく(?)、数年前からパートナーを組んで商品開発をしているルイ・ヴィトン社のお店まで引っさげてきた、というか、「これが展示の中心」だそうで、先にロスアンジェルスでおんなじ回顧展を開いたさい、手厳しい批判も浴びせられたんだとか(ある意味、これはむりないかも。たぶんこの手の批判も計算に入っているのだろう)。伝統工芸なんかがそうですが、一概に「これは芸術作品、これは実用品」という線引きができない、という日本ならではの職人芸の伝統がある。また高尚なものとそうでないもの、という区別の仕方にもかなりラディカルに疑問をぶつけている。世の中そんなに単純じゃあないぞ、と少々物議を醸した今回の回顧展には、そんな芸術家の企みというか、野心がうかがえます。とはいえ草間彌生さんなんかもそうだけど、どうして最近の日本のアート作品はこうもけばけばしい色使いなのかしら。はっきり言って立ちくらみしそうです(笑)。もっとも村上氏の初期作品にはかなりダークな傾向のものが多いみたいなので、これくらいでちょうどいいのかもしれない(展示全体はわからないから、なんとも言えませんが。掲載写真のキャプションにもあるとおり、ニューヨークでの回顧展では会場に搬入できず、マディソン街にあるもとIBM社のビルだった彫刻ガーデンに展示されることになった、というこぼれ話つき)。個人的には、回顧展で上映しているという、10分たらずの短編アニメ作品のほうが気になります。どんな作品なんだろ? 記事によると、生き物の宇宙船――この風船のような、「蚊遣り」のようなものか?? ――に乗った「カイカイ」と「キキ」が世界を旅するというもの。そこで強調されているのが、日本流の「自然を尊重する」姿勢らしい。自然界には「ごみ」として捨てるものはいっさいない、というわけで、「肥やし」…も出てくるみたいです(記事中、'vanitas'というラテン語がひょこっと出てきますが、意味はもちろん「空の空なるかな…」のvanity。17世紀ネーデルラント美術で流行った「むなしさ」を象徴する寓意、たとえばシャボン玉とかされこうべとかを指すときもこの語を使ったりする)。

 いまさっきビデオクリップ見たら、これでもか、というくらいに米国各界著名人がわんさかいてびっくり。みんな好きなんですねぇ。なんと建築家のフランク・ゲイリー氏までいました(「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」の設計者。ついでにここのオルガンははっきり言って「化け物」じみたあまりに斬新なデザインです)。

 村上氏の経営する会社にはお弟子さんも活躍されていますが、こちらのおしめ姿の象の親子、どっかで見たと思いきや、やはり数年前におなじニューヨークで屋外展示された「作品」でした。このときもNYTimesに取り上げられ、幼児がこの作品の周囲を楽しそうに駆け回っている写真を見た覚えがあります。そう、楽しいことも大切なことですよね。それゆえ今回の回顧展を企画したロスアンジェルス現代美術館の主任学芸員が、

The Los Angeles show attracted young people who had never been to the museum. "Many of the kids were first-time visitors, who came because they heard about the show through various kinds of cross-branding,"

と言ったのも、うなづける話ではある。

 ただ、記事に出てくる日本語の定義について、

After all, Mr. Murakami oversees a company, Kaikai Kiki (kaikaikiki means something both elegant and bizarre), that produces his art and its spinoffs.

というのはどうなんでしょう? 手許の『大辞林』では、「非常に奇怪で不思議なさま」とあります(ついでにふつう使われる語順は逆だという断り書きも一筆ほしかったところではありますが)。

 回顧展は押すな押すなの大盛況。ビデオを見ていると、この国がいまだイラクに派兵しているという峻厳たる事実を忘れそうなくらい、来場者の顔がみな晴れやかだったのも印象に残った。とにかくこのぶんだと入場者記録を塗り替える…かもしれませんね(日本ついでにこんなのも見つけました。たしか以前、ここの会社の新型ゲーム機が米国で発売されたとき、ゲームに熱中するあまりコントローラが手からすっぽ抜けてTVを直撃、なんて笑える話がTimesに紹介されてました)。

2). またすこし古いがこちらのコラムも目に留まりました。これ書いた人は長年、建設作業に従事してきた職人さんで、現場の人ならではの怖い体験もまじえて綴っています。ニューヨーク市内で最近起きた、クレーンが横倒しになった悲惨な事故を引き合いに出して、これだけ多くの建設工事が行われている昨今、空からなにも降ってこないのはそれだけで奇跡だ、と言います。とにかく現場では、いろんなものが落ちていることだけはたしか――円板研磨器の研磨材、石膏ボード用の釘に合板。記事を寄稿したこの方自身、ニューヨークに引っ越してきて最初に買った日本車を落下してきた合板10枚にぺしゃんこにされたと言います。

 はしごから転落したり小指を切断したりといった危険もつきもの。災難は、数々の修羅場をくぐり抜けてきた百戦錬磨のヴェテランにも起こりうる。ひとたびクレーン倒壊事故のような大災害が起きれば、それを教訓にさまざまな対策がとられるけれども、どうしてそれが起きたかについては完全に解明されるなんてことはない。いずれまたおんなじような悲劇が繰り返される。犠牲者が0だったためしがない。たとえばブルックリン橋では架橋工事中に橋の設計者もふくめて20名が亡くなり、またルイス・ハインの写真で有名なエンパイヤステートビルの工事中も――当初の予想よりは少なかったとはいえ――5名が命を落としている。なにか建築物を造りつづけるかぎり、この手の「異常な」事故というのは起こりつづける。いくら安全に気を配っても、人間はだれだってミスをするもの。彼らの犠牲の上に美しい摩天楼の傑作は建っている。これらの美を可能にするためにあたら命を落とした現場労働者のことをほんのつかのまでもいい、思い浮かべてくれれば――そんな作者の気持ちが伝わってきます。

Meanwhile, construction workers will sit around during their lunch breaks and share stories of close calls and the terrible things they have witnessed over the years. And then they will go back to work as usual.

 どんな仕事の現場でも似たようなものかもしれませんが、現場で働く人はみんなこうやって危険と向き合いながらも従事しています。スタッド・ターケルのインタヴュー集『仕事!』という本のことも思い出しました。コラムを寄稿したブロデリックという人はそんな建設作業の体験をつづった自伝を出すみたい。危険と背中合わせで働くこうした職人さんの技ってすごいと思う。ハインが建設中のエンパイヤステートビルの目も眩むような現場で主役に据えたのは、こうした名もなき英雄たちにほかならない。なので、こういう第一線の現場で活躍する職人さんの書いた本にはおおいに心惹かれます。

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2008年04月01日

ジョークではありません

 今日はApril Fools' Day(All Fools' Day)にして、この日を境に年金だの物価だのいっせいに値上がりする日。せっかく桜も満開だというのに、年度はじめからなんだか花散らしにされるというか、はなはだ気の滅入る出だしではありますが、じつはもっと恐ろしいこと(?)が進行中だという。

 こちらの記事によると、米国退役軍人省のもと放射線安全担当官のウォルター・ワグナーという人と、スペイン・バルセロナ在住の研究者という人が、EUの欧州合同原子核研究所(CERN)や米国エネルギー省、国立科学財団などを相手取ってハワイ・ホノルルの連邦地裁に訴えを起こした。ワグナー氏らによると、CERNがスイス・フランス国境地帯に建設中の「大型ハドロン衝突型加速器(L.H.C.)」なる装置で陽子どうしを高速で衝突させる実験をこの夏に行う予定らしいのですが、なんとなんとそれによって生成されたブラックホールに地球が呑みこまれる恐れがあるからだという!! 

 …にわかには信じがたい話ではある。記事によるとこのワグナー氏、以前にも米ブルックヘイヴン国立研究所にある陽子加速器稼動差し止めを求めておんなじような訴えを起こし、2001年に棄却されている経歴の持ち主。ではこのワグナー氏はただの人騒がせな御仁か、とくるとカリフォルニア大学にて物理学と宇宙線を研究し、べつの大学からは法学博士号まで受けている人なので、あながちそうとも言い切れない感じ。訴えられたほうのCERN側はこの加速器の安全性についてこれまでに2度の報告を出し、3つめの報告を作成中で安全性には問題なし、としている(ワグナー氏によれば、「しょせんは連中のプロパガンダにすぎない」)。もっとも大半の科学者は「ありっこない」こととして一蹴してはいるものの、ハーバード大学の物理学者によれば、「衝突器内でブラックホールが生成される可能性はおそらくないが、量子重力といったほかの生成作用が現れるかもしれない」。このへんにくると、素人にはもうさっぱり。いずれにせよこの話がただのApril foolであることを祈るのみ(→関連国内記事)。

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2008年03月24日

理想的な図書館!

 米国東海岸沿いには、独立当時からの貴重な蔵書を多く保有する学術図書館(athenaeums、日本風に言えば「なんとか文庫」のたぐい?)が、南北にわたって帯状に点在しています。というわけで今回は、そんな文化財としても第一級の価値ある図書館めぐり歩きの記事

 記者が取材に行ったのはプロヴィデンスボストンレッドウッドセイレムポーツマスの各学術図書館。これら図書館に共通しているのは、会員制だということ。いま調べてみたら、ボストンの図書館の場合、昔は上流階級の男性会員限定だったらしい。でもたとえば観光でかの地を訪れて、たまたま威容を誇る堂々たるファサードに目をとめ、なんだろうここは、というふうに飛び入り客でも入館はOK! しかも、非会員には一部制限つきながら、基本的に蔵書閲覧もOK!! そしてなんと、60万冊以上の蔵書を誇るボストン学術図書館では、犬を連れての入館までOKですと!!! '... those that behave, a staff member was quick to add.'とはなんて粋な返事、日本ではとても期待できそうにない(蛇足ながら、behave一語だけで「行儀がよい」という意味になる)。

 スライドショーを見ていただければわかるとおり、「これぞ図書館の理想像」とでも言うべき、いずれもすばらしい建物ぞろい。200年くらい前の古書も豊富に収蔵されているから、いわゆる稀覯本好きならたまらないと思う。セイレム学術図書館の場合、いっときあのホーソーン(『緋文字』の作家です)が会員だったというし、ボストン学術図書館の歴代会員にはエマーソンに大英語辞典の編纂で名高いウェブスター、6代目大統領のアダムズと、こちらも錚々たる顔ぶれ。

 これらの学術振興目的の図書館は、いまはやりの複合施設の先駆でもある、というのも共通した特徴です。ポーツマスの図書館には当地で建造された船舶の絵画が飾られていて、本よりそっちのほうが目的の入館者もよく来るとか。プロヴィデンスの図書館では、毎週金曜、会員・非会員問わず歴史・文化についての討論会が開かれ、そしてなんとシェリー酒の差し入れまであるという(飲みたい)! レッドウッド学術図書館には彫刻・絵画・調度品を展示するギャラリーがあり、昨年の来館者総数は1万8千人。その多くがやはり本よりもこちらの蒐集品目当てで訪れるそうです。ここには1ドル札の顔にもなっているジョージ・ワシントンの肖像で有名な画家ギルバート・ステュアートの署名入り作品が6点、あると言います。

 またこれらの図書館はたんに蔵書の閲覧にとどまらず、毎回テーマを決めた催し物もやっていて、ほんと至れり尽くせり、まさしく米国の知の殿堂、文字どおりのathenaeumです。ボストン学術図書館では150以上もの催し物があり、午後の紅茶会に講演会にそしてなんとコンサートも開かれるというからびっくり! ポーツマス学術図書館の目玉は、1万2千点にもおよぶ膨大な歴史的写真のコレクションだという(写真好きなので、おおいに興味あり。懐かしの「ステレオ写真」もいっぱいあるらしい。また公式サイト上で、4千点もの絵葉書や写真が検索できる!)。またレッドウッドの図書館は米国最古の公共図書館で、ニューポートの市民が、英国から共同購入した書籍を収めるために1748年(! バッハ最晩年だ)に設立したという。そこの女性館長がまた、気の効いたことを言っています。「本は壁紙じゃないわ。読んでもらうためにここに置いてあるのよ」。そうこなくっちゃね。

 見ているだけでなんとも楽しげな文化施設ではありませんか。日本にこんな図書館、はたしてあるのだろうか…。とくに地方の公共図書館の場合、真っ先に予算が削られるのが図書館とか、文化関係だったりする。運営も民間の管理者に丸投げするとかが一種の流行りのようになっている。司書の数も決定的に不足していますし。また最近では本を借りに来る人のマナーもひどい。自分は経験ないけれど、写真が切り抜かれていたり、ページが破られていたりといった事例が多いらしい。こちらの問題もほんと困ったもんです。利用者側がもうすこししっかりしていれば、こんな「知の殿堂」の運営は日本でもじゅうぶん採算が取れそうな気がするのだけれども(国会図書館ははっきり言って利用しずらい。複写代も高い。1枚40円也!!)…。

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2008年03月23日

「フーガの技法」がヒットチャート1位!?

 今日はイースターサンデー。英国など欧米諸国では、たいてい聖金曜日から明日の月曜日まで4連休になります(聖金曜日はふだんどおり営業、という会社もある)。メールのやりとりをしている英国の方の話では、今年のイースター、かの地では異常なほど寒くて、なんと雪(!)まで降ったそうです。今年の主の復活を祝うミサは大魚の上のブレンダン院長にまかせておくとして、そんなイースターの日、見つけたのがこちらの記事。現代音楽を得意とする仏人ピアニスト、ピエール-ロラン・エマール氏。このほど(3月11日)、米国にてバッハの「フーガの技法 BWV.1080」のアルバムをリリースしたそうなんですが(日本国内盤はもっと早く、今年の1月)、リリースされるや、なんと「ビルボード」誌のクラシック売り上げチャートのトップに躍り出て、またiTunes StoreでもU2とならんでトップページに大々的に紹介されたというから、こちとら口あんぐりです。こんなとっつきにくい作品のCDを、こぞって買い求めるとは、以前、「グレゴリアンチャント」がバカ売れしたときのことを思い出してしまいました。

 で、そんなエマール氏の演奏会が、「洗足木曜日」の夜、カーネギーホールで開かれまして、詰めかけた聴衆――書き方からして批評子も? ――はみな同氏の名演に圧倒されたもようです。

 「フーガの技法」は文字どおり難曲ぞろいで、各声部をそれぞれ独立して受け持つ合奏形態ならばともかく、これをひとりの奏者が両手で弾く、となるともうたいへんです(ちなみにDie Kunst der Fuga[sic]というタイトルはバッハの手になる自筆譜[BB, Mus.ms.autogr.Bach P 200]に書かれたオリジナルだが、じっさいに書いたのは娘婿のアルトニコルだということが筆跡鑑定で判明している)。

Bach notated the individual voices of the fugues on separate staffs, leaving no indication of the instrument (or instruments)for which he intended them. For a pianist, projecting the awkwardly intricate voices of the fugues with clarity requires a subtle kind of virtuosity.

最初の数曲だけでもじっさいに音を出してみれば実感されると思いますが、4つの声部を「明瞭に」聴こえるように弾くのはほんとうに至難の技、真に高度な技巧が要求される作品です。でもひとたび名手にかかれば、たとえばグールドの演奏を聴けば、この作品が永らく言われていた「抽象の極み」のような音楽なんかじゃなくて、じつに生き生きとした躍動感に満ちあふれる作品であることに驚かれるでしょう。ついでながら下線部は、各パートがそれぞれ独立して書かれた、いわゆるオープンスコア(総譜)の書法を指しています(最後の「未完のフーガ」だけはなぜか二段の「鍵盤譜」で書かれていて、その理由についてはいまだ研究者のあいだで意見が分かれている。ようするにわからないのです)。リサイタル後半はバッハ同様、複雑でポリフォニックな作曲技法を追求したシェーンベルクとベートーヴェンの2作品。アンコールでもシンメトリックに「フーガの技法」から一曲(ただし、'Contrapunctus XII'というのは、たぶん初版譜の「2声の拡大と縮小のカノンの初期稿(a)」のことだろうと思う。'Bach’s homage to the spare polyphonic writing of Renaissance masters.'と書かれてあることから察して)。記事中のmp3サンプル(出だしの「基本主題による4声単純フーガ[初版譜表記 Contrapunctus1]」)を試聴してみますと、きょくたんに遅かったグールドと正反対、かなり速めのテンポで、ピアノと言うよりむしろチェンバロのような弾き方だなあ、という印象を受けました。参考までに、すでにこのエミール氏のアルバムを聴かれた方のblog記事を紹介しておきます。

 イースターついでにこちらの記事も。スイスでイースターの日だけに供される郷土料理みたいなタルト。なんだかおいしそうです(笑)。かつて四旬節期間はいっさいの肉、卵でさえも口にしなかったキリスト教徒の家庭では、イースターのごちそうにはいまよりもはるかに格別で、切実な思いがこめられていたはずです。また料理は家庭のマンマが手作り、というイメージの強いイタリアでも、イースター用料理の一部(ピッツァ・アル・フォルマッジョとか[→現物はこういうものらしい])はイースターマンデーのピクニック用で、家庭では作らずにパン屋で買うものらしいです。

 …静岡や東京で、ソメイヨシノの開花宣言が出ました。西伊豆の海岸線沿いも、きのう見たかぎりでは早咲きのオオシマザクラなどはすでに咲いていましたが、ソメイヨシノはこれからが本番。昨年のいまごろはあちこちで異変が起きていたけれども、今年はきれいに満開になるといいな。

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2008年03月16日

インターネットは2011年にパンク??

 NYTimesから四題。

1). いまのところわたしたちには関係ないことですが、今月はじめに開催されたApple社のイベントで、ジョブズ氏がiPhone用開発キットを低価格で提供すると言ったそうです。あちらではApple純正品ではない、第三者の手になる「非公認」拡張ツールが配布され、利用者もけっこういるようですが、今後はAppleから提供されたツールで合法的に開発でき、iPhone使用者もそれらを自由に組みこむことができるようになるみたいです。会場ではベンチャーキャピタリストの方も参上して、iFundなる専用資金までポンと差し出すという大盤振る舞い。ジョブズ氏の発表によると、この開発キットは99ドルで配布するとか。で、さっそく会場では日本のセガやAOLが開発したというソフトを組みこんだiPhoneのデモ機が並んでいたそうです。

 Apple社側からはいまひとつ発表があって、ひと言で言えば、「iPhoneのビジネスモバイル端末化計画」みたいなもの。いままでのiPhoneではBlackBerryのように、MS社のExchangeといったソフトと連携して使う、ということができなかったのですが、今後は直接やりとりできるような仕様に変更する、くわえて遠隔操作でファイルの消去ができたりという、盗難などにそなえた高度なファイルセキュリティ機能も搭載するというもので、6月から実施するとのこと。iPhone既存ユーザーはこの新しい仕様に無償で更新してもらえるそうです。Apple社はiPhoneをBlackBerryの対抗馬にしようとしているのかな? だとすると、もうこれは携帯音楽プレーヤ+電話という枠には収まらない、万能端末という位置づけになるのでしょうか。記事によると、現在のスマートフォンとしてのiPhoneのシェアは首位のBlackBerryについでなんと2位(28%)だそうで、Exchangeとやりとりができるようになると、BlackBerryからの乗り換え組、というのも期待できそうだから、ひょっとしたらBlackBerryを蹴落としてiPhoneがシェア1位になるのかしら。自分としては、iPod touchにつたいしてこのほどおこなわれたというファームウェア更新がよかったかも(→公式サイト)。iPod touch、そろそろ買いどきか?? 

2). そしてこちらは2011年にはインターネット回線がパンクするかも…という記事。YouTubeだけですでに2000年一年分の全帯域を消費しているらしい(画質はたいしたことないとはいえ動画データなんだから、当たり前と言えば当たり前か)。記事に出てくる調査会社社長によれば、年間100%超の割合でトラフィックが増加しているので、このまま負荷が増えつづければ2011年には帯域じたいが不足する、つまりパンクするかも、という。でももとAT&T社の研究員だったというミネソタ大学の教授先生のように、ネットワーク関連機器も進化しているので、帯域にたいする負荷率は年間50%くらい、インターネットじたいが機能不全に陥ることはまずないという人もいる。むしろ問題なのはたんに技術的なことにとどまらず、情報通信のインフラ整備そのものにたいしていかに予算を割り当てられるかにかかっているという。もし米国がここでまごついていたら、わりと廉価で光ファイバーを個人住宅まで引いている国――日本なんかもそうかな、記事には台湾の人の話が書いてあったが。ちなみに台湾ではカリフォルニアの「高速インターネット」の二倍の通信速度をはるかに安価で提供しているという――に追い越されてしまう。そうなるとこれまでいろいろなWebベースで革新的なサービスを提供する企業が生まれて、ある意味米国経済の牽引役を担ってきたこの分野で取り残されかねない、という懸念のほうが強いという。インフラ面では、ITバブル崩壊後、「過剰な設備投資」によってかろうじてWebのトラフィック増加分は吸収してきたけれども、そろそろこちらも限界らしい。たとえばいま企業間では飛行機代とかにかかる多額の出張経費を抑える手段として、導入コストもさほどかからないインターネットによる会議システムを採用する企業が増えている。これが個人レヴェルでも普及すればたちまちトラフィック量は劇的に増える。AT&T社の話では、昨年一年間に海外インフラに投資した金額はなんと10億ドル(約1千億円超)にものぼるらしい。ようするに今後ますます巨大データのやりとりが増えれば、インターネットという通り道をもっと太く広くしないと極細の下水管みたいにつまってしまうかも、またこれは米国のIT産業の行く末も左右しかねない、ということです。でも個人的にはSecondLifeとかは典型的な消費者不在のサービスだと感じているから、インフラの現状に合わせた、もっと効率のいい使い方というのも考えたほうがよさそうな気がしますね。トラフィック、という点では、やはり増えるいっぽうの文字どおりのゴミ――スパムメール攻撃もなんとかしなくてはいけませんね。

3). タカにわざとボールを当てて死なせたとんでもないゴルファーが告発された、というのは日本でも報道されたから、知っている方も多いと思います(→国内の関連記事)。たしかにこれはまずいでしょう。「動物虐待ならびに渡り鳥を殺した」というかどで告発されたのですが、なんでもレッスンビデオの撮影中、やかましかった(?、羽音なのか鳴き声なのかは不明)から頭にきてボールを命中させたそうなんですが、本人は、「ただ追い払おうとしただけ」と反省の色なし。

4). 最後はこちら。真ん中の'LOSING AIR'と題された記事。Newsweek誌の技術コラムニスト――デイビィッド・ポーグ氏のNewsweek版? ――という人が、自分のMacBook Airをきれい好きな奥さんがそれとは知らずに新聞・雑誌の山ともども「ゴミ圧縮機」へ放りこんでしまったという、ウソのようなほんとの話が紹介されています(下線部は「MacBook Airのあまりの軽さ・薄さはかえってなくしやすい」という前文を受けているから、たとえば「これは当のリービィ氏にも言えること。彼もまた自分のMacBook Airをなくしたのだから」というふうにするのはどうかな)。↓

The selling point for Apple's MacBook Air is the laptop's lightness and thinness. But be careful, warns Steven Levy, a technology columnist at Newsweek, the Air is so light and so thin that you can easily lose it.
Mr. Levy should know, because he lost his. After tearing his apartment apart and considering that the laptop might have been stolen, he remembered leaving it on the coffee table, where newspapers and magazines tend to pile up. “My wife,” he wrote, “whose clutter tolerance is well below my own, sometimes will swoop in and hastily gather the pulp in a huge stack, going directly to the trash-compactor room just down the hall.”
As far as Mr. Levy can tell, that's where his laptop ended up.

 だらしなく書類を山積みして、その山の中に大切な「世界再薄」ノートブックマシンまで紛れこませてしまっている方、こんな憂き目にあわないよう、くれぐれもご注意。

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2008年02月23日

ミッション成功?

 NYTimes記事を見るかぎり、国家偵察局(NRO)のスパイ衛星L21は、米国東部時間の22時30分前、ハワイ沖のイージス艦「レイク・エリー」から発射された一発のSM3ミサイルによってぶじ(?)破壊されたらしい。ミサイルのターゲットは直径わずか1m弱のヒドラジンの入った燃料タンク。この偵察衛星、一昨年の打ち上げ直後から遠隔操作不能状態になってしまったので、タンクに入っている約500kgのヒドラジンはほとんどが使われずに凍りついた状態で残っていた。統合参謀本部(JCS)の発表によると、爆破したあとに飛び散った細かな破片(debris)については追跡調査中とのことですが、いまのところは宇宙ステーションやその他人工衛星には影響なし、大型の破片については今後2週間以内に大気圏に突入してそのまま燃え尽きるという見通しです(→CNNの関連記事)。今回の作戦は、衛星が周回軌道からはずれて大気圏突入をはじめる来月1日までには実行する予定だったし、お供の2隻の艦船にあと2発、予備のSM3ミサイルまで用意していたので、まずは成功したと言っていいらしい(作戦成功と断言できるのはもうしばらくかかりそう)。

 こちらの記事にも書いてあるのとおんなじような懸念が前に引用したワシントン発の記事と同様、今回引用した記事にもまたぞろ書いてあるのですが、たしかにスパイ衛星なので、なにか知られてはまずい情報でもあったのかもしれませんね。2003年のシャトル・コロンビアの事故のときには燃料タンクが燃え尽きずに落下してきたことから、国防筋は当然、ヒドラジンの入ったタンクが燃え尽きずに地上に達するのを防ぐ、ただそれだけのためでほかの意図はまったくないとしていますが…今回の衛星破壊はたとえば、米国が他国の衛星を撃墜したり、その逆もできるという「正統な言い分」に使われてはまずいということでもあるので、この問題はしばらく尾を引きそうですね。でも中国は以前の実験で、大量の「宇宙ごみ」を撒き散らした前科があるので、米国のことをとやかく言う資格はないようにも思えるが…。もちろんSM3ミサイルを発射したほうもそのへんの反発はよく承知しているので、中国のみならず、懸念しているほかの国々にも積極的に情報開示してゆく、という一言も忘れずに追加していました。(→関連動画)

 …関係ないことながら地元紙夕刊連載の各界著名人が交替で寄稿するコラム。「仏教が発祥したのはインド半島、キリスト教はアラビア半島」なんて一文を見て文字どおり目が点になった。もっとも「イスラム教」のつもりが思わず筆が滑ったんだろう…とは思いましたが、ちょっとびっくり。

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2008年02月16日

HD DVDと迎撃ミサイル

1). NHKのニュースでも報じられていましたが、東芝がHD DVD関連製品生産から撤退するみたいですね。NYTimes関連記事でものっけから、「金曜日、東芝とハリウッドの3つの撮影所が愛するHD DVDフォーマットは短い闘病の末に死んだ」、「告別式の予定はないが、小売り業者と業界アナリストは死亡記事をすでに書きはじめている」なんて大げさな書き出しです。この記事を書いていた時点では、東芝が全面撤退することを予測していたアナリストはいなかったようですが、これでけっきょく、買い手不在の次世代DVDフォーマットをめぐる主導権争いはSony陣営の勝利、ということになるらしい。でも東芝撤退報道じたいが勇み足気味みたいだし、ほかの報道を見るとPC用の駆動装置のみ生産を継続するかもしれない…とか。いずれにしても東芝からの正式発表待ち、ということか。映画DVDを鑑賞するというスタイルが主流の米国で、業界最大手のWarnerが今後のソフト供給はBDのみにすると決め、米国小売り最大手――いや世界最大の小売り業者のWal-MartやDVDビデオレンタルのNetflix、家電最大手のBest Buyなどがあいついで取り扱いをBDに一本化する旨表明したことで東芝側はいよいよ手詰まりになってしまったのだろう。こういう不毛な争いを見ていると、どうしても昔の「ベータvs. VHS」という対立を思い出す。HD DVD支持のMicrosoft社はどうするのかな(→国内関連記事)? 

2). 制御不能のまま大気圏突入間近とされる役立たずの米国偵察衛星。なんだかキナ臭い展開になってきました(→関連記事)。なんと北太平洋上を航行中のイージス艦から迎撃ミサイルで撃墜するという! 国際宇宙ステーションで活動していたシャトル・アトランティスが20日に帰還するのを待ってから、タイミングを見定めてミサイルを発射するらしい。「撃墜より、衛星を落下させた場合のリスクのほうが大きいと判断」したというのがその理由らしいですが、つい先日、米国はロシア(と中国側の主張する)宇宙兵器配備禁止に向けた条約案を拒否した口実としてうまく利用したような気もしないでもない。…偵察衛星の積んでいるというヒドラジンなる劇物も気にはなるけれども、ミサイルを発射するという行為じたい、軍事的にも技術的にもかなりリスキーで、専門家のなかにはミサイル撃墜が成功するかどうかはなんとも言えないという人が多いとか。そしてもし、失敗して宇宙空間、大気圏中に破片(debris)が散らばったりしたらそれこそ目も当てられない。建設中の宇宙ステーション運営にも支障が生じかねないと危惧する人もいます。「標的」は2006年に打ち上げられた「L21」というスパイ衛星で、スクールバスくらいの大きさ、一日に16回、地球を周回しながらじょじょに高度が落ちてきているという。成功すれば…迎撃ミサイル支持派が台頭して、将来のミサイル防衛構想推進に弾みがつく…かもしれない(→国内関連記事)。ちなみにいままで落っこちてきた「残骸」で最大のものは、1979年のスカイラブで、78トンもありました。orz

3). 日本でもSNSは大盛況みたいですが、発祥の地米国ではこんな問題も。Myspaceについで利用者の多いFacebookサイトでは、SNSを辞めた人のアカウントやグループ情報など、すべての個人情報が削除されずにそのまま「放置」されているという。サイト運営者側の言い分では、「すべて消去してから立ち去ってくれ」というのですが、すべて痕跡を消し去ってからさよならしても、どういうわけかやっぱり個人情報のコピーが大家のサーバーに残ってしまうという厄介な話。さる英国人のもと利用者など、個人情報取り扱いの監視団体やBBCに通報したあげく、ようやく「自分の痕跡」を削除させることに成功したという。米国の若い記者の卵氏がMyspaceを評して「Spam2.0だ」と書いたことを思い出しましたが、個人情報がほしい業者にとって、SNSサイトというのはそれとわからず紛れこむのにもってこいの媒体かもしれない。もっとも個人情報の取り扱いについては、Amazonとか、ネット通販サイトなんかも当てはまりますが、SNSだとつい「不要な」情報まで公開しがち。よくよくの注意が肝要ということでしょうか。

 …それと、こちらの番組でやってた「黒いファラオ」の話。今月号の日本版NG誌と思い切り内容がカブってましたが、スーダンのピラミッド群ははじめて目にする貴重な映像だったので、とてもおもしろかった。見ていて気になったのは、砂漠と岩山の色。なんかもともと代赭色っぽい色合いだったので、この辺の砂漠には酸化鉄とか多いのだろうか。それが夕陽に照らされて、黄金色にまばゆく映えるさまはひじょうに美しかった。とはいえ自分も正解したのは、ツタンカーメン王の杖に彫られたヌビア人――これは知ってました――の設問のみで、あとは全滅。ちょっと難しかったかも。orz

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